【石川県】海外協力隊ひろば「JICA海外協力隊の価値って何?みんなで考える1日」

2024.01.11

 2023年12月2日(土)に、金沢市近江町交流プラザにて、JICA海外協力隊ひろばを開催しました。今回は「JICA海外協力隊の価値って何?みんなで考える1日」と題し、基調講演、パネルディスカッション、協力隊個別よろず相談と盛りだくさんの内容となりました。国際協力に興味がある方、これから参加を考える方、海外協力隊経験者の方々など、北陸三県を中心に50名を超える皆さまにお集まりいただきました。

基調講演:JICA海外協力隊事業について

 まずはJICA青年海外協力隊事務局 橘秀治事務局長が、JICA海外協力隊事業についての基調講演を行いました。海外協力隊は、隊員1人1人が「自分たちにできることはあるのか」と現地に入り地道に活動を進めます。このように隊員自らが汗をかきながら、活動を行う協力隊事業が、日本という国が世界に対してどうやって関わって行きたいのかを一番表していると言えます。現在、世界で複合的危機が起こる中、改めて協力隊事業の価値や必要性が高まってきているのではないか、と話しました。
 また、自身のインドネシアでの青年海外協力隊としての活動経験にも触れ、多くの協力隊経験者が言うように、失敗や苦労の中で多くの学びがあり、教えるよりも教えられることの方が多く、現地の人々と信頼関係を築きながら活動できたことが非常に豊かな経験になったそうです。

基調講演を行う橘事務局長

派遣中のインドネシアでの写真

 協力隊はこれまで、途上国で井戸を掘ったり、高い技術や経験がある特別な人しか参加ができない、というイメージを持たれることが多々ありました。しかし、好奇心や他の人のために役立ちたいという思いがあれば、誰もが参加可能であり、特定の資格や技術を持たない人でも活動可能な現地からの要請も多くあると話されました。社会課題の解決やSDGsへの貢献等、協力隊は自分の可能性を広げる機会にもなっています。帰国後に活躍をされている隊員経験者の元へ足を運び視察された様子も紹介し、海外で経験してきたことを活かしながら、日本も元気にしていく存在になれれば、と話を結ばれました。

パネルディスカッション:「協力隊の価値って何?」

 様々なバックグラウンドをもつの4名の協力隊経験者と、当時の民間連携ボランティア制度(現JICA海外協力隊(民間連携))を活用して社員を送り出した企業担当者の方を迎え、協力隊の価値についてパネルディスカッションを行いました。「価値」と聞くと少し難しい印象がありますが、「協力隊経験を通して変化したこと」という点に注目をしながら、それぞれの立場からお話をいただきました。

山本岳人さん(協力隊OB/ベトナム・番組制作)

 首都ハノイにあるテレビ局で日本語番組の制作を行っていた山本さん。ベトナムで6000万人以上が利用しているTikTokで、自身が広告塔になって発信する、という広報活動にも力を入れていました。日本は好きだけど日本人のことはよく知らないという層に受け入れられ、TikTokのフォロワーは50万人を突破。一Tik Tokerとしての取り組みを、配属先に還元することで協力隊としての活動の価値を見出しました。また、ベトナムで活動中の協力隊員の紹介を発信することで、ベトナムでがんばる日本人がいることを、現地の人々に知ってもらう機会にもなりました。 
 JICA海外協力隊として2年間ベトナムで活動することで、その後の家族の人生を必ずプラスにする、家族みんなの人生を必ず幸せにする、と出発前に家族へプレゼンをされたそう。現在は家庭を大切にしつつ、ベトナムと石川、そして日本をつなぐ架け橋になるべく、所属先の石川テレビ放送にて奮闘されています。

ベトナムへ派遣された山本さん。

マラウイへ派遣された河上さん。

河上彩さん(協力隊OB/マラウイ・理学療法士)

 河上さんは、マラウイ北部地域最大の公立病院にて、治療や運営管理の活動を行ってきました。配属先には知識の豊富な理学療法士の同僚が働いており、赴任当初は生活に慣れるのも精一杯で、中々自分の価値を見いだすことができなかったと振り返ります。その中で、手足の麻痺がある患者さんを担当した際、日本での経験を活かして装具を活用していくうちに、「どうやって使っているの?」と同僚から声を掛けられるように。知識があっても、経験していないと分からないことがあることを知り、お互いの強みを考えるようになったそうです。強み、弱みを補い合うようになると現地に溶け込んでいくこともできました。現地の人を通じて、自分の価値に気づかせてもらった、と語ります。
 現在は医療職の傍ら、マラウイ雑貨やコーヒーの販売もされています。マラウイにはかわいいもの、良いものがたくさんあるのに、彼らはその価値に気づいていません。マラウイで自分の価値に気づかせてもらったように、今度はマラウイの人たちに、あなたには価値がある存在だよ、ということを伝えて行きたいと話しました。

井上純子さん(協力隊OB/パラグアイ・日本語教育)

 ご自身のキャリアのために海外で日本語を教えたい、そして帰国後は留学をしたい、という目標を持って協力隊に参加をした井上さん。日系日本語学校でパラグアイの子供たちに日本語の他、美術や音楽も教えていました。ある日、絵を教えようとしましたが、学校では画用紙が買えない、マジックもない、鉛筆もない状況でした。色々考え、スーパーで段ボールを山ほどもらい、その段ボールに水彩絵の具を手で伸ばして描いてみたところ、心がキュンと動いたそうです。物があること、水道をひねれば水が出ること、電気のスイッチを押したら電気が点くこと。これらの日本では当たり前のことが、国によっては当たり前ではなく、勉強ができる環境があることも当たり前ではないと、初めて気づいたと話されます。
 これまで、日本の目線や物差しで物事を見ていたことに気づき、多様性や寛容になるということも非常に大切だと学んだ井上さん。多くの方に日本だけでなく、世界の物差しで世界を見て欲しい、と語ります。そしてその思いが、現在の留学仲介業をするきっかけにもなりました。お互いの文化を知って、相手の懐に入る、そんな世界を幅広く見られる人が一人でも増えるように、富山県から留学に出る人の背中を押したい、と話されました。

パラグアイへ派遣された井上さん。

 グアテマラへ派遣された小島さん。

小島路生さん(協力隊OB/グアテマラ・プログラムオフィサー)

 将来的に国際協力をやりたいと思って協力隊に参加をした小島さん。活動当初を振り返り、やりたいことの我が出ていた、と話されます。変わるきっかけになったのは、村の小学校へ行ったときのこと。その学校には、子供たちの親が材料を持ち寄って作りあげた手作りの教室があり、熱意のある先生と、学びたい意欲のある子供たちが笑顔で勉強をしていました。子供たちはこの学校がないと数時間かけて別の学校に通う必要があり、それでは学べないことを知っていました。それまで国際協力は何かをやってあげるものと思っていたそうですが、お互いが寄り添うような立場で行うものだと気づいたそうです。
 また、奥様も協力隊経験者で、帰国から17年後に家族で任地のスリランカを再訪された際のエピソードにも触れ、協力隊の活動の中で始めた女性銀行がいまだに稼働しいていたことに、非常に感動したと話されました。そして現在、ご夫婦で設立した国際協力NGOのスリランカオフィスを、当時のカウンターパートがチーフコーディネーターとして20年ぶりにチームを組んでいること、信頼できる人間関係を作り続けられたことに、国際協力の希望を見たと話されました。

馬路克哉さん(会宝産業株式会社専務取締役/社員を協力隊員として派遣・経験者を雇用)

 輸出がメインの会宝産業株式会社。アフリカでの海外展開を考え検討していた際に、民間連携ボランティア(現連携派遣)制度を知り、自社社員をガーナへ派遣しました。何も分からない初めての国に社員を派遣するにあたり、現地にJICAの在外事務所があることが大きな安心感になったと振り返ります。
 現地の人たちと一緒に2年間活動した経験は非常に強く、帰国後の仕事でも活かされていると話します。現在、買い付けのオークション会場を任せている社員は、協力隊での活動中に様々な人々との関りがあったからこそ、海外の取引先との対応も柔軟にできているそう。今後はビジネス化実証事業をケニアで展開する予定で、現地担当を任せるとのことでした。毎日水も電気もないところで働いた、そういう経験を持っている人たちが、海外の人たちと働くと、跳ね返されても落ち込まない、うまくいっても直ぐに次はどうしようと考えられるので、協力隊経験者は働いてもらう価値があるとお話されます。
 他にもボリビアに自動車整備で派遣されていた隊員経験者が採用され働いています。自動車リサイクルを行うことも1つの命題としている会宝産業。民間企業なので、収益を上げながら社会課題の解決をいかに行っていくかが課題とお話されました。

会宝産業専務の馬路さん。

モデレーター、コメンテーターのお二人。

 この他、モデレーターの前口憲幸氏(北陸中日新聞七尾支局長)からは、メディアは海外協力隊をどう見ているかについてお話をいただき、北陸地域でもメディアは国際協力事業に注目をし、JICA事業、海外協力隊について様々な発信している現状のお話もいただきました。最後に、橘事務局長が全体総括をし閉会となりました。

北陸三県の協力隊経験者とのつながり

 今回のイベントには、北陸三県に在住している多くの協力隊経験者の皆さんにもご参加をいただき、閉会後には橘事務局長も含めてOB懇談会を行いました。それぞれの活動を改めて振り返る機会になったと共に、他県の経験者との関係づくりができたこと等、様々な声をいただき、非常に有意義な時間となりました。普段は各県OB会等でそれぞれ活動をされている皆さんですが、他県OB会の方たちとつながりができたことによって、様々な意見交換や新しいアイディアも生まれました。
 今後はJICA北陸センターも経験者の皆さんとより深い関りを持ちながら、帰国後の社会還元も含め、一緒に進めて行ければと考えています。 

北陸三県の経験者のみなさんと一緒に。

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