JICA人間開発部 母子手帳を知る-途上国の母子保健改善に向けて-

2019年9月13日

JICAの母子手帳事業をよりわかりやすく紹介

近年、母子手帳は国内外で多くの関心を集めていますが、これまで、母子手帳の使用やその効果、価値、その重要性について、各国の経験を共有しまとめた資料がありませんでした。本JICA-Netマルチメディア教材「母子手帳を世界に-途上国における導入と普及-」は、そのような中、母子手帳の概念と目的を紹介するとともに、JICAがその導入や展開を支援した、ガーナ、ベトナム、インドネシア、パレスチナと言った国での経験や成果、課題を、映像を活用してわかりやすく説明するものとして、開発されました。

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ガーナで展開された母子手帳事業

日本で母子手帳が広く使われるようになってから70年以上になりますが、母子手帳は我が国において、良好な母子の健康を維持するための革新的なツールです。母子手帳は、母親と子供の健康の記録を一つの手帳で管理し、家庭で保管することで、母子への適切で効果的なサービス提供を可能とするだけでなく、それらのサービスを確実に記録することで、母子の包括的かつ継続的なケアの実現を可能にします。JICAはこのような母子手帳の活用を広めることは、特に、保健医療サービスが十分に行き届かない途上国での母子保健の改善に寄与すると考えています。

課題別研修の教材として

2019年6月、JICA課題別研修「妊産婦の健康改善」において本教材を活用しました。
この研修には、インドネシア、タンザニア、ミャンマー、アフガニスタン、バングラデシュ、リベリア、シエラレオネからの参加がありました。研修生の中でも特に、すでに母子手帳事業に関わっている研修生からは、母子手帳事業への理解を深めることに役立つといった非常に前向きな感想が聞かれました。

母子手帳の知識の普及のために

本教材はまた、母子手帳の知識が乏しい地域に、その効果や運営の実務に関する情報提供をする際にも非常に有用です。2019年6月、ザンビア共和国ルサカ市にてザンビア保健省、WHOそしてJOICEFからの関係者を対象に、母子健康手帳ワークショップを開催、そこで母子手帳についての基本的な知識を得てもらう目的で、本教材を上映しました。ザンビア保健省関係者は、自国の母子手帳を作るには、既存の母性保健手帳と小児保健手帳を、それぞれ前半・後半として単に1冊にまとめるだけで良いと考えていたようでした。しかしながら、この教材を視聴することにより、母子手帳として、1)妊娠 2)出産/出生 3)産後 4)小児定期健診 5)小児予防接種 6)小児成長モニタリングなどの記録が、母子を統合した形で、時系列的に1冊にまとめられていることに意義があることが理解されたようでした。また、母子手帳は単に記録するだけでなく、母親向けの健康教育教材としての読み物であることも十分理解されました。

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ルサカ市での上映会の様子

青年海外協力隊の研修の場で

本教材は、2019年4月に行われた青年海外協力隊向けの研修にも活用されました。本教材を視聴することで、日本人としては身近なツールである母子手帳を途上国で導入・展開する際の課題や留意点について、理解を深めることが出来ました。
このように、本教材を様々な機会に実際に使用してみて、本教材は、母子手帳事業に関心がある方々や実際に関わっている方々にとって、母子手帳の一層の理解を促すと共に、実践的かつ実務に役立つものであると実感できました。一方で、それ以外の方々に対しても、本教材は、母子手帳についての重要かつ実践的な情報を提供し、このことは世界中の母子の命を守りその健康を改善することに貢献できるものであると考えています。

メラ 圭子
JICA人間開発部 保健第二グループ

このページで紹介している教材

母子手帳を世界に-途上国における導入と普及-

本映像教材は、母子手帳の開発途上国における導入・普及の方法について、JICAの当該分野での経験を通して概説します。