JICA経済開発部 危機に強い観光産業を作る-災害・危機リスクへの備えから復興まで-

2021年12月13日

観光産業と危機リスク

観光はその関連産業を含めると世界のGDPの10.4%、雇用の9.9%を占める(2017年)など、世界経済をけん引する産業にまで成長しています。特に発展途上国においては、人々の暮らし、そして国そのものを成り立たせるために、なくてはならないものとなっています。しかし、2019年末に始まった新型コロナウイルスの流行により、観光産業が本来持つ脆弱性が露わになりました。
JICA-Netマルチメディア教材「観光の危機管理 -ニューノーマルにおける観光開発-」は、災害や危機リスクに脆弱といえる観光産業のレジリエンスを強化するために、どのように危機管理を行うべきか(観光危機管理)を、4つの段階に分けて解説します。

観光危機管理とは?

【画像】

2019年末に始まった新型コロナウイルスの流行は、観光産業に多大な影響を与えました。

世界では、さまざまな自然災害や人的災害が発生しており、それが観光客や観光産業に甚大なマイナスの影響をもたらしています。観光危機管理とは、これらマイナスの影響を予め想定し、被害を最小化するための対策を行い、実際に危機が発生した際に迅速な対応を的確に行うとともに、観光危機の風評対策、観光産業の早期復興、事業継続支援などを組織的に行うことを示しています。
観光危機管理の第一歩は「リスクを明らかにすること」。どの地域においてどんな危機が発生する可能性があるのか、危機の結果どのようなことが起こるのかについて、予め想定しておくことがとても重要です。

観光危機管理の4つのR

観光危機管理は、危機発生時の対応だけではありません。危機発生前の備えや防止、危機発生後の復興まで含めた全てが観光危機管理です。
本教材では、観光危機管理の基本となる要素を「減災(Reduction)」「危機への備え(Readiness)」「危機への対応(Response)」「危機からの復興(Recovery)」の4つのフェーズ(4R)に分けて、専門家が図を交えてわかりやすく解説します。

【画像】

教材では、観光危機管理を4つのフェーズ(4R)に分けて解説します。

減災(Reduction)

  • 危機の発生を防止すること
  • 危機が発生したときの被害や影響を小さくおさえること

危機への備え(Readiness)

  • 危機が発生したときに、迅速に的確な対応ができるように、予め準備しておくこと

危機への対応(Response)

  • 危機が発生したときに、ただちに対応体制を立ち上げ、観光客と職員・従業員の安全を確保し、危機後の復興に向けて必要な対応を行うこと。

危機からの復興(Recovery)

  • 観光客が災害前の水準に戻るよう、被害を受けた観光インフラを復旧し、観光客の受入体制を整え、マーケティング・プロモーション活動を計画・実施すること

これら4つのRは、それぞれ単独で計画・実施されるものではなく、相互につながっている必要があり、そして危機の経験を経て循環しながらレベルアップしていくことが大切です。

「観光危機管理」への世界的な関心の高まり

【画像】

JICAでも、様々な組織と手を組み、支援活動を始めています。

近年、観光分野の防災・危機管理に世界的な注目が集まっており、特に2019年末に始まった新型コロナウイルスの流行により、観光産業が本来持つ脆弱性を各国が実感し、観光危機管理への関心が高まっています。
本教材はJICA関係者のみならず、世界の観光産業に携わる官民すべての方に見ていただきたい教材です。本教材を通じて、観光産業のレジリエンスを高める一助となることを期待しています。

浦野 義人
JICA経済開発部

このページで紹介している教材

観光の危機管理-ニューノーマルにおける観光開発-

この教材では、世界最大の産業のひとつである観光産業における「危機管理」の意義や重要性について紹介しています。
観光はその関連産業を含めると世界のGDPの10.4%、雇用の9.9%を占める(2017年)など、世界経済をけん引する産業にまで成長しましたが、2019年末に始まった新型コロナウイルスの流行により、観光産業が本来持つ脆弱性が露わになりました。
本教材は、災害や危機リスクに脆弱といえる観光産業のレジリエンスを強化するために、どのように危機管理を行うべきか(観光危機管理)を、4つの段階に分けてお伝えします。