JICA経済開発部 魚が食卓に届くまで-進化する日本の水産バリューチェーン-

2021年7月26日

オンライン講座の事前学習教材として活用

JICAは、多様な漁獲物と消費形態を効率的にマッチングし、付加価値を創造する日本の水産バリューチェーンの有効性と特殊性の理解、また日本の事例を自国に導入する場合の留意点の理解を目的として、JICA-Netマルチメディア教材「日本の水産バリューチェーン」を作成しました。
今回、2021年6月27日に開催したJICA水産分野留学生向けオンライン講座「日本の水産開発経験」において、日本の水産バリューチェーンの取組事例を学ぶ事前学習教材として、本教材を活用しました。

日本の水産バリューチェーンの様々な工夫を学ぶ

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日本の食文化には豊富な海産物の存在が欠かせません。

海に囲まれた地形から、豊富な海産物を中心とした食文化を発達させてきた日本では、漁業関係者の長年の努力により、水産バリューチェーンの質的な改善と流通経路の多様化が進められてきました。
日本の水産物は、水揚げ産地や輸入業者から、産地(卸売)市場、加工業者、消費地(卸売)市場を経由し、小売店やホテル・レストラン等を通じて消費者の元に届けられ、現代の人々の食生活を支えています。

「日本の水産バリューチェーン」では、前半でこれらの仕組みや役割を、豊富な図解や現地の映像等を交えて解説し、バリューチェーンを一通り学ぶことができる内容になっています。後半では新たな取り組みとして、低温保蔵の新技術による鮮度管理への挑戦、漁業者が自ら加工・流通(販売)を行う6次産業化の取り組み、地域ブランドの創生や観光業との連携、エコラベルといった付加価値への取り組みを、日本各地の具体的な成功事例をあげつつ紹介しています。

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豊洲市場。日本各地の生産地市場から多種多様な水産物が集まります。

誰でもわかりやすい教材

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オンライン講座には、約70名の生徒が参加しました。

オンライン講座には、JICA水産分野留学生に加え、他の留学生や日本人学生約70名が参加しました。 教材では、平易な言葉や、図表、映像で水産バリューチェーンについて分かりやすく解説し、先進的な取り組みとともにその際の留意点についても触れているため、利用者からは特に難しいといった反応は無く、25分の映像の中で効率よく要点を理解することができたのではないかと思います。
今回、当該教材の作成を進めるのと同時に、JICA水産分野留学生向けオンライン講座の開催を準備していたことから、事前学習の教材として、当初より活用を予定していました。今後も機構制度による長期研修員の受入れは継続予定のため、来日導入時の資料として活用していきたいと考えています。
本教材は、日本の水産開発の知見について関心のある水産分野のJICA課題別及び国別研修員、JICA長期研修員、その他留学生等、また、水産バリューチェーン解説の広報用資料として幅広く使える教材です。水産バリューチェーンにおいて日本が試行錯誤して培った知見と経験が、世界の様々な国にも役立つよう期待しています。

本田 勝
JICA経済開発部

このページで紹介している教材

日本の水産バリューチェーン

水産業が盛んな日本では、漁船から食卓までのいわゆるコールドチェーンにおいて様々な工夫がされている。鮮度と品質を保つため食品衛生検査やHACCPへの対応も進んでいる。そんな日本の水産バリューチェーンの様子を、水揚げ産地、産地卸売市場、輸入水産物、水産物加工、消費地卸売市場、小売を経て消費者に届くまでを図解やイラスト等を用いて説明していく。さらに水産バリューチェーンの新たな取り組みとして、鮮度管理への挑戦、6次産業化の取組、地域ブランドの創生や観光業との連携、エコラベルといった付加価値への取組などを紹介する。