JICA筑波 生活改善による農村女性のエンパワーメントを学ぶ

2023年1月20日

JICA筑波の課題別研修で教材を利用

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研修には、東ティモール、スリランカ、マラウイ、ナイジェリア、ジンバブエ、ギニア、ガーナの7か国から12名が参加しました。

JICA筑波では、2022年11月21日から12月21日まで、2022年度課題別研修「農村女性能力向上」(遠隔研修)を実施しました。
本研修は「日本の経験から生活改善アプローチと農村女性のエンパワーメントについての知識を習得する」ことを目的としています。この研修には、農村女性を対象に普及活動(家政、農業、地域開発等)を行う行政官、普及員、ジェンダー分野担当者等7か国(東ティモール、スリランカ、マラウイ、ナイジェリア、ジンバブエ、ギニア、ガーナ)12名が参加しました。
今回、JICA-Netマルチメディア教材「日本の生活改善の経験」が本研修の目標達成に適した内容だったため、参加研修員に対してJICA-VAN上の教材のリンクを共有し、週末の自主学習資料として活用しました。

日本の経験を通じたエンパワーメント手法を途上国に

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教材は、動画2本とパワーポイントのスライドショー、Q&Aと用語集で構成されています。

開発途上国では、人口の過半数が農村地域において農業で生計を立てており、農業労働をはじめ女性が重要な役割を担っています。しかしながら、女性は男性と比べてアクセス可能なリソースが限られていること、家事・育児等の負担が大きいこと、社会的・文化的要因から行動が制限されることなどを理由に、能力向上には様々な制約があります。
かつては日本も開発途上国と同様の問題に直面していましたが、身近な生活の改善活動から主体的な農村女性グループを育成した生活改善アプローチや婦人会活動等によってこれを克服し、地域発展を成し遂げてきました。本研修では、生活改善アプローチを中心とした日本の経験や農村女性のエンパワーメント手法等を紹介し、開発途上国の研修員が自国の農村女性への実践的な支援方法を習得することを目指しています。

JICA-Netマルチメディアの映像は、本研修の単元目標の一つである「研修員は日本の農村開発のプロセス及び生活改善アプローチを理解する。」の目標到達のための教材として活用しました。

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元生活改善普及員や元農村婦人の方々のインタビュー。

教材の内容は、1940~50年代の日本の時代背景と生活改善運動の概要を紹介する映像「1940年代の日本の現状」、ナレーション解説付きのパワーポイントのスライドショーで生活改善について解説した「生活改善から何が学べるか」、元生活改善普及員や元農村婦人の方々の映像「インタビュー」の3つのパートと、さらに補足としてQ&Aと用語集から成り立っています。このうち「1940年代の日本の現状」と「インタビュー」は、JICA-NetライブラリYouTubeチャンネルでどなたでも視聴することができます。

幅広く、さまざまな分野に応用できる知識

同教材の視聴を通じて研修員は、主体的で持続的なグループ育成方法や、身近な生活技術の改善方法、地域資源活用等に関する基礎知識を習得することができました。
なお、これらの基礎知識は、その後、本研修で実施された元生活改良普及員とのディスカッション等においても研修員の理解促進のために効果的でした。また研修員のアンケート結果においても、生活改善アプローチの習得は特に有益だったという声が数多く寄せられ、さらに研修最後に作成・発表された研修員によるアクション・プランにおいても、同アプローチの手法を活用した課題解決案が多数示されました。

本教材で描かれる主体的で持続的なグループ育成方法や、農民を組織化した所得創出活動等の具体的手法は、ジェンダーや地域開発分野のみならず、SHEP(市場志向型農業振興)や農業普及等の農業分野の事業においても活用できると考えます。
本教材が、広く途上国の問題解決や開発に役立つツールとなれば幸いです。

根本 乙
JICA筑波

このページで紹介している教材

日本の生活改善の経験

この教材は、日本発の農村開発アプローチとして、日本の戦後の生活改善運動を概観し、日本の援助関係者が推進する援助業務の参考とすることを目的に制作しました。現在、各プロジェクトの中で生活改善のコンポーネントとして取り入れている生活改善活動アプローチが、単なる導入活動でしかない「改良かまど」を、社会的コンテクストを考慮しないまま取り入れたり、収入向上が優先される目標であるとの理解から、生活改善と称して一挙に食品加工や手工芸を導入する向きがあります。生活改善アプローチを正しく理解していただくために、日本の生活改善運動についての5つのキーワード(農村開発、貧困削減、生産と生活の両建ての働きかけ、参加型開発、行政と住民のシナジー)に基づき、生活改善活動へのアプローチ事例を通じて、理解を深められるよう構成しました。