JICA四国 質の高い教育を世界の子供たちへ-「みんなの学校」がつなぐ住民・学校・行政-

2020年10月21日

鳴門教育大学大学院の授業で活用

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鳴門教育大学での授業風景(2020年1月)

徳島県にある鳴門教育大学の大学院学校教育研究科では、JICA長期研修員も多く在籍し、日本型教育について理解を進める講義が展開されています。その中で、JICAの技術協力プロジェクトの取組みについて紹介する機会がありました。

全世界には、未だ小学校にさえ通えていない子どもが約5,900万人(全初等教育学齢人口の約1割)(UNESCO2020)、さらに必要最低限の読解力・計算力が身についていない子どもが3億8千万人(全学齢児童の約5割)(UNESCO2017)もいます。そんな子どもたちがよりよい教育を受けるためには、教員の能力向上はもちろんのこと、教員・保護者・地域関係者が協力して学習環境を整備し、学習支援を行うことも必要とされています。受講者は、開発途上国からの教員や教育行政官が含まれており、よりよい教育に向けて、地域社会が一体となって進める協力・協働の重要性と可能性を彼らに発見してもらいたく、JICA-Netマルチメディア教材「みんなの学校が開く未来」を活用しました。

住民・学校・行政が一体となって取り組む「みんなの学校プロジェクト」

「みんなの学校が開く未来」は、2004年当時、初等教育の就学率が52%と低い水準にあったニジェールにおいてJICAが行った「みんなの学校プロジェクト」について紹介しています。学校、行政が一体となった教育開発を目指した本プロジェクトは教育へのアクセスや質を改善し、その成果が認められ、アフリカ地域において約4万校にみんなの学校モデルが導入されました。
一般向けとして、プロジェクトの目的や成果を概観した「Dream-みんなの学校がひらく未来-」とプロジェクトの内容を簡単にまとめた「みんなの学校:住民参加による教育開発モデル」、プロジェクトの具体的な過程を各側面から説明した実践的な内容の「学校運営委員会活性化」「質のミニマムパッケージ」「補助金有効活用モデル」「フォーラムアプローチ」の6部で構成されています。

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ニジェールで実施された学力テストでは、プロジェクトの前と後で正答率が大きく伸びました。

自国の課題解決に向けて

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住民による手作りの学校。学校運営に参加することで教育への意識が高まります。

教材の利点は、住民参加による教育開発の成功例を紹介するにとどまらず、教育成果を出すに至るまでのプロセスの紹介、さらに保護者・地域住民・教員・生徒のそれぞれの立場から、どのような意識の変化が起こったかを自身の声で語っているところだと思います。講義に参加しているJICA長期研修員の出身国は大洋州・アジア・アフリカ等様々ですが、どの国・地域も学校と地域との間に信頼関係がないなど類似の課題を抱えていることが多いようです。

教材を上映したところ、「みんなの学校」プロジェクトの成果、すなわち学校と地域が一体となって生み出した成果に両腕を上げて喜ぶリアクションを見せてくれました。また、「住民参加による学校運営について、制度こそ存在するがビデオの例のようにうまくいっていない」などそれぞれの国の状況について意見交換がなされ、自国でもまだ改善に取り組めるのではという展望が聞かれるなど、課題解決の意欲やヒントを得ることが出来た様子でした。

住民参加型開発の参考として

元々私自身が以前、セネガルで「みんなの学校」プロジェクトの専門家をしており、一部の撮影現場にも同行しておりました。プロジェクト活動において、ニジェールの経験をセネガルに導入する際、またパイロットモデル活動を全国普及する際にもメディア教材を活用しました。
分野限らず、既存の行政システムを生かした地域住民と行政の連携は課題であると思いますので、開発途上国の行政官向けに住民参加型開発の可能性を伝えたい方に広く活用できる教材となっていると思います。

長田 有加里
JICA四国 徳島デスク 国際協力推進員

このページで紹介している教材

みんなの学校が開く未来

本映像教材はJICA事業として「みんなの学校プロジェクト」の果たしてきた役割と成果を、一般向けにグローバルにアピールする媒体としての一般教材(一般向けおよび関係者向け)と、現在実施中または今後実施予定のプロジェクト活動において、類似の活動や成果をプロジェクト関係者が研修時に容易に理解し、活動を推進できるよう研修教材(4種類)の計6部構成となっています。
みんなの学校プロジェクトの活動を取りまとめた教材は、2007年に制作されましたが、その後新たな取り組みが実施されたことを受け、内容の更新を行いました。今後、みんなの学校プロジェクト実施国同士の学びあいのみならず、リージョナル、グローバルな学び合いへと発展させていくことを目的として制作しました。シンポジウムやセミナー、大学等における講義、開発教育/国際理解教育、本邦研修や第三国研修等で活用いただくことを想定しています。