JICA人間開発部「人間的なお産」から考える安全で幸せな出産

2019年11月1日

課題別研修(注)の教材として活用

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課題別研修での上映の様子

当初よりJICAマルチメディア教材「安全で幸せな出産のために-JICAの人間的なお産の取り組み-」の活用対象のひとつとして想定していた課題別研修(注)「アフリカ仏語圏地域 妊産婦の健康改善(行政官対象)」において、日本の助産制度、助産ケアの講義の一部として、本教材を上映しました。9か国(ブルキナファソ、ベナン、ギニア、ニジェール、チャド、コンゴ、トーゴ、セネガル、コートジボアール)から来日した、助産師、産科医師など母子保健分野で活躍されている11人に視聴いただきました。

「人間的なお産」とは?

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カンボジアでのお産でも、JICAのトレーニングを受けた助産師が活躍しています。

JICAでは、1996年より8か国(ブラジル、ボリビア、アルメニア、マダガスカル、ベナン、カンボジア、セネガル、モザンビーク)で人間的なお産に関するプロジェクトを展開してきました。「人間的なお産」とは、出産は病気ではなく生理的・文化的な自然の営みであるという認識のもと、人として本来備わっている女性の産む力、赤ちゃんの生まれる力が最大限に引き出され、安全に安心して妊娠・分娩・産後を過ごせることを指しています。科学的根拠に基づいた助産ケアによって過度な医療介入を避けることができ、妊産婦さんの気持ちに寄り添い母子を尊重することで、出産は温かく幸せな体験となります。本教材は、ブラジルとカンボジアのプロジェクトを通して、JICAの人間的なお産の取り組みについて説明したものです。

「人間的なお産」への理解を深める

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興味深そうに映像を観る研修生

研修に参加した11名は、皆メモを取りながら熱心な様子で観ていました。上映後には「概念的な内容でも、映像でみるとよく分かる」「人間的なお産は、特別な医療機材を必要とせず、母子に備わった自然の力を引き出すという点で費用対効果が高いと思った」「助産能力の向上を通して妊産婦死亡率、新生児死亡率の削減に寄与する、母子に優しいケアというのは、まさに自国で取り組みたかったことで、ぜひJICAによる人間的なお産のプロジェクトを自分の国でもやってもらえないか」などの感想がありました。3週間に及ぶ研修のまとめとして作成された帰国後の活動計画の中で、人間的なお産の取り組みを挙げていた参加者もいました。参加者には各々自国で活用いただくべくDVDをお渡ししました。

対象はどなたでも

この教材は、母子保健関係者に人間的なお産とは具体的にどのようなものか、その取り組みが妊産婦本人や医療関係者にどのような効果をもたらしたかをお伝えすることはもちろん、視聴者に「幸せなお産とは何か」を考えていただくきっかけとなることを期待して制作しました。課題別研修(注)参加者、海外におけるカウンターパート、国内の助産学生、看護学生、JICA海外協力隊員のほか、広く一般の方々にもご覧いただければと願っています。これまで、本教材に関心を寄せていただいた国内10か所以上の看護系大学の先生方にDVDを配布し、一部大学では出前講義を行い、教材を上映して好評をいただきました。またJICA海外協力隊派遣予定者からは、「大変感銘を受けた、自分も日本の助産師として、母子を大切にするケアを伝えていきたい」という声や、保健分野の枠を超えて開催した上映会では、「一人の女性として感動した、これからお産をする友人にもぜひ教材を勧めたい」という声をいただきました。日本語・英語・フランス語・ポルトガル語版を製作しましたので、国内外を問わず今後も幅広く活用していきたいと思います。

(注)課題別研修とは、一つのテーマのもと、複数国から研修員を招いて行われるJICAの研修のことです。

中村 悦子
JICA人間開発部 保健第二グループ ジュニア専門員

このページで紹介している教材

安全で幸せな出産のために-JICAの人間的なお産の取り組み-

本映像教材は、JICA母子保健分野における「人間的なお産」の取り組みについて、ブラジルとカンボジアのプロジェクトを通して説明していきます。