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「沖縄の畑灌漑の経験がタンザニアの灌漑開発に貢献していると思います」

2024.10.29

2024年10月、タンザニアでJICA灌漑開発アドバイザーとして活躍する平良和史さんが、一時帰国でJICA沖縄センターを訪問された。
「タンザニア政府は、国家戦略として稲作量を2008年から2018年の10年間で倍増させる計画を立てました。2018年からもその計画の第二期を実施しており、2008年当時は国内で必要なコメ需要量の自給を目指していたところ、現在では周辺国に輸出もできるようになりました。また。灌漑面積も31万ha(2008年)から73万ha(2022年)へと大きく飛躍しています」
そう語る平良さんは、この国家戦略のもとで灌漑開発を指導するために、タンザニア国家灌漑庁にJICA専門家として2023年10月より派遣されている。
「今派遣されている首都ドドマの発展ぶりに驚きました。実は2015年~2018年にもタンザニアに派遣されていたのですが、当時ドドマは何もない地方だったのが、今では大きなショッピングモールが出来て活気があります。高地にあるので気温も涼しく、治安も比較的良いため大変過ごしやすいです」

灌漑の仕事は、農家による水管理組合と行政の緊密な連携による計画、実施が不可欠だ。例えば、農業用水の配分や灌漑施設の維持管理は水管理組合自らが計画を作って実施するものだが、未経験の組合が配分計画などを作成することは難しい。灌漑庁の県灌漑事務所職員が組合を指導するのだが、県職員を州灌漑事務所職員が、そして州職員を灌漑庁が指導する仕組み作りにも平良さんは関わっている。
日本の技術協力は魚を与えるのではなく魚釣りの方法を教える、と言われるが、まさにその通りだ。

「タンザニアの若手職員は学ぶ意欲があり積極的で、一緒に仕事をしていて面白いんです。指導した際の反応もいい。日本の農業用水管理の経験、技術をどんどん吸収してほしいです」また、個人的な意見と前置きしつつも「タンザニアなど開発途上国の灌漑整備には、沖縄の経験が活かせると思います。沖縄には水田が少なく、かつて天水農業をしていた畑を主な対象に、本土復帰後に灌漑農業が本格的に取り入れられました。まだ50年程度の比較的浅い歴史です。畑の灌漑管理のために新たに土地改良区(水管理組合)を設立した経験や、農家(水管理組合)と行政が連携し役割分担を図ってきた経験が、成長著しい今のタンザニアに適用できると思います」と語る。

「日本の若者にも外国へ出てもらい、積極性を身に着けてもらいたいですね。現場を見るのはとても勉強になります」と、還暦を超えた今でも学ぶ謙虚な姿勢を崩さない。そして「タンザニアではヤギが食べられます。ヤギ汁があっさりしていて、美味しいんです。沖縄では苦手だったんですけどね(笑)」と、外国ならではの生活の楽しみも教えてくれた。

平良 和史(たいら・かずふみ)さん
1960(昭和35)年生まれ、沖縄県嘉手納町 出身
現職:タンザニア国家灌漑庁 灌漑開発アドバイザー(JICA専門家)
現職の業務概要:JICAの行う技術協力の一環で、当国で重要性の増している灌漑開発へのアドバイスと灌漑行政を遂行する国家灌漑庁の人材育成を担う。
略歴:86年3月、琉球大卒。同年4月、沖縄総合事務局入局。農林水産部土地改良課(現・農村振興課)を皮切りに管内の事業所、及び海外3カ国を含む農林水産省農村振興局等で勤務。20年3月、宮古伊良部農業水利事業所長を最後に定年退職。退職後は東ティモール国でJICA技術協力プロジェクトに従事した後、24年10月より現職。

平良専門家

水管理組織役員との打合せ

農家への研修状況

灌漑職員への技術研修

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