\教師海外研修/ナマステ!ネパール現地研修報告・後編
2024.09.17
ネパール現地研修の報告・後編は、フェアトレードや防災の取組みなど、さまざまな国際協力現場の訪問から得られた、より深~い学びをお届けします!
(報告の前編は下部リンクからご覧ください)
7月29日に始まったネパールでの現地研修。
日程後半では、フェアトレード、学校での防災の取組みなど、ネパールの課題解決のために取り組む団体を訪問。また、日本語を学ぶ若者との交流のほか、JICAが支援するネパール初のトンネル建設現場も見学しました! 行程前半にもまして、参加教員一人ひとりの学びが広がり、深まる日々となりました。
1984年に設立された地元のフェアトレード団体ACP(Association for Craft Producers:クラフト生産者協会)の工房に入るとすぐ目に留まるのが、羊毛フェルトのぬいぐるみ、陶器の食器、ブロックプリントの布など。どれもデザイン性に溢れ、クオリティも高い製品ばかり。生産者の職人はほぼ全員が女性です。
ACPは低所得層のクラフト生産者にデザイン、マーケティング、技術サービスを提供することはもちろん、生産者とその家族への福利厚生にも力を入れています。勤続評価、年金制度、特に女児への教育手当、医療・育休手当などを提供。労働に対する適正な対価を得ることと、ACPによる福利厚生制度などによって、貧困の改善や子どもの教育アクセスの確保につながっています。研修参加者の皆さんは、日々の自分たちの消費活動が、他者の生活にどうつながっているのかを実感したようでした。
生産者さんの手仕事を見ながら説明に聞き入る様子
ブロックプリントでのエコバックづくりも体験しました!
ネパールは日本と同じ地震多発国。2015年4月のネパール大地震では甚大な人的・物的被害をもたらしました。そうした経験から、「自分の命は自分で守る」ための活動が進められており、日本のNGOブラス・アーツが現地のNGOミトラ・災害リスク軽減学習センターと協働し、学校や地域における防災教育に力を入れています(注1)。
(注1:JICA草の根技術協力事業の枠組みを活用した協力事業)
ミトラ・災害リスク軽減学習センターで防災の取組みを学ぶ
カード並び替えゲームで応急処置の手順が体験的に身に付く
訪問した学校では生徒が主体となって「防災クラブ」活動を行っています。生徒が自ら考えて作成したゲームやクイズを行うことで、防災の知識や、災害が起きた時に具体的にどんな行動をすればよいかを、楽しく、体感的に学べる工夫が満載でした。研修参加者も実際にゲームやクイズを体験してみて、体と頭を動かして学ぶことの効果を実感。
研修参加者からは、防災はネパールと日本の共通の課題の一つであり、「日本の学校での防災教育を見直したい」、「防災クラブの活動を日本の学校でも取り入れてみたい」という声も多数聞かれました。
JICA中部がある愛知県は、東京に次いでネパール人が多く住む地域です。日本在住ネパール人は年々増加しており、ネパールにつながりのある児童・生徒が在籍する学校も増えてきています。来日する前にある程度の日本語力が必要とされるため、カトマンズ市内でも多くの日本語学校を見かけます。
訪問した日本語学校でも、日本での進学や就労を目指して、若い人を中心に日本語の習得に励んでいました。研修参加者とネパール人学生との交流では、日本に行く目的や、他国ではなく日本を選んだ理由などについて意見を交わしました。ネパールの方々の日本に対する良いイメージは、過去から今までのネパール人と日本人とが紡いできた友好関係や信頼度によるところが大きいのかもしれません。
グループ交流を通じて日本についての意見交換や交流を行った
ネパールは国土の8割が山岳地帯で、運輸交通の約9割が道路です。山岳地帯の中にある既存道路では、いくつもの峠を上り下りしたり、急カーブなどもあるため、慢性的に渋滞の発生、事故の危険性があります。現在JICAの協力によって建設が進んでいるナグ・トゥンガトンネルは、ネパール初の交通トンネルで、既存道路でかかる時間を大幅に短縮できる見込みです。
今回、トンネル建設現場を見学させてもらい、現地でネパール人と一緒に汗を流す日本人技術者の方々の様子や、日本の高いトンネル技術に、研修参加者みなが感服しました。
トンネルができることで物流の改善はもちろん、人々の生活向上やネパールの経済発展の後押しとなることを願い、現場を後にしました。
12日間にわたる現地研修は毎日が学びの連続でした。移動中のバスの中やホテルに戻ってからも、同行したファシリテーターによる振り返り会を行い、その日の学びの共有や帰国後の実践授業への取り入れ方についてなど、活発な話し合いが続きました。
ネパールでの濃密で深い学びを活かして、いよいよ9月から教材化や指導案づくり、学校での授業実践が始まります。ネパールで収集した現物や写真、映像、インタビューなど沢山の教材を用いて、ネパールでの発見や学びを多くの子どもたちに届けてくれることでしょう!
【参考】教師海外研修スケジュール
①事前研修(7月)
②ネパール現地研修(7-8月)←今回の報告
③事後研修1(9月) 以後、翌1月まで授業実践
④事後研修2(2月)
⑤実践報告フォーラムでの発表(2月)
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