JICA中部 映像で学ぶ「人間の安全保障」-国際交流イベントで教材を活用-

2023年7月26日

愛知県日進市の国際交流イベントで上映

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国際交流イベントで教材を上映した様子。さまざまな感想をいただきました。

2023年7月1日に開催された愛知県日進市SDGs理解促進イベント「にっしんわいわいフェスティバル2023」にて講義を行いました。この講義は、イベント実行委員より「昨今の国際情勢を鑑み、JICAの活動と平和について講演してほしい」という依頼を受けて行ったもので、そこでJICA-Netマルチメディア教材「現場に見る人間の安全保障(セネガル編)」を上映しました。講義には、16名程が参加しました。
今回一般市民向けの講義に活用できる、人間の安全保障と平和構築支援についてわかりやすく説明した教材を探していたところ、本教材を見つけました。


今、求められる「人間の安全保障」とは?

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教材では、まず「人間の安全保障」の基本概念について説明します。

「人間の安全保障」とは、人々の保護と能力強化を通じて、すべての人々が、恐怖と欠乏から免れ、尊厳を全うすることができる世界を創る、という理念で、2012 年に国連総会決議でその定義づけが行われました。
教材は「人間の安全保障」の基本概念について説明しつつ、JICAの実践例を紹介しています。セネガル編のほかに、ザンビア編、ボスニア・ヘルツェゴビナ編がありますが、以前セネガル事務所に2回赴任していたので馴染みがあり、説明がしやすいという利点もあり、今回はセネガル編を利用しました。
セネガル編では、「人間の安全保障」の基本概念である保護の観点から、メレト村で成功した水管理システムをセネガル国内に広く普及させるための支援とその成果を生かして村の生活改善を図る「安全な水とコミュニティ活動支援計画プロジェクト(PECTAC)」、そして能力強化の観点から、塩害に苦しむニューロ・デュ・リプ県で植林活動の促進と住民参加型の地域生産システムの改善を目指す「総合村落林業開発計画プロジェクト(PRODEFI)」を取り上げています。


映像を通じた効果的な理解促進

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塩害で苦しんでいたニューロ・デュ・リプ県の村では、JIICAのプロジェクトで野菜の栽培ができるようになりました。

当日は、講義冒頭に「人間の安全保障/平和構築」の概念を分かり易い言葉で参加者へ説明し、その後映像を流すことで「人間の安全保障/平和構築」の理解促進に繋がりました。
参加者からは、現地住民とのコミュニケーションはどのように進めたのか、またアフリカの奴隷の歴史を考えるきっかけとなった等、様々な意見が出され、映像を通じて現地状況理解及びJICAの取り組みに係る理解が深まりました。
また、教材を上映することで参加者の関心を引くと同時に、約60分という制約がある時間の中で効率的に人間の安全保障・平和構築支援を説明することができました。

ますます国際情勢が厳しくなる現在、開発協力大綱でも「人間の安全保障」がフォーカスされています。市民に広く理解してもらう活動に、本教材が有効と考えます。特に、高校・大学生向けの講義に向いているのではと感じました。
「人間の安全保障/平和構築」の実現に向けて、様々な人々が考えるきっかけとなるよう、今後も機会があれば活用していきたいと思います。

*講義では、本教材と合わせて緒方貞子平和研究所「緒方貞子元JICA理事長が実践した「人間の安全保障」~フィリピン・ミンダナオ~」も上映しました。ぜひ併せてご覧ください。


小森 正勝
JICA中部 所長

藤原 怜子
JICA中部 市民参加協力課 課長

このページで紹介している教材

現場に見る人間の安全保障 セネガル編

「人間の安全保障」の視点は開発協力大綱に掲げられている通り、我が国ODAにおける基本方針であり、これまでJICAは「人間の安全保障」の概念及び右概念を実践するためのアプローチについて周知を図ってきている。
本教材は、JICA事業関係者の人間の安全保障及びそのアプローチに対する理解を促進することを目的とし、人間の安全保障の基本概念(アプローチ含む)を説明後、セネガルで行われている「安全な水とコミュニティ活動支援計画」と「総合村落林業開発計画プロジェクト」の2案件での取り組みや工夫を見せている。具体的には、次の視点が反映されている①包括的に取り組むこことで人々を脅威から守る、②地域社会・人々が自らを守れるように能力強化する。