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タイと日本 共に考える高齢化社会の在り方

2025.12.15

タイはアジアの中でも急速に高齢化が進んでいると言われています。2050 年には高齢者人口は 2,000 万人に増加し、人口の 約35%を占めると予想されており、高齢化社会のニーズに応える包括的な政策やインフラ整備、将来の介護需要増に備えた人材育成などが課題となっています。
そんなタイの高齢者福祉行政に携わる8名の行政官が、日本の現状や取り組みについて理解を深め、タイの高齢者福祉行政に生かそうと福井県での研修に参加しました。福井大学医学部看護学科が研修の実施機関となり、日本の介護保険や地域包括ケアシステムなど、地域の特徴的な取り組みを紹介しました。

地方の現状と取り組みに学ぶ

視察に訪れた坂井市では、地域住民のフレイル予防を目的とした測定会に参加しました。フレイルとは、健康と要介護の中間で、加齢とともに心と身体の活力、例えば筋力や認知機能、社会とのつながりなどが低下した状態を指す言葉です。
坂井市では、フレイル予防の大切さを啓発する活動や、フレイルチェックなどのフレイル予防活動を行うボランティア、「フレイルサポーター」を養成しており、この測定会でもフレイルサポーターが活躍していました。

研修員自身も参加者に交じり、筋力や口腔機能、社会性などについて、いろいろな項目のアンケートに答えたり、測定を体験したりしました。研修員は20代から30代の若い世代が多かったのですが、予想外に低い測定値が出る項目もあり、参加者同様に一喜一憂する様子が見られました。測定が終わった後には、振り返りの様子も見学しました。

フレイルサポーターの皆さんは自身も高齢者であるにも関わらず、熱心に参加者をサポートし、測定結果を丁寧に説明したり、さまざまなアドバイスを行ったりと大変活発に活動されていました。その活動こそがフレイル予防にもなっていることに研修員も深く感銘を受けていました。

別の日に訪問した髙浜町は、福井県の南端に位置する自治体です。2014年に日本創成会議が発表した「消滅可能性自治体」のリストに高浜町も含まれていました。
様々な研究から、社会との結びつき、人との交流は、運動や喫煙・飲酒などの影響よりも人の寿命に大きな影響を与えることが分かっているそうです。社会とのつながりがしっかりと持てている、住民同士のつながりが強いということは、健康にもよいということ。住民同士のつながりが強いまちづくりが、ひいては医療の問題の解決にもつながると考え、地域住民の交流や社会参加を促す目的で企画された交流の場づくりやその他のイベントについて、その苦労や実践する上で大切にしていることなどを伺いました。

高齢者が生き生きと暮らす社会へ

福井県の高齢化率は約31%、全国的に見ても高い数値で、2050年には40%を超えると予想されています。
一方で、要介護認定率は全国平均を下回っているそうで、高齢者の就業率も30%を超えています。福井県では、健康な高齢者が多く、仕事を続けたり、地域活動に関わったり、自立した社会生活を送っている人が多いと言われています。
研修員も、日本での滞在中にあちこちで目にした高齢者の働く姿に関心を寄せていました。

タイでは、都市化が進み、社会から孤立する高齢者の増加が懸念されているそうです。また独居の高齢者も増加傾向にあるといいます。高齢化そのものをくい止めることは難しいですが、高齢者が健康で、長く社会とつながることができるまちづくりの大切さを改めて考える機会になったと話す研修員もいました。
超高齢化社会の日本と、後を追うように高齢化が進むタイ。お互いに学ぶことは多く、高齢者が生き生きと暮らす社会の実現のために、様々な情報交換ができた研修でした。

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