JICA人間開発部 デジタルヘルスが未来を変える―誰もが適切な保健医療サービスを受けられる社会に―

JICAのデジタルヘルス推進

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デジタルヘルスは、UHC達成に貢献できる有効な手段になると考えられます。

JICAは、デジタルで一人ひとりが多様な幸せを実現する社会を目指し、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進するため、「JICA DXビジョン」を定めています。途上国で展開するすべての事業でデジタル化を図る「JICA DX」を推進する中で、保健医療分野では、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成に不可欠なデジタルヘルスの活用を含めたイノベーティブな取り組みを進めています。

JICAグローバル・アジェンダ「保健医療」においても、新しい技術・ノウハウ・DX 等の事業への取り込みの必要性としてデジタルヘルスに言及しており、その推進のために人間開発部を中心としたデジタルヘルスのネットワークを2020年1月に設置し、デジタルヘルス導入のための情報収集・分析、スタッフのデジタルヘルスへの対応力強化等を通じ、保健医療分野におけるデジタルヘルス技術のさらなる活用促進を進めています。

以上の背景のもと、途上国においてデジタルヘルスの導入・活用を進めたいと考えているJICA関係者や民間企業等の外部パートナーなど多くの関心層に、デジタルヘルスの国内外の導入事例やJICAの取り組みの方向性を知っていただくことを目的として、JICA-Netマルチメディア教材「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成のためのデジタルヘルス」を制作しました。
本教材を通じて、UHC達成のための課題や途上国の課題解決に寄与するデジタルヘルスの活用例や可能性、JICAのデジタルヘルス戦略・活用・今後の展望について紹介します。

デジタルヘルスの可能性と国内外の活用例をわかりやすく解説

デジタルヘルスとは、ICT、モバイル、AIなどのデジタル技術やあらゆるデータを活用することで、医療従事者や患者本人の意思決定を支援し、治療や予防、健康促進などに役立てることをいいます。
本教材では、UHC達成のためにデジタルヘルスが果たす役割や可能性を解説しつつ、デジタルヘルスを活用した具体例として、国内では官民が連携してデジタル化を推進する会津若松市、途上国では、民間企業が取り組んでいる事例として、スマートフォンアプリなどを使った妊婦健診システム(コンゴ民主共和国)、眼科の遠隔診断システム(モンゴル、カンボジア)、ドローンを活用したマラリア対策(シエラレオネ)を紹介しています。

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高齢化が進む会津若松では、介護にかかわる人たちの負担を軽減するコミュニケーションアプリを導入。

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現地取材が難しい海外の事例では、オンラインインタビューや現地の写真、動画を取り入れて臨場感のある内容に。

教材の制作にあたっては、JICAの目指す方向性やデジタルヘルスが活用された将来の社会のあり方も含め、デジタルヘルスの持つ様々な可能性を未来志向で示せるような内容にしました。
デジタルヘルスに関する国際潮流に加えて、国内自治体や途上国で既に実践されている先進的な事例を取り上げ、また本分野で活躍されている有識者のインタビューも盛り込みました。海外事例については、現地取材が難しかったことから、オンラインインタビューに加え、現地の写真や動画提供をいただくなど臨場感のある内容になるように心掛けました。
デジタルヘルスにあまり馴染みのない視聴者でも理解しやすいように、構成の順序や、難しい内容には丁寧な解説を付けるなどの工夫もしています。

デジタルヘルスの活用の場を広げるために

本教材は、主にJICAグローバル・アジェンダ「保健医療」「デジタル化の促進」に関連する分野での活用を想定しています。
具体的には、技術協力プロジェクトのコンポーネントとしてデジタルヘルスの導入を検討するJICA職員・国内及び国外の関係者、新規及び既往プロジェクト関係者を対象とし、保健医療分野での課題別研修、国別研修などでの活用の他、JICA事業におけるデジタルヘルス導入を検討するあらゆる場面(各プロジェクト、事務所での上映会、イベント・セミナーなど)での活用を想定しています。
教材はまた、デジタルヘルス領域で途上国への展開を想定している民間企業も対象としています。JICAグローバル・アジェンダや、先行して策定された母子保健のクラスター戦略においても、コレクティブインパクトの観点から、外部パートナーとの連携・共創を重視しており、途上国の保健医療・母子保健課題とソリューションのマッチングに関心のある民間企業等の活用を想定しています。
本教材が広く利用され、デジタルヘルスの活用促進を通じたUHC達成の一助になることを期待しています。

松尾 英憲
JICA人間開発部

このページで紹介している教材

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成のためのデジタルヘルス

  • デジタルヘルスを活用することで、すべての人に保健医療サービスを身近に、安全に提供できる可能性を訴求する。
  • デジタルヘルスの手法(遠隔医療/遠隔研修/ヒト・モノの移動技術/データ・エビデンスに基づいた意思決定/インクルーシブな技術)を紹介する。
  • 日本国内でのデジタルヘルスの活用状況を「スマートシティ会津若松」事例で紹介する。
  • デジタルヘルスの国際潮流を視覚的に解説する。
  • 途上国で進展するデジタルヘルスの事例3つを紹介する。
  • グローバルヘルスに関わる有識者が未来志向でデジタルヘルスの可能性を述べる。
  • デジタルヘルスが普及することで、UHCを達成した未来を視覚化し、JICAがデジタルヘルス活用を通じてUHCに貢献していくことを訴求する。

途上国における開発協力事業のDXが進んでいるが、特に保健医療分野ではユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成のためには、イノベーティブな取り組みのためのデジタルヘルスの活用が不可欠である。本教材は、UHC達成にむけて途上国が抱える課題の解決に寄与するデジタルヘルスの活用例や可能性、JICAのデジタルヘルス戦略・活用・今後の展望について紹介するものである。