アルゼンチン共和国「一村一品」推進にむけて-住民主体の地域開発-

2019年12月20日

アルゼンチンの「一村一品(OVOP)」プロジェクトで活用

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サルタ州で行われたワークショップの様子

2019年7月~10月、JICAが実施する「アルゼンチンOVOPのコンセプトに沿った市場志向型インクルーシブバリューチェーンの構築プロジェクト」開始のワークショップにおいて、JICA-Netマルチメディア教材「地域主体の内発的地域開発」と「彩(IRODORI)-木の葉の里の元気づくり-」を活用しました。

2019年6月に始まった当プロジェクトは、アルゼンチン北部地域で、生産者グループに対する保健・社会開発省の支援実施能力の強化と、地域の資源を活かした農産加工品・工芸品・観光サービス等の開発・改善・プロモーションを通じて、「アルゼンチンOVOP」のコンセプトに沿った市場志向型かつインクルーシブなバリューチェーンの構築を図るものです。教材はプロジェクトを進めるにあたり、「一村一品(OVOP)」を通じた地域・農村開発の理解促進のために上映されました。

住民主体の地域開発とは

「地域主体の内発的地域開発」では、まず地域開発の二つのアプローチ、地域固有の資源を活用し地域住民の主導により進められる内発的地域開発と、地域外の資源・資本を導入して主に工業化を目指す外発的地域開発を紹介し、以降の各章では、内発的地域開発を通じてどのように町の発展を導いたか、一村一品運動発祥の大分県大山町をはじめ日本各地の事例を挙げてわかりやすく説明しています。

「彩(IRODORI)-木の葉の里の元気づくり-」では、地域開発の成功例として徳島県上勝町に焦点を当てています。過疎が進行する一方だった山中の小さな町が、町で採れる草木や花々を日本料理に添える「つまもの」として商品化した「彩(IRODORI)」事業で町の産業を活性化させ、住民が生きがいを見つけ、自分の町に誇りと愛情を持つようになる様子を描いています。

両教材とも、一村一品に関連する活動に従事する人々(行政官・民間企業・生産者)に対して、大規模外部投入ではなく小規模でコツコツとした内発的開発の重要性とその具体的な優良事例を説明するのに大変有効です。

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日本料理を彩る「つまもの」

プロジェクトの目的を正しく理解するために

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ブエノスアイレス州のワークショップでは50名の参加者が鑑賞しました。

ワークショップはブエノスアイレス市、サルタ州サルタ市、ミシオネス州ポサーダス市、カタマルカ州サン・フェルナンド・デル・パジェ・デ・カタマルカ市、ブエノスアイレス州トルンキスト市の5都市で開催され、カウンターパートであるアルゼンチン国保健・社会開発省職員や中央・対象州の関連セクター職員、生産者、共同組合、NGO、大学等、各都市合わせて合計約300名が教材を視聴しました。
これまで「一村一品」に馴染みの少ないアルゼンチンの人々に対して、プロジェクトで何を目指そうとしているのか、すなわち、ただ町・村ごとに代表的な産品を作って売ればよいのではなく、地域住民を巻き込んだ地域活性化が主眼であることを知ってもらうのに大変役立ちました。
「地域主体の内発的地域開発」はチャプターごとに分けられているので使いやすく、「彩(IRODORI)」は失敗例も交えた成功までの経緯がアルゼンチンの人々にも理解しやすかったようで、特に良い反応がありました。

JICA-マルチメディア教材への期待

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地域生産の材料で作った食事を提供するビュッフェスタイルのレストランの様子。参加者の興味を引いていました。

以前協力隊(平成17年度3次隊)に参加した際にJICA-Netマルチメディア教材の一つを見る機会があり、そこで初めてJICA-Netの存在を知りました。
ワークショップでは、写真と文章が中心のプレゼン(パワーポイント)とグループワークが中心となりますが、映像と音を伴うビデオ教材を適宜使うことで参加者の興味を引くことができます。特に、時間が短い教材の方が、観る側の集中力を損なわずに上映できるので、セミナーやワークショップでは活用しやすく感じました。また、内容については、人がただ話している場面よりも具体的な取組みのモノ・コトを紹介する場面の方が参加者の注意をひいていました。馴染みのないテーマや新しい知識を学ぶ方々を対象に教材を上映する場合には、いかに見る側の興味を失わせないかは大切なポイントです。今後、コンパクトにまとまった、見せ方を意識した教材が増えれば、より強力な助けとなるでしょう。

溝口 航太郎
NTCインターナショナル株式会社
技術事業本部農村開発部 次長

このページで紹介している教材

地域主体の内発的地域開発

地域固有の資源(自然、人的、物的、金融、社会関係資本等)をベースとして、地域固有の伝統、文化、培かわれた技術を活用しながら、地域住民の主導により進められる持続可能な発展パターンを内発的地域開発(Endogenous Regional Development, EnRD)と呼び、これに対して、地域外の資源・資本を導入して主に工業化を目指す発展パターンを、外発的地域開発(Exogenous Regional Development, ExRD)と呼びます。この教材「地域主体の内発的地域開発」は、大分県旧大山町、大分一村一品、大分県旧湯布院町、岐阜県旧明宝村、愛知県旧足助町、北海道池田町といった日本の代表的な事例を通じて、内発的地域開発のプロセスをわかりやすく紹介しています。

彩(IRODORI)-木の葉の里の元気づくり-

徳島県上勝町を例に、外部者の視点で、地元のリソースを活用した開発を考えることで、地域開発のみならず地元への愛着、自信に繋げるアプローチで成功した「彩(IRODORI)」事業を事例として解説しています。彩事業は、上勝町で採れる草木や花々を日本料理に添える「つまもの」として商品化した事業です。本教材は、彩事業の経緯や関係者を紹介するビデオ映像、ワークショップ等で活用できる研修計画、Q&A、解説付きシナリオも収録しています。英語、日本語、フランス語、スペイン語、ネパール語、シンハラ語、ペルシャ語(Farsi)、タミル語、ゾンカ語、アルバニア語、セルビア語版があります。