【福井県】5年後の将来について考える、「外国人介護人材のキャリアアップセミナー」を開催しました!
2025.04.07
JICA北陸では、ふくい外国人介護職員支援センターとの共催で2回目となる「外国人介護人材キャリアアップセミナー」を開催しました。セミナーは、昨年度と同様に公益社団法人国際厚生事業団(以下、「JICWELS」)の武井氏と佐藤氏を講師としてお招きし、福井県内で活躍する介護分野技能実習生向けの対面型ワークショップと受け入れ事業所向けのオンラインセミナーの2本立てで行いました。
また、今年度のセミナーでは同世代との交流やストレスマネジメントについて、先輩実習生との意見交換会など、新たなプログラムを盛り込んだ内容となりました。今回は、昨年度のセミナーからアップデートした内容を中心に報告します!
※昨年度のセミナーの様子(実施の背景や目的等)はこちらからご覧ください。
【福井県】地域社会を支える外国人介護人材の“キャリア”について考える!
今回セミナーに参加していただいた、タイ人技能実習生の皆さん
今回のセミナーでは、実習生同士や大学生との交流を目的に、ランチタイム交流会を開催しました。
JICA北陸でインターンを実施していた大学生4名と、福井県内の外国人材受入れについて研究している福井大学の学生1名にも参加いただきました。最初はお互いに緊張した面持ちでしたが、すぐに打ち解けた様子で、「好きなドラマは?」「普段どこで遊んでいるの?」「あそこのレストランがおすすめだよ!」と同世代ならではの会話で終始盛り上がっていました。また、海外への留学経験のあるインターン生とは、異なる文化や言語の中で生活することの難しさや苦労について、お互い共感しながら話し合う様子も伺えました。
実習生からは「普段関わることのない大学生と友達になることができてとても嬉しかった」といったコメントがあり、普段、比較的年齢層が高い方々と接することが多い実習生にとって、同世代との交流の時間は貴重な機会となったようでした。外国人材の方々の仕事面でのキャリアを考えることも重要ですが、日本国内での生活の満足度の向上に向けて、このような交流の機会を設けることの大切さを改めて感じました。
ランチタイム交流会の様子
タイや日本の文化、福井での生活やおすすめのドラマなど、様々なトピックで盛り上がっていました!
実習生の中には、高校を卒業して自立して一人で生活するのは日本が初めてという方もいます。異なる文化慣習やコミュニケーションの面から、慣れない環境に苦労する実習生が多いという声もありました。また、初めての仕事が介護ということもあり、事業所や利用者とのコミュニケーションや人間関係に悩む実習生も少なくありません。
そのような背景もあり、今回は日頃のストレスへの対処法についても紹介しました。
まずは、ストレスを感じる瞬間や体の変化について日頃の実習を基に考えてもらった後、セルフケアの方法についてJICWELSの武井氏から説明がありました。
ストレスを受けた心の状態を風船で例えて、風船を指で押す力を「ストレスの原因となる出来事」とし、それを跳ね返そうとする力を「ストレスへの耐性」として説明し、ストレスの原因となる出来事が多くなり、負荷がかかりすぎると風船が割れてしまうのと同じで、私たちの心も同様に悲鳴を上げてしまうことをわかりやすく述べられました。また、適度なストレスは日頃の生活においても必要であることについても触れ、ストレス=悪いものという考えを持つのではなく、上手に付き合っていくことが大切だと言います。
自信の将来ビジョンを描きながら、日々の実習に取り組むことももちろん大事ですが、まずは自分の心の状態を健全に保つことが先決です。普段あまり意識することがなかったストレスとの付き合い方について、頷きながら聞き入る実習生の様子が伺え、キャリアプランの大切さ以外にも学びがあったようです。
ストレスマネジメントについて風船を用いながら説明するJICWELSの武井氏
セミナー中に一生懸命メモを取る実習生。タイ語ではなく、日本語でメモを取っています!
セミナーの最後には、福井市内の介護施設で活躍しているタイ出身のビューティーさんから、セミナー後の変化や今後のキャリアビジョンについての紹介がありました。昨年度のセミナーを受講したビューティーさんは、セミナー後に実習生として残されている時間が少ないことに気づき、自分が目指したい道が明確になったことや、そこから特定技能への切り替えに向けて受け入れ事業所とともに準備してきたことについて話しました。また、現段階での目標として介護福祉士の資格取得を挙げ、引き続き介護の仕事に携わっていきたいという思いから、ビューティーさんは特定技能に切り替えた後も技能実習生として勤務した職場で引き続き働く予定です。その理由について「職場の人たちがすごく優しくて、いつも話を聞いてくれるので、ずっとここで働きたい」と笑顔を交えながら話すビューティーさんの姿から、受入れ事業所の日頃の支援体制が伝わりました。
質疑応答では「なぜ日本に残ろうと思ったのか?」「資格取得に向けて、どのように勉強時間を確保すれば良いか?」など、ビューティーさんの発表から具体的に自分のキャリアビジョンをイメージした質問が参加者から寄せられ、セミナー終了後も、福井での生活や特定技能制度への切り替え等についての質問が止まらず、先輩の実体験から学ぼうとする姿勢が見られました。
キャリアアップセミナーへの参加後の変化やキャリアプランについて紹介するビューティーさん
ビューティーさんに今後のキャリアについて質問する参加者
今回のセミナーでは、現場の声を伺い、自分に足りないものを考えることを目標に参加しました。私は、実習生と同じ立場でセミナーを受講しました。人生設計について考え、談笑し、好きなドラマの話題で盛り上がるなど、新しい友人ができた感覚でした。しかし、セミナー内で今の悩みを共有したとき、彼女たちは介護の大変さや異国の地で生きる難しさも語ってくれました。彼女たちはまだ20代です。私より若い方もいました。私は彼女たちの歳の時、何をして、何に悩んでいたでしょうか。私に足りなかったもの、それは想像力でした。
今回の参加をきっかけに、彼女たちが働く施設の利用者になる自分を初めて想像し、彼女たちがいなければ生きていけないと気づきました。彼女たちにとって、日本で働けることはチャンスなのか環境が与えた義務なのか。少なくとも私たちが彼女たちを支えているのではなく、支えられているのだと確信しました。
よく若者は「今しかない。」と背中を押されますが、私たちは彼女たちの「今」に支えられています。では、その未来を支えることは、とても自然なことではないでしょうか。外国人材のキャリアを支えること、それは彼女たちから受けとった「今」に恩返しをすることだと思います。
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