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農業で人と地域を支えるために ―名古屋大学大学院で学ぶフィリピン人留学生の挑戦―(アンヘレス・イヴィ・パラックさん・JICA長期研修員)

今回は、2024年10月に名古屋大学大学院生命農学研究科に入学したフィリピンの長期研修員、ANGELES Ev Paracさん(以下イヴィさん)にお話しを伺いました。
イヴィさんは、JICAが実施する「食料安全保障のための農学ネットワーク(Agri-Net)」の長期研修員として来日しました。
(聞き手:JICA中部 研修業務課)

自己紹介と、来日前のご経歴を教えてください。

私は名古屋大学大学院生命農学研究科で博士課程の研究に取り組んでいます。出身はフィリピン・レイテ州で、国内でも特に貧しい地域の一つとされています。農村で育ち、農業が生活と密接に結びついた環境にいたことが、農業分野で働きたいという思いの原点になりました。
来日前は、フィリピン稲研究所(Philippine Rice Research Institute/PhilRice)で開発専門官として勤務していました。PhilRiceは、フィリピンにおける稲作研究と普及を担う中核機関です。私は主に、農家や普及指導員の能力強化を目的とした研修や開発プロジェクトの企画・運営を担当していました。
より専門性を高め、将来さらに多くの稲作農家や農村コミュニティを支えたいと考え、日本での博士課程進学を決意しました。

来日して間もない頃、日本で特に印象に残ったことは何ですか?

実は、以前にも奨学生として日本に滞在した経験があり、今回が初めての来日ではありません。それでも、改めて感じたのは、日本社会の根底にある規律や他者への敬意、そして集団として物事を考える姿勢が、今も変わらず大切にされているということでした。街並みなど物理的な変化はあっても、人々の価値観の一貫性には強い印象を受けました。

日本での生活や研究を始めるにあたり、特に大変だったことは何でしょうか。

フィリピンでは、夫と二人の子どもと一緒に暮らしているため、日本で一人で学生生活を送るという環境の変化は大きな挑戦でした。時折、強い孤独感に襲われることもありました。
ただ、そんな時に支えになったのが、JICAやインターナショナル・フェロー(IF)のイベントです。人とつながる機会があることで気持ちを切り替えることができ、日本での生活を前向きに続けることができています。

来日から約1年半が経ちましたが、ご自身の変化や成長をどのように感じていますか?

日本に来るにあたって、「同じ自分のまま帰国しない」という目標を立てていました。空っぽのグラスのような気持ちで、新しいことを吸収しようと決めていたのです。約1年半が経った今、そのグラスは新しい知識や視点で満たされ、あふれ始めていると感じます。大学院での研究生活は、忍耐力、規律、そして粘り強さが求められます。その過程を通じて、専門知識だけでなく、人としてのレジリエンス(回復力)も身についたと思います。とても謙虚な気持ちにさせられる経験です。

授業や研修、地域理解活動の中で、特に印象に残っている学びはありますか?

正直に言うと、特定の授業やプログラムを一つ挙げるのは難しいです。というのも、日本で学び、生活し、日本社会の中で日々を過ごしていること自体が、すでに非常に大きな学びだからです。
研究による知的刺激、新しい文化や人との出会い、そして快適な環境から一歩外に出た生活の中での試行錯誤。こうした経験が重なり合うことで得られる成長は、母国に留まっていたら得られなかったものだと感じています。

これから日本で学ぶことを目指す学生へのメッセージをお願いします。

JICAを通じて日本で学ぶ機会は、誰にでも与えられるものではありません。だからこそ、私たちは責任ある奨学生であるべきだと思います。留学生活の中では、必ずしも良いことばかりではなく、時に困難や戸惑いを感じることもあります。
それでも、すべてを学びの一部として受け止めることで、私たちは確実に成長できます。ぜひ、“JaFun(Japan+Fun)”な留学生活を楽しみながら、多くのことを吸収してほしいです。

最後に、日本へのメッセージをお願いします。

このJICA奨学金を通じて私を信頼し、学ぶ機会を与えてくださったことに、心から感謝しています。日本で学べることを大きな誇りに感じています。
この貴重な経験を必ず母国に持ち帰り、より多くの稲作農家や農村コミュニティの発展のために生かしていきたいと思います。感謝の気持ちを胸に、最後まで全力で学び続けます。