JICA経済開発部 世界に広がるOVOP(一村一品運動)-地域活性化を目指して-

2021年12月7日

OVOP(一村一品運動)とは?

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エルサルバドルのOVOPフェアの様子。エルサルバドルは、中南米の中でもいち早くOVOPに取り組みました。

JICAは中南米地域において、地域経済の活性化やコミュニティの能力強化を目指し、OVOP(一村一品運動)のコンセプトを活用した支援の広域展開を進めています。
OVOPとは、地域の資源を活かした農産品、特産品や観光資源等がその地域内にとどまらず、域外にも通用するよう、1つの町に1つ以上育てていこうという考えのもとに行政がきっかけを作り、地域の住民が主体となって行う運動です。今回、日本のOVOPと、海外で実践されているOVOPについての理解を深める目的で、JICA-Netマルチメディア教材「OVOP(一村一品運動):地域活性化への挑戦」を作成しました。

OVOPの具体的事例に学ぶ

OVOPは、1979年、日本の大分県で生まれました。当時は農業生産の一次産業だけでは暮らしがよくならず、より良い雇用機会を求めた地方の若者たちの大都市への流出が避けられない状況がありました。そこで県内の複数の地域の住民が立ち上がり、地域資源を見つめ直し、付加価値付けと差別化を加えた上でPRと販売を図るという当時の地場産業振興の機運が沸き起こり、それら住民主体の取り組みを当時の大分県知事・平松守彦氏が一村一品運動という名のもとに一つにまとめ、進めたのが始まりです。
その後、OVOPのコンセプトは日本各地に伝わり、やがて地場産品を核とする「特産品」中心のブランディング事業から、地域、自治体全体の魅力化に枠を広げた「地域ブランディング」へと変遷し、拡大しました。

教材では、OVOPの始まりの大分県、そして日本の地域ブランド化の例として、高齢化と過疎化が急速に進む町を葉っぱビジネス「いろどり」で盛り上げた徳島県勝浦郡上勝町、「ないものはない」をスローガンに、ないなら自分たちで作り出そうという姿勢で取り組んだ島根県隠岐郡海士町、アグリツーリズムやパッチワーク農業に力を入れ、多くの国内外の若者を受け入れて人材育成を行っている群馬県甘楽郡甘楽町を紹介します。
また後半では、日本から始まったOVOPが海外でどのように展開していったのか、主にJICAが協力した中米の3ヶ国エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスと、南米コロンビアの事例を解説します。

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海士町では、官民が一体となって地域おこしを行いました。今では毎年100人前後の人が島外から移住しています。

オンラインセミナーで活用

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Agri-networkオンラインセミナーで、OVOPを説明する際の導入として、本教材のダイジェスト版を活用しました。

2021年10月21日に開催したAgri-networkオンラインセミナーの中で、OVOPを説明する際の導入として、本教材のダイジェスト版を活用しました。オンラインセミナーには、50名以上の農林水産分野の長期研修員が参加しました。

OVOPは一村(地域)につき一品(特産品)をPR・販売するというイメージを抱きがちですが、実際はもっと大きな広がりを持っています。地域の農産物、特産物だけでなく、歴史、文化、自然、暮らし、生活する人々の魅力を付加価値として捉え、それらを組み合わせて総合的に発信することにより地域の魅力を最大化すると言うのが現在のOVOPの考え方です。これら「地域ブランディング」の考えについて学び、そしてOVOPの主役はモノだけではなく、その地域に存在するコト、さらにはヒトであることを理解することが重要です。
発表時間に制約のある中、最初に動画をみることで、OVOPについてのコンセプトイメージを掴んでもらうことができます。また、その後の講義で動画に出てきた事例と組み合わせて説明することで理解度が深まると思います。

本教材は、ライブラリホームページのほか、JICA-NetライブラリYouTubeチャンネルでどなたでも視聴可能です。今回のように、コロナ禍で対面での研修ができない状況でも、オンラインイベント等で活用できる教材です。本教材がOVOPの理解の一助となりましたら幸いです。

宮﨑 雅之
JICA経済開発部

このページで紹介している教材

OVOP(一村一品運動):地域活性化への挑戦

本映像教材はJICA地場産業振興と地域活性化、特に地域のブランド化をテーマに、大分県発祥の一村一品運動(OVOP)をモデルとして国内でどのように発展・普及し、さらには中南米で活用されているか、その歴史的経緯と効果に沿って説明していきます。
1979年に開始された大分県の一村一品運動とその後の全国各地の地域ブランド化の展開を取り上げ、日本発祥の地域活性化モデルの普及と世界各地での適用事例に関する発信の強化を目的として教材を制作しました。
セミナー、各種講義、本邦研修や第三国研修で活用いただくことを想定しています。