【実施報告】草の根技術協力事業 ブータン王国における教育支援事業 合同キックオフミーティング(島根県)

2022年3月23日

島根の地方創生の力でブータン 教育改革を支援する草の根技術協力キックオフ会合を開催!

ブータン王国と日本側からの参加者

浜田市世界こども美術館からの参加の様子
©浜田市世界こども美術館

海士町からの参加の様子
©海士町

島根県からブータンの教育改革を支援する草の根技協(草の根 支援型)「ブータン王国での美術指導力の向上とアートを通じた地域活性化プロジェクト」 (実施機関 :浜田市教育文化振興事業団、対象地域:ティンプー県・パロ県・ハ県、 協力期間: 2022年1月~ 2024年12月 及び 草の根技協(地域活性化特別枠)「地域活性化に向けた教育魅力化プロジェクト ブータン王国における地域課題解決学習(PBL)展開事業」(実施機関:海士町、対象地域:チュカ県、 協力期間:2022年1月~ 2024年12 月)の事業開始にあたり、ブータン教育省 Karma Tshering 次官、浜田市久保田市長、浜田市教育文化振興事業団石本理事長、海士町大江町長、ブータン事務所渡部所長、中国センター岡田所長をはじめとする関係者が一堂に介するキックオフ会合をオンラインで開催しました。

中国センター岡田所長からは開会挨拶として、人口減少、高齢化、働き手世代の不足という課題を抱える島根県ですが、浜田市、海士町ともに地方活性化の先駆者として活躍されており、本事業がブータンだけでなく日本の地方創生にも意義のある事業となることを期待する旨発言がありました。
ブータン教育省Karma Tshering 次官からは、本事業はブータンのコミュニティを活性化させ、若者が世界で通用する能力を身につけることを可能にする、ブータンの教育改革のパイロット事業として重要。ブータンから日本が学ぶだけでなく、日本もブータンから学ぶ、共創のプログラム、学びの過程を重視したい との挨拶がありました。
浜田市久保田市長からは、30年以上前からの手漉き紙産業におけるブータンと浜田市(旧三隅町)との交流の歴史、中学生同士の手紙交流、浜田市世界こども美術館での交流が紹介され、本事業を通じさらに友好関係を強化したい旨発言されました。
浜田市世界こども美術館の運営母体である、浜田市教育文化振興事業団石本理事長からは、2017年から2020年の先行フェーズでは3年間で11名のブータン人研修員を受け入れ、帰国後研修を受けた先生がブータンで美術教育の実践を継続し、現地での取り組みをリードする存在になっており、本フェーズでは浜田市世界こども美術館だけでなく、県内外の美術関係者とも連携し、ブータンの美術教育、地域活性化に貢献したい旨発言がありました。
海士町大江町長 からは 、人口減少を食い止めるため、島唯一の高校である島前高校の魅力化向上の一環として、高校生が学校外での地域課題解決学習に取り組んできたことが紹介された。また今回は残念ながらオンラインだが一日も早く対面での事業実施をしたいとの期待が表明されました。

その後、両事業のプロジェクトマネージャーである、高野氏、岩本氏から事業概要について紹介がありました。
高野氏からは先行フェーズでは、地域にある廃材を利用するなどして美術教員の指導力の向上に取り組み、来日した11名のブータン人研修員の中にはパロにブータンこども美術館を設立(※)するなどの実践をしていることが報告されました。ただし美術教員同士の横の連携の不足が課題として明らかになったため、本フェーズでは、美術教師の学校間・自治体間の連携、アートフェスティバルを通じた美術に対する地域社会の理解促進に取り組み、青年海外協力隊との連携も想定。美術教育のための画材などに乏しいブータンに比べ日本では材料は溢れている。その点で、本事業では廃材利用の点がユニークな学びあいのポイント。「リサイクル」ではなく「アップサイクル(不要なものを再利用するだけでなく、新しい価値をつけること。SDGsの実践方法として注目されている)」の考えを重視したい。アートフェスティバルによる地域と学校、観光客との交流ではブータンとの交流人口増も期待できる。浜田市民もブータン人研修員との交流を心待ちにしており、ブータンと浜田市の長い絆を活かし事業に取り組んでいきたいと言及されました。
岩本氏からは、海士町が島前高校の魅力化として取り組んできた地域課題解決学習、所謂PBL(Place, Project, Problem, Property-Based Learning)に関する説明があり、本事業を通じ、ブータンが掲げるGross National Happiness (GNH)をPBLを通じた実践により実現していくという本事業の基本コンセプトが紹介されました。なお、岩本氏は海士町と連携する(一財)地域・教育魅力化プラットフォーム共同代表として本事業に従事しており、同時に島根県教育庁教育魅力化特命官や文部科学省中央教育審議会初中等教育分科会委員を務めています。岩本氏によれば、今後GHNを支える基本理念であるWell-Being(幸福感))やその実践方法としてのPBLはポストSDGsに向けて日本及び世界の教育に重要なものであり、本事業の成果を論文、書籍といった形や、2025年開催の大阪万博の場で発信することを目指したいと構想中とのことでした。
ブータン教育省出席者からは美術教育は(子どもの感性ややる気を大事にするため)全ての教科に通じるものであること、その点で美術教育もPBLも教員と生徒との関係を支える基盤としての共通点があることを再認識したとのコメントがありました。

最後に、閉会挨拶として、ブータン事務所渡部所長から、美術教育、PBLともにブータンの若者がより良い未来を築くための非常に重要で不可欠なスキルであることが強調され、両事業を推進していくにあたってJICAとして支援していくことと関係各位の協力を依頼し、閉会しました。