JICAガバナンス・平和構築部 災害に強い社会づくり-ジェンダーと多様性の視点から-

2022年3月15日

課題別研修をベースにまとめた教材

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2015年のネパール地震でのJICAの支援。ジェンダーや多様な人々の視点に立った取り組みが不可欠です。

気候変動などに由来する自然災害の激化や感染症の世界的流行(パンデミック)に対する緊急対応やその後の復旧・復興の過程においては、ジェンダーや多様な人々の視点に立った取り組みが不可欠です。今回、JICAが2016年からアジアや中南米諸国を対象に実施している課題別研修(注)「ジェンダーと多様性からの災害リスク削減」で得られた知見をもとに、JICA-Netマルチメディア教材「ジェンダーと多様性の視点に立った防災・減災・復興」を作成しました。

この教材では、日本各地で防災活動をしている女性団体、障害者団体、LGBTI団体、インドネシア人によるネットワークなどの事例を紹介するとともに、災害時に起きるジェンダーに基づく暴力への課題や対応などについても紹介しています。日本において多様な人々の意見が反映された、誰ひとり取り残されない「より良い復興(Build Back Better)」に繋げるための取り組みがわかります。

教材では、さらに途上国自身のジェンダー視点に立った防災・減災・復興への取り組み、世界の潮流やその中でのJICAの取り組みなど、様々な事例を紹介しています。

(注)課題別研修とは、一つのテーマのもと、複数国から研修員を招いて行われるJICAの研修のことです。

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元々日常的にあった暴力や虐待は、災害時のストレスでさらに増幅します。社会的包摂サポートセンターでは、東日本大震災を機に「よりそいホットライン」を開設しました。

誰ひとり取り残さないために

第1部では、女性をはじめとして社会的に不利な立場に置かれている人が、災害が起こったときにより大きな被害を受けやすく、またより脆弱な立場になってしまうことなどを、事例を取り上げて解説します。災害において、被害や影響はすべての人に平等ではありません。

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女性が主体となった防災活動は全国に広がっています。

第2部では、日本国内の事例を中心に、女性をはじめとして障害者、LGBTI、外国籍の人など、多様な視点に立った防災・減災・復興の取り組みをまとめています。防災・減災・復興は、誰ひとり取り残さないという理念なしには効果的に実施することはできません。
第3部では、世界の動きとJICAの国際協力に焦点を当て、JICAの防災・復興支援のこれまでの事例を紹介し、課題別研修での防災人材育成や新型コロナ感染症対策にも触れています。

教材の活用

教材の制作中は、コロナ禍の影響で、海外はもとより国内への直接的な取材が十分にできなかったという制約もありましたが、オンラインなどをうまく活用し、多くの事例を集めることができました。
教材は、防災や復旧・復興支援分野に関する研修、特に「ジェンダーと多様性からの災害リスク削減」において、事前学習教材ないし到着後すぐのオリエンテーション教材として活用することが可能です。その他に、JICA海外ボランティアの事前研修や派遣前研修で活用することもできます。
基本的には防災やジェンダー分野の実務者向けとなっていますが、一般の人にも分かりやすく作られているため、地方自治体や全国女性センター、防災関連組織などでの講演、講義、YouTubeなどを通し、国内外へ広く発信することも可能です。

2022年2月現在、日本語版と英語版の2本が作成されており、多言語版、特に災害の多い中南米などでも活用できるよう、スペイン語版についても作成していく予定です。
本教材が、防災課題における多様性とジェンダー視点をさらに促進し、災害に強い社会づくりに向けた国際協力に貢献することを期待しています。

野口 孝子
JICAガバナンス・平和構築部 ジェンダー平等・貧困削減推進室

このページで紹介している教材

ジェンダーと多様性の視点に立った防災・減災・復興

自然災害や感染症拡大といった緊急時やその後の復旧・復興の過程において、ジェンダーや社会的弱者といった多様性の視点に立った対応が不可欠である。日本における緊急事態(震災等の自然災害、COVID-19など)における対応の経験・教訓に基づき、多様な人々の意見が反映された、誰ひとり取り残されない「より良い復興(Build Back Better)」に繋げるための取り組みを紹介する。
2016年から実施している課題別研修「ジェンダーと多様性からの災害リスク削減」をベースに、ジェンダーに基づく暴力やコロナ対応を追加し、ジェンダーと多様性の視点に立った防災・減災・復興の重要性、日本の取り組み、また世界の動きをまとめた。