JICA中国 広島復興から平和を学ぶ

2021年1月26日

「長期研修員向け広島平和学習ツアー」で使用

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平和学習後には、お好み焼きづくり体験も行いました。ただの昼食でなく、広島の平和構築に絡めた体験を盛り込みました。

JICA中国では、広島を訪れる長期研修員、広島で行う研修コースに参加する研修員向けに「平和学習」の時間を積極的に組み入れています。新型コロナウィルスの影響で広島県内での研修コースは実施できていませんが、2020年9月にすでに来日しているJICA研修員を対象に、9月15日、29日に平和学習ツアーを実施しました。ツアーでは平和記念公園、資料館、原爆ドームの見学並びに有識者による講義等を行いました。
ツアーはバスを利用して行われましたが、その際にJICA-Netマルチメディア教材「ヒロシマ復興からのメッセージ-復興における地方行政の役割と取組み-」を移動時間の有効活用策としてバス車内で上映しました。

平和記念都市としての広島復興

「ヒロシマ復興からのメッセージ-復興における地方行政の役割と取組み-」では、広島の復興を、相互に重なりあう復旧期・移行期・復興期の三つのフェーズに分け、戦後復興における地方行政の役割や取り組みについて、広島県・市の経験や知見を紹介しています。
広島では、第二次世界大戦での未曾有の被害に対し、被災直後から人命救助や復旧活動と並んで復興へ向けた行政の体制づくりが行われました。当初、財政難、人材難、資材不足、公有地不足など様々な困難に直面した復興計画は、広島市の復興を単なる都市機能の回復ではなく、平和な世界を作り出す拠点を目指すことで達成されました。
そこには、市長の強いリーダーシップや行政官の努力、平和都市建設という共通の理念に基づいた市民との協力が不可欠でした。

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1952年3月、広島平和都市建設計画が立案され、平和記念公園が整備されました。

広島の経験から学ぶために

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バス内での上映の様子

広島において、これまでも研修員向けの平和学習は定期的に行われてきましたが、平和学習に参加した研修員からは、広島がどのように復興したのかをもっと具体的に知りたいとの意見が多くありました。そこで、本教材をバス車内で上映することによって、少しでも研修員が広島の復興プロセスについても学ぶことができればと思い、活用しました。
9月15日はバングラデシュ4名、ミャンマー3名、ネパール、ベトナムから各1名の計9名が、9月29日にはカンボジア4名、シリア、タジキスタン、モーリシャス、ラオスから各1名の計8名が参加しました。上映後は、「廃墟と化した街をどのようにして復興のシンボルにするかという明確なメッセージがあった」「復興への移行期における、地方行政による努力と働きは、資源の制約がある中で、素晴らしいものであった」などの感想が上がり、バスの移動時間の短い間で、効率的に広島復興プロセスの要を伝えることができたと感じています。

この教材は、世界で今、祖国の復興に取り組んでいる人々にとって、広島の経験が少しでも役立つよう制作されましたが、広島を訪れる一般の外国人観光客にとっても広島への理解が深まる内容です。今後も様々な活用の場面を考え、広島復興の理念を知ることで、より多くの人々が平和について考えるきっかけになることを期待しています。

岩谷 允六有
JICA中国

このページで紹介している教材

ヒロシマ復興からのメッセージ-復興における地方行政の役割と取組み-

戦後復興における地方行政の役割、取り組みについて、広島県・市の経験や知見を紹介します。中でも、1)復興の理念の形成と共有、2)市長のリーダシップと行政官の信念、3)復興の各段階に応じた切れ目のない移行、4)国・県・市の協働、5)住民と行政との協働というポイントに着目しています。
以下の4点を主な目的としています。 1)平和構築・復興関係の研修員:事前学習教材(講義で内容について深掘りする) 2)平和構築・復興関係以外の研修員:広島訪問予定者等に向けた情報提供(日本理解の一環)。平和に対する関心の惹起。 3)JICAボランティア:任地で開催する原爆展における活用 4)職員及び連携団体:平和構築・復興に関する講座やシンポジウム等での活用