≪氏名≫
外山 岩郎 (とやま・いわろう)
≪派遣年度≫
2016年度
≪派遣国≫
エクアドル
≪職種≫
環境教育
≪略歴≫
東京都出身。沖縄国際大学への進学を機に沖縄へ移住し、宜野湾市長田地区の青年会長を務める。その後、JICA海外協力隊では、市役所環境管理課に配属。帰国後は東京で日本語教師、メキシコで通訳、タイで日本語とエイサーの指導を経験。現在は沖縄県庁の地域づくり応援員として勤務。その傍ら、タイの教え子のエイサー活動支援や、自治会の活動に参加している。
地域での学びを海外で実践
大学進学を機に、沖縄県宜野湾市長田へ移り住んだ外山さん。地域の人々と関わりたいという思いから公民館に通うようになり、そこでエイサーと出会います。これをきっかけに青年会に参加し、やがて青年会長を務めるまでになりました。当時、会員が減少傾向にあったため、「地域で学んだことは海外でも通用することを自ら体現することで、青年会に関心を持つ若者を増やしたい」とJICA海外協力隊への参加を志願します。
写真右の同僚とコンポストの視察
派遣先のエクアドルでは、商業都市グアヤキルに近いトロンカル市役所の環境管理課に配属され、学校での環境教育や地域住人へのコンポスト(堆肥)作りの指導にあたりました。特に意識していたのは「現地の人と同じ目線で仕事をする」ことでした。ある時、現地スタッフとゴミ拾いをしていると、清掃員から「君のような大卒者が手を汚して作業していることに感激した」と言われました。しかし、翌日には市長から「ゴミ拾いはしないように」との通達が。それは、トラックが通る路上でゴミを扱う危険な作業への配慮からくる言葉でしたが、現地の異なる社会階層の間でどのように振舞ったら良いか戸惑いました。悩んだ結果、業務用三輪車で掃き掃除をする活動に切り替えることで双方の理解を得られるようになりました。
他の人と同じ作業をすることやコミュニケーションをとって物事を進めていくことの大切さなど、「青年会とエクアドルでやっていることはあまり変わらない」と実感しました。
海外での経験を経て初心を再確認
2年間の協力隊活動で取り組んだ環境教育は専門分野ではなかったため、活動に深みを出せなかったという心残りがありました。大学で学んだ文化人類学や青年会でのエイサーの経験を活かしたいと考え、再びJICA海外協力隊へ応募し合格。アルゼンチンの日系社会でエイサーや三線を指導する予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で派遣は中止となります。その後、メキシコで通訳として働くも、同業者のレベルの高さに自身の通訳能力の限界を感じて挫折。「公民館で学んだことを生かしたい」という初心に立ち返ることが大切だと気付きました。
その後、国際交流基金の日本語パートナーズとしてタイの山岳地帯にある公立高校へ赴任。日本語を教える傍ら、エイサーや三線を現地の子どもたちに指導し、イベント出演も行いました。タイにいる間も長田青年会から太鼓を送ってもらうなど、沖縄からの支援が大きな励みになっていました。沖縄への恩を感じ、30代後半を迎えたことから「青年と同じ目線であるうちに長田に戻り、還元したい」と沖縄へのUターンを決意します。
タイで生徒と一緒に初めてのエイサー演舞
移住フェアで地域おこし協力隊の説明
青年会から海外、そして再び沖縄の地域へ
沖縄に戻った外山さんは、2025年4月から県庁で地域づくり応援員として働き始めました。県内の過疎地域や周辺離島で活動する約70人の地域おこし協力隊の研修や移住の補助、情報発信などが主な仕事です。これまでは青年会やJICA海外協力隊を通して自身が地域で活動する側でしたが、今度は県外から沖縄に移り住んで活動する人々をサポートする立場となりました。
仕事の傍ら、長田地域の自主防災組織の活動やエイサーの指導など、公民館での自治会活動にも変わらず参加しています。「エクアドルでやっていたことは、近所の人が困っていることを手伝うことでした。『隣の人を気遣う』ということは公民館と同じです。その原点となる経験をさせてくれたのが長田地域でした」と語ります。公民館では、根回しや対話の方法、行事の段取りなどを学びました。作業を一人でこなすことは簡単ですが、先輩からは「後輩につなげる方法を考えなさい」と教えられ、人と協働することを学びました。「私にとって公民館は社会教育の場でした。 海外での経験を経て、自分の時間を使って地域のことができることの尊さをより感じるようになりました」。
タイの教え子たちは、今も自分たちでエイサーの練習を続けています。「タイの学生に教えたエイサーは、もともと青年会で教えてもらったものです。それが現地でも根付いてくれたらという希望を持っています」。外山さんは、沖縄でも海外でも、地域で近隣の人々と共に活動するという姿勢を持ち続けています。地域で学べることは海外でも通用する。そのことを伝えることで、地域の活動に関心を持つ若者が増えてくれることを願っています。
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