北陸の風は国境を越えて

2023.11.30

「卒業後も毎年のように来日し、多い時には年に2回金沢に来ていました。日本語はずいぶん忘れてしまったな。でも金沢の寿司、酒、桜、兼六園、浅野川、どれも私のお気に入りです!」
笑顔でそう話してくれたのは、Kenya Medical Research Institute (以下KEMRI )所長 Elijah M. Songok博士です。
KEMRIは1979年に設立された保健医療分野の研究を責務とする国家研究機関で、感染症対策、健康危機準備対応においてケニア国内外で重要な役割を果たしている機関です。
その所長となって金沢大学を訪問したSongok博士は、JICA長期研修員の1期生で、金沢大学で医学博士号を取得しました。

自身のインタビュー記事が掲載された2003年発行の広報誌を見て、
「覚えているよ」と懐かしそうに話していたSongok博士

今に続く交流

Songok博士は金沢大学に在籍している間、学位取得を目指して研究を行いながら、エイズ孤児の支援を目的に有志とともに「北陸アフリカ協会」を設立し、支援活動を行っていたといいます。その活動を通じて、金沢の人々と強い絆ができたと熱く語ってくれました。学校建設や学校給食支援を行うための資金集めなどを行ったそうで、時には奥さんと一緒にケニア料理イベントを行ったり、地元ラジオ局の番組に出演しケニアのエイズ孤児について話したり、積極的に地域の方々と交流し、つながりができていったと話してくれました。
ケニアと日本の学校でビデオ通話を利用し交流授業を行ったこともあり、交流をきっかけに文房具が日本の学校から送られてきたり、ケニアの児童が手作りのキーホルダーをお返しに送られたりしたこともあったそうです。
また、金沢大学とKEMRIは大学間国際交流協定および学生交流を目的とした覚書を取り交わし、KEMRIの若い研究者が大学で研修を行ったり、金沢大学の学生がケニアを訪問したりして交流を行っており、Songkok博士自身も金沢大学のResearch Professor(※)に任命され(2018年から3年間)、学生を指導することもあったといいます。
リサーチプロフェッサー | 金沢大学 (kanazawa-u.ac.jp)

当時の思い出を楽しそうに語ってくれました。

始まりの地 金沢

2003年に発行したJICA北陸の広報誌 のインタビュー記事で、指導教員であった市村宏教授(現金沢大学特任教授)は、「帰国後彼がJICAのプロジェクトで指導的な役割を果たしてくれること、そしてケニアのエイズ問題解決で重要な役割を果たしてくれることを期待しております」と語っていました。恩師の期待に見事に応えたSongok博士。「金沢は私を受け入れてくれました。専門性を高めるだけでなく、様々なことを経験し、成長させてくれました。そのおかげで今の私があります。すべては金沢から始まった。金沢が始まりの地であるといっても過言ではありません。」とインタビューを締めくくりました。

市村宏教授(左)との絆はこれからも続きます。

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