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- セネガル:JICA長期研修の修了生と日本企業との協業を促す帰国報告会を開催
セネガル出身のJICA研修の修了生が、セネガル在住日本企業、政府関係者と対面で成果報告会実施
2023年12月20日セネガル共和国の首都ダカールで、ABEイニシアティブをはじめとするJICA長期研修生6名の成果報告会が開催され、セネガル在住の日本企業や現地企業、セネガル政府関係者、在セネガル日本国特命全権大使他が招待されました。本帰国報告会では、日本企業とJICA研修の修了生との協業や、いかにABEイニシアティブを留学生にとって実り多いプログラムにするかについて、熱い議論が交わされました。
写真1:集合写真
イベントはJICAセネガル事務所吉水次長の歓迎の挨拶で始まりました。吉水次長からは、報告会を通して、JICA研修の修了生と日本企業や政府間関係者とが修了生の経験を共有できることに対する喜びが伝えられた後、研修プログラムの概要が説明され、最後に修了生に対し、日本とセネガル間のビジネスネットワークに対するさらなる貢献への期待が述べられ、参加者の意識を高めました。その後、在セネガル日本国特命全権大使より、開会の挨拶を頂きました。続いてJICAアフリカ留学生のOB・OGによって組織されるKakehashi Africaやセネガル出身のJICA研修員の同窓会組織より、彼らの活動紹介がおこなわれました。経験共有として、日本で20日間の課題別研修(保健医療)に参加したSeringe Modou Faye氏(Medina Yoro Foulah病院 医師)の発表が行われ、研修中、大学、医療機関を訪問し、学生、教員、医療関係者と交流し、医療設備等の違い等について見識を深めた様子が紹介されました。
写真2:開会の辞
左から
Papa Biram Thiam 氏(技術協力局長)
伊澤修氏(在セネガル日本国特命全権大使)
吉水潤氏(JICAセネガル事務所次長)
Massar Sarr氏(全国雇用者評議会(CNP)事務局長)
JICA研修修了生による発表で日本企業とのつながり強化を検討
続いてJICA研修の修了生6名より、日本での専攻やインターンシップの経験等が紹介され、セネガル政府関係者や民間部門、セネガル在住の日本企業の間で、これら研修プログラムの重要性についての認識を高めることができました。加えて修了生間のネットワークも強化できました。
その後修了生2名により、「日本の民間セクターがセネガルへ進出するために、ABEイニシアティブのインターンシップ・プログラムをいかに改善するか」というテーマでプレゼンテーションが行われ、当該修了生を含む以下の4名のパネリストでディスカッションが行われました。その後以下のような活発なQ&Aが行われました。日本企業のセネガル市場への進出にJICA研修の修了生がいかに高い関心を持っているかが、示されました。
(パネリスト)
- 1 . Diarietou Gueye氏(Kakehashi Africa カントリーマネージャー) (ABE3バッチ)
- 2 . Marieme Sarr氏(ABE 7バッチ)
- 3 . Massar Sarr氏(全国雇用者評議会(CNP)事務局長)
- 4 . Mamadou Ndome氏(JICAセネガル事務所)
イベント参加者より以下のような質問、問題提起がなされました。
- 応募しようとする若者、修了生、セネガルの政府関係者、セネガル民間企業等すべて関係者間におけるコミュニケーションが十分でないために、プログラムに対する認知度が十分でないのではないか。
- セネガルの民間企業が、ABE生のインターンシップ研修を積極的に受け入れるべきではないか。
- 応募者への支援、修了生へさらなる支援を行うことにより、参加者の向上、修了生の円滑な就職につながるのではないか。
- 年齢制限40歳等、制度を変えれば、参加希望者が増え、今より多くの修了生をセネガル政府機関や民間企業に人材を供給できるのではないか。
これに対して、パネリストからは、以下の回答がありました。
- コミュニケーション不足を改善するために、プログラムの修了生間のネットワークづくりが進められており、また、日本とセネガルの民間セクターが両国の商工会議所等を通じて関与し、関係を高める努力をしている。そのため、企業のそれぞれのニーズをある程度把握しており、プログラムの目的に適応できていると認識している。
- セネガル民間企業への支援に関しては、日本の経験に基づいた人材開発センターを設立することで、日本の民間セクターとのつながりを促進することができる可能性がある。
今後のプログラムをよりよくするため、参加者から以下の提言がありました。
- プログラムの認知度を高める。
- 日本で日本企業が行うインターン研修が、研修内容に合致したものとなることが望ましく、また、日本で実施されている実践型のインターン研修をセネガルで実施することも検討してほしい。
- セネガル人への研修制度を拡充する。(ABE、SDGs、JDS、国費留学などだけでなく、さらに奨学金制度による研修制度(または留学制度)の選択肢を増やしてほしい)
- セネガルでの起業を希望する修了生に対し、起業を促進する支援枠組み(メカニズム)を構築する。
- 日本企業のセネガルへの投資を奨励する。
参加者の声としては以下がありました。
- 政府機関、民間セクター、セネガルに帰国した修了生の側からは、プログラムの発展と持続可能性にもっと関与していきたい。
- パネリスト以外の他の参加者からは、プログラムが提供する研修の質は高く、提供される機会(実践的な日本ビジネスのノウハウを習得する機会、セネガル企業が日本の民間セクターとつながる機会、日本の民間投資を促進する機会等)は大きい。
写真3:修了生と日本企業のディスカッションやQ&Aセッションのシーン
日本企業からの事業概要の共有により、JICA修了生との連携について深い議論に発展
続いて日本企業2社より、各社の事業概要がJICA修了生と共有されました。2社とも修了生による発表であったため、入社の経緯、入社後の職務内容等についても共有されました。今回、イベントに参加された日本企業は、既にセネガルで事業を展開中であり、JICA研修の修了生の活躍の場となっており、事業紹介だけでなく修了生との連携事例を紹介する良い機会となりました。ここでの発表は、その後、ネットワーキングランチ等の機会でさらなる議論に発展していきました。
写真4:修了生による日本企業各社の事業概要説明のシーン
日本企業とJICA研修の修了生とのネットワーキング昼食会でこれからの連携可能性を深耕
閉会の辞では、総務省技術協力部(DCT)Papa Biram Thiam氏より、今後も日本企業はもちろんセネガルの企業との協力関係をより強化して行くことの必要性を強調。研修プログラムを運営する日本政府及びJICA、本日参加された日本企業、JICA研修の修了生、政府関係者、在セネガル日本国特命全権大使その他の方に対して感謝の言葉が述べられました。
本セッション後には、ネットワーキングのための昼食会が行われ、参加者間で親交を深め、セネガルの産業の発展や日本企業のセネガルでの更なる事業活動の活性化について、活発な意見が交わされました。
今回のイベントを通して、いかに日本企業とアフリカとの懸け橋になるかを考えながら、真剣に日本企業と議論を交わす修了生の様子が見られました。
修了生同士、ランチを介しながら、現在の職場において、日本での経験を生かすことの難しさに触れ、同じ志を持つ仲間の大切さを強調する姿が見られました。また、日本企業の方が、食事の手を止め、日本での経験がどのように現在の仕事に役立っているかを修了生に聞く姿も見られました。
写真5:ネットワーキングランチのシーン
JICAは引き続きABEイニシアティブおよびJICA長期研修プログラムの研修員や修了生のサポートを続けながら、ネットワーク強化と日本企業との連携を促進し、アフリカと日本の架け橋となる、より多くの人材育成に尽力します。
実施概要
会議名:ABEイニシアティブ帰国報告会/ネットワーキングフェア2023(セネガル)
開催日: 2023年12月20日
主催: JICAセネガル事務所
場所: セネガル共和国ダカール市 King Fahd Plaza Hotel
参加者
- ABEイニシアティブ修了生4名
Joseph Sega Ndione氏 (ABE 2バッチ )
Mouhamadou Moustapha Sarr氏 (ABE 3バッチ)
Mamadou Ciss氏 (ABE 4バッチ)
Marieme Sarr氏(ABE 7バッチ) - X-Tech Program修了生2名
Ameth Fadel Bayo氏 (卒業年2023年)
Ousmane Baldé氏 (卒業年2022年) - 2023年度課題別研修(保健医療 アフリカ仏語圏地域 女性と子どもの健康改善)
参加者1名
Serigne Modou Faye氏(研修期間:2023年11月5日から22日) - 日本企業 所属、役職、氏名
三菱商事株式会社 Guy Martial Ngor Diagne氏 (ABE 3バッチ)
CFAOインフラストラクチャー/豊田通商株式会社 佐藤秀祐氏
コマツ代表 Hiroyuki Hosoya氏
コマツ Elimane Ndiaye氏(ABE 4バッチ)
Tumiqui、Sucre Cube 鈴木麻由氏 - 現地企業ならびに業界団体 役職
セネガル起業家運動(MDES)事務局長
CFPT/セネガル日本 部長 - セネガル政府関係者 役職
高等教育・研究・イノベーション省
保健・社会活動省(MSAS) 研修担当
農業農村設備省(MAERSA) パートナシップ担当
経済・計画・協力省(MEPC) 研修担当
財務省(MFB) マネージャー総務省技術協力部(DCT) 研修担当
ダカールCheikh Anta DIOP大学(通称ダカール大学)教員
全国雇用者評議会(CNP) 事務局長
セネガル全国雇用者連盟(CNES) 部長
ダカール商工会議所CCIAD) 課長
中小企業基盤整備機構 (ADEPME) プログラム担当 - 在セネガル日本国特命全権大使 伊澤修氏
- 日本元研修生・元留学生協会(ASEJ)会長
- Kakehashi Africa カントリーマネージャー
プログラム概要
12月20日(水)
- 歓迎挨拶と来賓紹介
JICAセネガル事務所 吉水次長 - 開会の挨拶 在セネガル日本国特命全権大使
- ASEJ会長の講演(Kakehashiも含む同窓会組織についての説明)
- JICA研修の修了生による発表
- ABE修了生による「日本の民間セクターがセネガルへ進出するために、ABE
イニシアティブのインターンシップ・プログラムをいかに改善するか」というテーマでの発表 - 上記テーマでのディスカッション
- 日本企業プレゼンテーション(三菱商事、コマツ)
- 閉会の辞
技術協力局 Papa Biram Thiam氏 - ネットワーキング昼食会
背景・目的
JICAは、アフリカの産業人材や行政官や若手研究者等の育成を目的とした長期研修事業を実施しています。今回開催された成果報告会では、以下の2つのプログラムの修了生を集め、日本企業との連携を促進するために開催されました。
対象プログラム
アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(ABEイニシアティブ):
アフリカの産業人材日本企業のアフリカビジネスをサポートする「水先案内人」の育成を目的として、アフリカの若者を対象に日本の大学での修士号取得と日本企業などでのインターンシップの機会を提供するプログラム。
X-Tech Program:
デジタルエコノミーの推進を担う機関における幹部候補生を対象に、日本のデジタルトランスフォーメーション(DX) を推進するアプローチを学び、自国に適した方法論を検討することができるようになる人材を育成するプログラム。研修修了生が、DXをけん引する組織において、X-TECH (ICTを活用したソリューションを提供することで新しい価値や仕組みを創造する) を俯瞰的に推進、 官民のオープンイノベーションを形成することが期待されている。
※2023年は ABEイニシアティブ10年目の節目の年となります。
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