JICAインターン、JICA長期研修員に会う ―「日本の教育モデルをマラウイへ!」
2026.03.23
JICA北陸でインターンシップを行っている私たち3名は、今回、JICA長期研修員(留学生)であるMr. CHIUMIA Kelvin Wilson(以下、ケルビンさん)にお話を伺いました。
JICAは、開発途上国の人材育成を目的に、多くの長期研修員を日本へ受け入れています。ケルビンさんは母国マラウイの大学で教育学を専攻し、専門性をさらに高めるためにJICA長期研修員として来日し、現在福井大学連合教職大学院で学びを深めています。一人の長期研修員としての挑戦をたどる中で、「国際協力とは何か」「教育とは何か」を改めて考える貴重な時間となりました。本記事では、そのインタビュー内容をお届けします。
ケルビンさんがJICA長期研修員を選んだ背景には、特別なご縁がありました。それは、彼の所属先であるナリクレ教員養成大学の設立にJICAが関わっていること(※1)、さらに福井大学とナリクレ教員養成大学が、レッスンスタディ・プログラムや草の根技術協力事業を通じて協力関係にあり、現在もパートナーシップを継続していること(※2)です。
この二つのつながりが、彼にとってJICA長期研修員に応募する大きな動機となりました。現在は、日本の教育制度や学校現場での教育実践を深く学ぶため、福井大学連合教職大学院に在籍しています。日本の教育を自国に還元したいという強い思いが、日々の学びを支えています。
日本とマラウイの違いについて尋ねると、ケルビンさんは、「マラウイの人たちは、とても前向きで、力強く生きています」と、母国マラウイの人々が持つ明るさやエネルギーあふれる雰囲気について話してくれました。
またマラウイは、10~20の民族と言語が共存する国であるため、異なる文化や価値観を持つ人々が関わり合いながら暮らしているそうです。そのため、「相手の立場を思いやり、ちがいを尊重する姿勢が社会の中で自然と育まれています」という言葉が印象的でした。
一方で、母国が抱える課題についても語ってくれました。「道端にごみが捨てられていることがあり、本来の美しい街並みが損なわれていることもあります」、「子どもの頃に見ていた豊かな森林が、開発によって住宅地へと変わってしまった場所もあります」。こうした現状を見つめる彼の眼差しからは、マラウイという国を自分の手で良くしたいという責任感が伝わってきました。教育に携わり、マラウイの教育の質を向上させようとする努力の背景には、こうした現状を変えたいという思いがあるのだと気づかされました。
彼が日本で学び、自国で実践したいと考えていることは、大きく二つあります。一つ目は、「授業研究と協働的な省察の力」です。福井大学では、理論と実践が継続的に結びつくよう、附属義務教育学校と密に連携しています。これにより、教師、指導主事、教育実習生が共に授業を参観し、振り返り、授業の改善を重ねる仕組みが整っています。彼はこのモデルに着想を得て、ナリクレ教員養成大学と同学附属中学校との連携を強化し、教師同士が協働的に学び合える環境づくりに貢献したいと語ってくれました。
二つ目は、生徒中心の探究型学習です。日本の教室では、生徒が主体的に考え、問いを立て、意見交換しながら学習の当事者となる姿が見られます。彼はその姿に強い感銘を受けました。たとえ資源が限られていても、グループ活動やディスカッション、プロジェクト型学習を取り入れることで、生徒を「受け身の聞き手」から「主体的な学習者」へと変えていくことは可能だと彼は考えています。
アルベルト・アインシュタインは次のように述べています。「教育とは、事実を学ぶことではなく、考える力を養うことである」。高度な設備がなくても、質の高い教育は実現可能です。日本で学んだことを生かしながらマラウイの課題に向き合い、包摂的で公正な質の高い教育を保障し、すべての人に生涯学習の機会を提供すること――すなわち、SDGs目標4の実現が彼の目標です。
下の図は、ケルビンさんが来日前に作成した自身の将来に向けた目標とその過程ですが、彼の努力と、福井大学、ナリクレ教員養成大学の皆さんのサポートによって、日本での学びが、近い将来、マラウイの教室に変化をもたらす日を期待したいと思います。
ケルビンさんが来日前に作成した自身の将来に向けた目標とその過程
<参考>
※1 リロングウェ中等教員養成校建設計画
※2 福井大学とナリクレ教員養成大学の連携