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幅広い分野で活躍している南部アフリカ6か国出身のJICAプログラム修了生・研修員が、それぞれの成果を披露するために一堂に会しました!

2025年2月27日、ABEイニシアティブ(以降ABEもしくはABEイニと略称)及びSDGs Global Leader(以降SDGs-GLと略称)プログラムを中心としたJICA長期研修プログラムの修了生・研修員のうち、南部アフリカ地域6か国(エスワティニ、ジンバブエ、ナミビア、ボツワナ、南アフリカ、レソト)出身者を対象に合同ネットワーキングイベントが実施され、現地及び日本国内の日本企業、修了生及び現役研修員、現地政府関係者等併せて60名(JICA関係者除く)が、ハイブリッド方式で参加しました。

冒頭、JICAアフリカ部・阿久津参事役より開会の挨拶を行った後に、ABEイニ修了生3名、ABEイニ研修員1名、SDGs-GL修了生2名が登壇し、自身の留学の成果や現在の所属企業で行っている取組み、さらには日本と母国の関係強化に向けた今後のビジネスや研究計画について発表しました。

(写真1)開会の辞を述べるJICAアフリカ部・阿久津参事役

(写真1)開会の辞を述べるJICAアフリカ部・阿久津参事役

修了生や研修員による日本企業とのつながりを強化した成果発表

最初に登壇したジンバブエ出身のABE10バッチのムサリリ トライモア氏は、インターン先のソーラーエネルギ発電事業者とともに、太陽光発電と農業を同時に行えるソーラーシェアリングをジンバブエで普及させるべく、実証実験場の建設を検討していると発表しました。加えて日本メーカーと協業して、日本製トラクターを母国へ輸出し、農家に貸し出して、母国の農業の生産性を改善し、機械化を促進する事業計画を検討中です。また自らが母国で起業した家具製造・販売事業の運営も行っています。
大学院での学業に加えて、日本企業と連携して母国の産業を振興させるべく活動しており、彼の事業計画が今後どのように展開していくか、非常に楽しみです。

(写真2)ジンバブエ出身のABE10バッチのムサリリ トライモア氏

(写真2)ジンバブエ出身のABE10バッチのムサリリ トライモア氏

次に登壇したエスワティニ出身のSDGs-GL(2022)のベネット メンジ シドニィ氏は、日本の大学院を卒業後にエスワティニ国立産業開発公社に復職し、日本の中古車輸出事業者との連携を進めようとしましたが、母国の政府規制で実現できなかった経験を語りました。この経験をもとに、修了生や研修員は、日本企業のアフリカに対する信頼を向上させるために戦略的に日本企業の意識向上を図ることや、アフリカへの投資を検討している企業のために、内在するリスクに対処するよう、政府間保証を通じたリスク軽減戦略を検討することを推奨しました。

(写真3)エスワティニ出身のSDGs-GL(2022)のベネット メンジ・シドニィ氏

(写真3)エスワティニ出身のSDGs-GL(2022)のベネット メンジ・シドニィ氏

レソト出身のABE7バッチモエティ モハピ アドリュー氏は、日本の大学院を卒業後にレソトの省庁に復職し、日本で就学中にインターン生として働いた日本の大手建設企業やテント製造・販売事業者との協業を開始しました。あわせて研究テーマである湿地帯の再生を、母国で実現するという計画を実践中です。

(写真4)レソト出身のABE7バッチのモエティ モハピ アドリュー氏

(写真4)レソト出身のABE7バッチのモエティ モハピ アドリュー氏

ナミビア出身のSDGs-GL(2022)のアンジェネ アンドレアス シブテ氏は、卒業後にナミビア産業化貿易省に復職し、主任貿易促進官として貿易振興の法令制定に尽力しており、将来的には貿易や投資分野でナミビアと日本の連携強化を、政府間や企業レベルでも進めていく予定です。

(写真5)ナミビア出身のSDGs-GL(2022)のアンジェネ アンドレアス シブテ氏

(写真5)ナミビア出身のSDGs-GL(2022)のアンジェネ アンドレアス シブテ氏

南アフリカ出身のABE8バッチのズマ マグチノ氏は、日本留学中に廃棄物処理装置の製造会社でインターンをした経験をもとに、将来は廃棄物管理計画とリサイクルを進めて、汚染を無くしフードロスを軽減するとともに、熱交換器市場や化学処理市場をターゲットにして、日本製の産業機械を母国に輸入する代理店経営を目指しています。

(写真6)南アフリカ出身のABE8バッチのズマ マグチノ氏

ボツワナ出身のABE9バッチのラディファラナ アーラバング氏は、卒業後にボツワナ通商起業省に復職し、国内取引の伸長ならびに公正なビジネス慣行の促進を担当しています。将来は、日本との関係を活用して、ボツワナの起業家を日本の民間セクターとつなぎ、日本の企業と協力して、日本の製品/サービスや技術をボツワナに導入する計画を持っています。

(写真7)ボツワナ出身のABE9バッチのラディファラナ アーラバング氏

日本企業からのJICA修了生・研修員への熱い期待の表明

続いて日本企業2社(在日、在南アフリカ)より、各社の事業概要が共有されました。
排水処理薬品や設備の開発・販売を行う日之出産業・藤田取締役からは、アフリカでの事業展開や、いかにABE生を活用しているかについて紹介がありました。特にABEイニのインターン生によって、南アやセネガルの地元企業と業務提携がなされたこと、日本の大学と共同研究が行われていること、インターン生の母国の在日大使館と関係構築ができたこと、研究開発や市場調査で大きく貢献していることが、修了時インターンシップの成果としてあげられました。
Mitsui & Co., Europe ヨハネスブルク支店のムドゥリー サミダーン マネージャー(ABE3バッチ)からは、地元の電力会社とともに、南アの発電事業にいかに共同投資をして、地元の社会・産業インフラを支えているかという、win-winの成功事例が紹介されました。
これらの日本企業の貢献によって、今後両国間のビジネス協力がさらに深まっていくことでしょう。

(写真8)アフリカでの事業紹介やABE生との連携を説明する日之出産業・藤田取締役

(写真9)アフリカでの事業紹介や投資状況を説明されるMitsui & Co., Europe ヨハネスブルク支店のムドゥリー サミダーン マネージャー

AIを活用した自然言語処理ツールの開発・サービス提供会社を起業したABEイニ修了生が成功体験を紹介

AIを用いた自然言語処理ツールを開発・運用する南アフリカのStartupの共同創業者でCEOであるペロノミ モイロア氏(ABE3バッチ)より、成功事例の共有がありました。日本留学中に日本語での生活に苦労したモイロア氏は、言語を正しく理解して必要な情報を得ることの重要性を認識しました。その結果、英語、アフリカーンス、ズールー、セソト等の諸言語の自動文字生成を可能とするAIツールを開発し、コールセンターやテキストベースのカスタマーサービスアプリを通じて顧客サービスを提供する企業を支援しています。米Time誌により“AI領域で最も影響力のある100人”に2023年10月に選ばれ、2023年12月にはTED Talkに登壇、2024年10月には“東北大学国際功労賞・海外同窓会アウォード”を受賞しています。

(写真10)東北大学での留学生活を説明するABE3バッチのペロノミ モイロア氏, Lelapa AI社CEO兼共同創業者

プレゼンテーションの後、活発な質疑応答セッションが行われ、参加者はビジネスに関連する質問を熱心に投げかけ、本イベントが非常に有意義なものとなりました。
閉会の挨拶では、JICA南アフリカ事務所の佐々木次長より、本イベントに参加したすべてのABEイニ・SDGs-GLの修了生・研修員と日本企業に感謝の意を述べました。

(写真11)閉会の辞を述べるJICA南アフリカ事務所・佐々木次長

JICA修了生、日本及び南部アフリカの企業、政府関係者間の協力関係を強化するための機会を提供

本イベントを通じて、ABEイニ及びSDGs-GL修了生と研修員が、お互いの経験や活動から学びを深め、意見交換を行い、ネットワークをさらに強化する機会となりました。また、日本企業や政府関係者は、ABEイニシアティブ事業についての理解を更に深めることができました。
JICAは今後も、ABEイニ及びSDGs-GL修了生と研修員のネットワーク強化、日本企業との連携を促進し、アフリカと日本の架け橋となる人材の育成に努めて参ります。