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【事例紹介】鉄道事業の発展をジャパンクオリティで支える~㈱丸上製作所訪問レポート

#9 産業と技術革新の基盤を作ろう
SDGs
#11 住み続けられるまちづくりを
SDGs

2025.07.22

中南米部 利根川
国際協力調達部 山本
東京センター 梶谷

こんにちは!2025年度JICA新入職員です!今回は、JICA中部でのOJT中に訪れた、JICA Bizで海外展開をされている企業をご紹介します。私たちが訪れたのは、愛知県豊川市の株式会社丸上製作所です。2024年に実施した「タイ国鉄道車両用コイルばねのニーズ確認調査 」について、タイ進出の背景や調査の様子、そして海外展開への熱い想いを、小松義博会長と小松義生代表取締役社長に伺いました。明治39年創業の歴史あるこの老舗企業が、船舶や新幹線のばねを作り続けてきた技術を活かし、東南アジアのタイでどんな挑戦をしているのか、ぜひ一緒に見てみましょう。

 丸上製作所は、明治39年設立の、船舶や新幹線、産業機械向けの高品質なばねを作り続けている老舗企業です。愛知県豊橋は生糸の町としての歴史を持っています。製糸所からスタートした丸上製作所は、戦争時に軍需工場としてばねを製造するようになり、その技術を現在も活かし続けています。新型コロナウイルス禍による中断を挟み、2017年から2023年にかけて実施したJICA中小企業・SDGsビジネス支援事業(JICA Biz)「モンゴル国における鉄道カーブ区間用レール締結装置の普及・実証事業」での経験をもとに、同じくJICA Bizを活用し、インフラとして鉄道が普及しつつあるタイで鉄道事業の状況や鉄道車両用部品のニーズを調査することとなりました。

 タイでは、タイ国鉄で使用している日本を含む外国製車両に使われているコイルばねの交換において、丸上製ばねの導入可能性を調査しました。調査の結果、長距離列車のばねは予想以上に折損していませんでした。他方、鉄道に関する法や制度が整備されておらず、メンテナンスに関する基準が確立されていないため、安全管理に関する意識が根付いていないことが分かりました。タイ国鉄で日本式メンテナンスのセミナーを実施したところ、多くの参加者から今後はセミナー内容を取り入れたメンテナンスを実施したいという声が寄せられたそうです。小松社長は、「事故防止につながり、メンテナンスの重要性を認識してもらうことができた。また、鉄道業界全体で制度の確立が求められていることが分かった」と話します。「良し悪しの判断基準がなければ、何が良いのか分からない。技術を伝授すると同時に、国及び鉄道業界全体として法制度の確立を進める必要がある」と熱く語っていました。

 丸上製作所が海外進出の際に大切にしているのは、日本製品は丈夫で長持ちするというライフサイクルコストのメリットを現地の方々に実感してもらうことです。実際にばねを提供し、国内外製品との比較を通して、製品の耐久性を見せることで効果を実感してもらいます。製品の耐久性という強みを生かしながら、現地の要求に応じて製品をどうローカライズ(現地適合化)させるかを考えています。例えば、現地の気候に合わせた素材選びや、現地の鉄道システムに適した設計変更を行うことで、より良い製品を提供しています。工場を訪れた際、暑い中でも一寸の狂いもなく作業を続ける職人さんたちの姿に感動しました。長年の経験と技術を駆使して精密な作業を行い、特に最後の仕上げは手作業で行われています。その丁寧さは日本ならではです。こうした職人技がジャパンクオリティを生み出しているのだということを目の当たりにしました。職人の方々は、ばねの製造過程で微細な調整を行い、製品の品質を保証しています。この細やかな作業が製品の耐久性と信頼性を支えていると実感しました。

小松義博会長は、「世界では高速鉄道が花形ではあるが、現状は既存の鉄道をより安全な良いものにしていく必要があり、我々ばね会社だけでは難しい面もある。官民共同で鉄道業界が一丸となり、ALL JAPANでプロジェクトを行っていく必要性がある」と熱く語っていました。丸上製作所の挑戦は、ジャパンクオリティを世界に広めるだけでなく、国際的な技術交流を通じて、より良い未来を築くための大切なステップといえるでしょう。

旧社屋の鬼瓦の前で小松社長と写真

インタビュの様子

ばねを手作業で調整しているところ

出来上がったばね

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