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- JICA横浜 海上保安分野の日本の国際協力の歩み-「Safety」から「Security」へ-
海上保安分野の国際協力を紹介する教材
海上保安のこれまでの歩みから現在までの潮流を紹介する教材です。
JICA横浜は「海に関連する研修コース」を多く実施することが特色で、海上保安分野関連コースもそのひとつですが、これまで日本の海上保安の歩みを一貫して紹介する教材がありませんでした。また、在外事務所の担当者や現地のカウンターパートへの、海上保安分野の新たな技術協力や研修コースの紹介、応募勧奨に利用できる広報素材もなかったことから、社会基盤部運輸交通グループ第二チームとJICA横浜研修業務課が協力して、JICA-Netマルチメディア教材「海上保安分野における国際協力の歴史」を作成しました。
教材の様々な活用方法
本動画教材は和英の2言語で作成しています。海上保安分野の研修やイベントでの上映のほか、国際協力に関心をお持ちの一般の方々による視聴、内部スタッフによるYouTube上での自主学習など、幅広い利用を想定しました。また、テーマを絞った7分程のダイジェスト版を2本作成していますので(「海上保安機関の重要な機能と役割」、「『技術協力×アセット』の相乗効果を目指す」)、時間に制約のある場面での利用も可能です。
具体的には、以下のような活用を想定しています。
(1)課題別・国別研修で来日した研修員に対し、研修開始時に使用する概観教材
(2)JICA横浜で実施する「海」に関連した研修コース参加者への紹介
(3)研修員が帰国後に所属先で研修活動報告を行う際の使用・所属先同僚との視聴
(4)帰国研修員の帰国後活動フォローアップ時の視聴
(5)技術協力における、現地セミナー等での上映
(6)JICA事業のカウンターパート、在外公館へのJICA業務紹介・広報
(7)国内外のJICAスタッフの自主学習や勉強会
(8)ホームページやフェイスブックなどSNSツールを利用した広報
(9)一般市民も視聴するJICA横浜のロビーのモニターでの放映
視聴者に海上保安に関する日本の協力の全体像を紹介することによって背景や動向をより解り易くする目的で、上記に挙げられた様々な場面での利用を想定して作成しましたが、更に、ODA対象国の海上保安機関職員らが、本教材の視聴を通して、次の新しい本分野の国際協力にかかる協議に進むことができる、といった、新しいプロジェクト設計のきっかけとなるような活用方法も期待されています。
「Safety」から「Security」、そして「海上における法の支配」へ
本教材は、海上保安分野における国際協力現場を、時間軸に沿って具体的に観て理解ができる教材となっています。特に、海上保安機関が担っている多岐にわたる分野において、日本が長年に渡りどの様に関わってきているかを、世界動向を踏まえつつ、視覚を通して良く解る工夫がされています。
具体的な内容としては、まず日本の国際協力が開始された数年後の1960年代末~1980年代における本分野の国際協力のあゆみを、「Safety」をキーワードに紹介しています。
1960年代には、主にマラッカ・シンガポール海峡の沿岸3か国の海上交通の安全保持を目的とした海図作成の協力などを通じ、本分野への国際協力が開始されたこと、開始当時は、まだ第二次世界大戦の記憶が新しかった現場との信頼関係を築くための一つの手段として研修事業が貢献したこと等、現場のヒューマン・ストーリも紹介されています。
現場の映像や画像を使用してわかりやすく解説しています。
フィリピン沿岸警備隊と日本から派遣された国際緊急援助隊が共同で油防除に取り組む様子。
1980年代には、海上交通も発展を見せ、大規模タンカーや大型客船座礁などの事故などによる海難や海水汚染問題等の、世界レベルの問題に沿う形で、本分野の国際協力が、技術協力や研修コースの現場から、より広がりをみせていった背景が解る工夫がなされています。
その後、2000年頃を境に、「海の安全保障」が注視されるようになった世界動向に合わせて、「Security」をキーワードとする国際協力が、「海上における法の支配」の分野に拡大してきた道のりを解り易く説明しています。
変化し、拡大する海上保安の役割を共に考えるために
既に研修やプロジェクトの現場で活用を始めており、視聴者からは「大変解り易い」「海上保安分野における国際協力の包括的な理解に繋がる」等のコメントを頂いています。
一例として、教材を視聴したインドネシア・スマトラ島のドマイ港の港長からは、「海上保安分野における協力に対する日本そしてJICAの皆様の素晴らしいご貢献に、心より感謝申し上げます。皆様のご献身、専門知識、そして協力の精神は、私たちの共通の目標を達成するうえで極めて重要な役割を果たしています。共に海の安全を守り、より安全で持続可能な未来を築いていけることを大変光栄に感じています。今後とも両国の利益のために、このパートナーシップをさらに深められることを心より願っております。」とのコメントがありました。
また、帰国研修員活動FU調査では、帰国研修員である東ティモール海上警察司令官などより「自分が参加した研修コース以外に関しても実施状況が良く判った。組織の人材強化を目的としたさまざまな研修コースへ職員を参加させたい。」等の声がありました。
最後に、実際に教材を活用している事例をいくつかご紹介します。今後も引き続き広く、様々なケースで沢山の方々に本動画教材を視聴していただき、海上保安機関と国際協力への理解を深めるきっかけになれる活用を展開していく予定です。
教材を活用した事例一覧(2) 課題別研修「救難・環境防災」フォローアップ調査(東ティモール)にて
教材を活用した事例一覧
(1)課題別研修「海図作製技術」
時期 2024年12月
内容 インドネシアの帰国研修員や所属組織職員が集い、視聴。現在に至るまでの、海上保安分野の日本の援助協力について、改めて理解促進、将来の協力につなげた。
(2)課題別研修「救難・環境防災」フォローアップ調査
時期 2024年12月中旬
内容 課題別研修の帰国研修員活動フォローアップの一つとして、JICA調査団が東ティモールを訪問。海上警察司令官(帰国研修員)主催で、海上警察に所属している帰国研修員の活動報告会を実施した際に上映。日本による時間軸に沿った海上保安分野の協力の広がりを総体的に理解し、将来的な協力の可能性や研修コースの参加について理解が促進された。
(3)JICA内ランチ上映会
時期 2025年2月
内容 JICA内関係者を対象とし、「海上保安分野における国際協力の歴史」にかかるランチ勉強会として上映会を実施。参加者の理解促進が向上した。
(4)スリランカ国海洋災害対策及び海洋環境保全に係る油防除対応能力向上プロジェクト
時期 2025年2月
内容 スリランカ沿岸警備庁(SLCG)キリンダ署員に対し、JICA短期専門家より紹介。視聴対象者は日本の油防除技術や教授法の取得を目的とし、訪日研修に参加した帰国研修員や、現地で油防除技術を同僚へ教えているインストラクター。同時に、帰国研修員が主体となり、SLCG長官を始め、組織内職員へ本動画映像を展開。本分野の協力にかかり相対的に理解促進が図られた。
JICA横浜 研修業務課
このページで紹介している教材
海上保安分野における国際協力の歴史
1960年代末、東南アジアにおける海上交通の安全確保に始まった、海上保安分野における日本の国際協力は、その後海難救助や油防除へと拡大し、近年では、それまでの「Safety」から、海上法執行、国際法に基づく海洋秩序の維持といった「Security」にも広がりを見せています。
このビデオではその歴史を紐解きます。
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