「社会体験型教員研修のその後」

【写真】近藤 勝士さん津島市立東小学校 教員
近藤 勝士さん

昨年の7月・8月の2か月間、「小中学校社会体験型教員研修」としてJICA中部で勤務していただいた津島市立東小学校教員の近藤先生に、研修を終えて1年たってのお話を伺います。

研修を終えて、1年たちますね

JICAブース出展のお手伝いにきました

正直、もう1年たったのかと思います。1年前の楽しく、濃密な2ヶ月間のことが思い出されます。途上国・地域のために国際協力をするJICA。その組織の中で働かせていただけたことは本当に幸せでした。「教員の常識は社会の非常識」といわれることは本当にそうなのか?と思っていましたが、JICA職員の方から「それならJICAの常識も社会の非常識だよ」といわれ、それぞれの組織も国もそれぞれに決まりや文化や伝統があり、みんな違って当然だし、みんな違っていいということに気づかされました。また、「援助の仕方に正解はなく、JICAが必要なくなることが理想」といわれたことに感銘を受け、「授業の仕方に正解はなく、教師が必要なくなることが理想」ということに改めて気づかされました。
研修後もJICA中部とのつながりは続いており、いろいろなお声かけをいただき、感謝しています。違う職種の方々とのつながりは本当に大切だと感じています。今後とも、よろしくお願いいたします。

研修後、どんな還元ができていますか?

なごや地球ひろばの展示が入れ替わる度に見に来ています

研修後の1年で何が還元できているのかと聞かれれば、正直何もできていません。研修後、学校内では研修報告をさせていただき、今年度の総合的な学習の時間を通しての研究実践の方向性を提案させていただきました。学校外では、JICA中部主催の開発教育指導者研修初級編の講師の依頼をいただきました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大により、3月より学校が臨時休業になったことに伴い、上記のことを含め、ほとんどのことが中止・延期となっています。教育関係者と国際協力の関係者が互いに連携する動きが活発となるように、橋渡しをしていきたいと思っていますが、十分な動きができていないのが実情です。
しかし、考える時間をいただいたことで、今まで以上によりシンプルに考えるようになりました。例えば、子どもたちの学び。本来学びとは、自分が知りたいこと、やりたいことを突きつめていくことが学びであり、誰からも強制されることではない。臨時休業中に、課題も宿題もない中、子どもたちが過ごした時間こそが、それぞれの本当の学びではないのかと思います。たとえ、それがどんな分野であれです。学校で当たり前に行われる教科の授業。枠や型のある中、進めることは果たして本当にすべての子どもたちのためなのか?そういったことを見直す機会ではないかと思います。私たち教師は、これはこうだよと方向付けをしがちですが、こんな見方や考え方もあるよというきっかけづくりが大切だと改めて考えさせられています。

今後、教育現場に必要なのは?

私が教師をつづける理由は・・・

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、オンラインでの学習や授業のニーズが高まりました。また、新しい生活様式をスタンダード化していくことも求められています。今年度より小学校では、新学習指導要領が全面実施され、新しい教科書、新しい評価に対応していかなくてはなりません。しかし、先ほども述べたように、シンプルに考えることが大切だと思います。
当たり前ですが、学校現場では、子どもたちを目の前に毎日があわただしく過ぎていきます。また、同じ小学校の中でも、低学年の担任の先生、高学年の担任の先生、特別支援学級の担任の先生、担任をもたない先生など、それぞれにまるで違う仕事をしているような感覚にもなります。学校ごとにも地域の特性なども踏まえて違いますし、中学校、高等学校、それぞれに違います。指導書があり、マニュアルもあったりしますが、その日のその教室の子どもたちを目の前にしたとき、何が正解かなんて誰にも分かりません。それでも、考え、見極め、最善と思う方法で子どもたちに投げかけ、子どもたちとやりとりをしていくことが求められるのが教師という仕事だと思っています。そして、教師も人です。100人の教師がいれば、それぞれ最善と思う方法も変わってくる。それでよいのだと思います。ただ、共通していなければならないことは、子どもたちのためを考え、愛情をもって日々向き合っていくことのはずです。
これからの教育現場に必要なことは、枠や型にはめられることなく、多くのきっかけをもらったり、見つけたりしていく中で、大人も子どもも成長していけるシステムだと思います。そのようなシステムで動いていれば、たとえ休業になろうとも、どんな状況になろうとも、その環境下でそれぞれに学びを進めていけるはずです。大人も子どももよい意味で、見守り、見守られるそんな学校が増えていくことを願っています。