宇都宮大学社会基盤デザイン学科 途上国のインフラ整備を考える-日本の水・衛生分野の支援-

2021年10月19日

宇都宮大学の講義で使用

私は、これまでJICAの開発調査や技術協力プロジェクト、有償事業に関わり、途上国の電力や運輸、上下水道などのインフラ整備に関わってきました。現在、宇都宮大学地域デザイン科学部社会基盤デザイン学科の講義で国際プロジェクトを担当しています。今年の講義では、学生に途上国のインフラ整備の重要性や活動内容を教えるために、2021年6月~7月に3回にわたり、JICA-Netマルチメディア教材「JICAの水・衛生分野への協力」「世界につながる教室-講義で使える映像教材-(水と世界・ルワンダ・国際協力)」を活用しました。

水・衛生分野でのJICAの国際協力

【画像】

日本の協力で建設された給水施設。日本は、セネガルで30年以上にわたり、水・衛生分野での支援を続けてきました。

本教材は、世界各国での上下水道のJICA専門家の様々な活動を紹介しており、学生にとって理解しやすい内容になっています。コロナ禍で海外交流や研修が難しい中で、講義でのマルチメディアの活用は、学生の海外への関心や理解を深めるために効果的であると考えました。
「JICAの水・衛生分野への協力」では、JICAの水・衛生分野での協力のアプローチを代表的なプロジェクトの事例を通して紹介しています。カンボジアでは無収水率の削減等都市水道サービスの改善、セネガルでは村落給水施設の維持管理と手洗いなどの衛生行動の改善を、ベトナムでは安全な水の供給や行政と住民が一体となって取り組む防災対策を推進しました。

「世界につながる教室-講義で使える映像教材-(水と世界・ルワンダ・国際協力)」は11の映像作品で構成されている教材です。講義ではそのうちの「国際協力活動に取り組む人々のインタビュー 黛専門家の場合」「国際協力活動に取り組む人々のインタビュー JICA海外協力隊富田さんの場合」の2つの映像を取り上げました。黛専門家はルワンダの首都キガリで無収水の問題に、富田さんはルワンダのルラミラという集落で地域の水問題に取り組んでいます。両インタビューともに、国際協力をどう進めるのか、実際の現場の経験から出た意見を聞くことができます。

【画像】

ルラミラで地域の水問題に取り組む協力隊の冨田さん。インタビューでは、地元の住民と同じ目線に立てるように努力することが重要だと話しています。

専門家の活動を通して海外活動への関心を高める

【画像】

大学の講義の様子。教材を視聴後に、グループに分かれて議論をしました。

講義では、地域デザイン科学部社会基盤デザイン学科の3年生の40名以上が教材を視聴しました。
まず、インフラ整備全般やJICAによる途上国支援の説明および国際的な水・衛生分野の実態に関する講義を行い、本教材の映像を上映しました。その後、学生たちで、国際的な水・衛生分野について6名程度のグループで議論をし、今後どのような日本の水関連技術が途上国で最も有効であるかを考察し、日本が世界の水に関して支援すべきことに関するレポートを作成しました。次の講義では、そのレポートについて、学生全員を対象として議論する機会を設け、さらに途上国支援について理解を深め、学生個人の海外活動への関心を高めるようにしました。
学生は、途上国のインフラ整備の実態、JICAの活動全般やインフラ整備での支援について知識がないので、教材の動画はそれらを理解するのに役立ちました。また、レポートや議論を通じて、途上国支援の必要性について理解を深め、学生個人の海外活動への関心を高めることができたと思います。
本教材は水・衛生分野の教材ですが、学生に途上国支援を紹介するための最初のステップとして、分野に限らず広く活用することが可能です。多くの学生が、教材で現地の映像や声を見聞きすることによって、途上国の課題や国際協力について深く考えるきっかけになることを望みます。

山岡 暁 教授
宇都宮大学 地域デザイン科学部 社会基盤デザイン学科

このページで紹介している教材

JICAの水・衛生分野への協力

この教材「JICAの水・衛生分野への協力」は、国際会議や国内の各種イベント等の場において、JICAの水・衛生分野における協力について国内外の関係団体に向けて、広報・情報発信することを目的に作成したものです。JICAの水・衛生分野での協力のアプローチについて代表的なプロジェクト事例を参考としながら紹介する構成となっております。さまざまな場面において同教材を活用していただき、水・衛生分野のトップドナーであるJICAの活動に対する認識の向上に貢献することを期待しております。

世界につながる教室-授業で使える映像教材-(水と世界・ルワンダ・国際協力

私たちが生きていくのに欠かせない「水」は、国境を越え世界をめぐる大切な資源でもあります。その水をテーマに、「水と世界」「国際協力」を知ることができる、授業でも活用しやすいショート映像を用意しました。舞台としたのは、ICT分野など発展しつつも、水においてはまだまだ課題のあるルワンダ。この国の概要や、ここに暮らす少年の一日、水分野の国際協力に携わる人々のインタビューなどがあります。また、この映像教材を授業で使うヒント、学校の先生方が実際に途上国現場に学びに行けるJICA教師海外研修や、JICAの開発教育支援事業についての紹介映像もございます。