JICA人間開発部 日本の医学教育の歴史-UHC達成を目指して-

2022年4月1日

UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)達成のために

SDGsゴール3(健康と福祉)にも掲げられるUHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)は、すべての人が経済的な困難を伴うことなく、保健医療サービスを享受することを目指しています。
今回、JICAは、順天堂大学との間で締結された保健医療分野の協力に関する覚書き(2020年11月署名)を踏まえ、同大学との連携活動の一環としてJICA-Netマルチメディア教材「医学教育の歴史が伝えるUHC達成への示唆」を制作しました。
本教材は、日本の医学教育の歴史を振り返り、医学教育がいかに日本のUHC達成に寄与してきたかを知ることを通じ、その経験が開発途上国への協力として活きることを伝えることを目的としています。

日本の医学教育を振り返る

教材は、主として日本の医学教育の歴史を概観しています。UHCの達成に欠かせないのが、医療の質と量を高める医学教育です。まず、日本が江戸時代に西洋近代医学を取り入れて以来現在に至るまで、医師を中心とする医療人材の育成がどのような紆余曲折を経て発展してきたか、凝縮して解説しています。
次に、少子高齢化等現代の日本の医療と医師を取り巻く現状と、医学教育モデル・コア・カリキュラムや新医師臨床制度等の新しい取り組みについて紹介し、最後に、JICAの国際協力の事例として、JICAの協力を受けつつUHCの推進を目指すモンゴル国のプロジェクトを取り上げました。

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日本のUHC達成に寄与した医学教育の歴史を凝縮して解説します。

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日本の経験が有効活用されているモンゴルのプロジェクトも紹介します。

モンゴルでは、医師の質のばらつきや疾病構造の変化など日本がかつて直面した問題と似通った点があり、日本の経験が有効活用されています。2021年からは、プロジェクトの第二フェーズとして、看護師・助産師の育成も含めた取り組みがスタートしています。

豊富な資料と現地の生の声で構成

日本の医学教育の歴史部分については、順天堂大学医学部医史学研究室及び日本医学教育歴史館の全面的な協力を得て、同歴史館の豊富な資料を活用し、作成されました。同大学の医史学の著名な教授が監修/撮影協力として参画しています。
後半のモンゴルの事例では、コロナの影響で遠隔とはなってしまいましたが、日本側チーフアドバイザーとモンゴル側カウンターパートの生の声を取り入れたほか、既存のモンゴルにおける臨床研修の模様を写した映像を活用し、医師の教育の重要性や協力にあたって日本の経験が生きていることを伝えています。

教材は、保健医療分野の本邦研修や遠隔研修の事前学習資料等、医学教育分野のJICA協力に関心を持つ国の関係者の理解促進などに活用することを主な目的としています。
開発途上国の政府関係者、医療従事者、JICA研修員、留学生のみならず、国際協力に関心のある日本の保健医療関係者、医学部等の学生にも幅広く参考になる内容となっています。本教材が広く活用され、UHC実現にむけた一助になれば幸いです。

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教材制作にあたっては、順天堂大学医学部医史学研究室及び日本医学教育歴史館の全面的な協力を得て、同歴史館の豊富な資料を活用しました。

佐藤 里衣
JICA人間開発部

このページで紹介している教材

医学教育の歴史が伝えるUHC達成への示唆

本映像教材は、日本の医学教育がいかにUHC達成に寄与してきたかの歴史を振り返り、その経験が開発途上国への協力として活きることを伝えるものです。
SDGsゴール3(健康と福祉)にも掲げられるUHCが達成され、すべての人が経済的な困難を伴うことなく保健医療サービスを享受するためには、医療の質と量が適切に確保されていることが重要です。本教材は、日本のUHC達成を支えてきた医学教育が、江戸時代の近代医学教育の始まりから、戦争を経て、現在の日本が直面する新たな課題に至るまで、紆余曲折を経て発展してきた歴史を概観するものです。また、JICAのモンゴルにおける医療人材育成プロジェクトの事例を取り上げ、日本の経験が開発途上国への協力に活かされていることを伝えています。
開発途上国の政策担当者や医療従事者の方々に広くご参考にしていただくとともに、日本の保健医療関係者にも学びとしていただくことを目指しています。