【JICA海外協力隊事業】世界で培った経験を日本へ!地域で発揮される協力隊の力/2025年秋募集実施中
2025.09.29
今年2025年に発足60周年を迎えた『JICA海外協力隊』。これまでのべ57,000人以上の隊員が世界へ飛び出し、途上国の課題解決と発展に貢献してきました。しかし、その活躍は海外にとどまりません。帰国後の進路は実にさまざま。国際機関やNGO、JICAなどに所属し国際協力の分野で活躍を続ける人がいる一方、日本社会の未来のために協力隊で培った力を発揮する人も数多くいます。
地域社会に関わる海外協力隊経験者(以下「帰国隊員」)は多くいましたが、特に東北では、東日本大震災後、復興のさまざまな場面に帰国隊員が携わってきました。そこで築かれた地域との信頼関係をもとに、現在も多くの帰国隊員が各地のまちづくりや地域活性に取り組んでいます。「地域に入り、地元の方と一緒に課題解決に取り組む」という点で、海外協力隊と地域活性化には高い親和性があります。そして、各県の帰国隊員で組織する団体は、国際理解や多文化共生社会に関するセミナーを開催するなど、誰もが住みやすい社会の実現にその知見や経験を役立てています。
さらに近年は、地域おこし協力隊(*1)や起業の道を選ぶ帰国隊員も増えてきました。途上国での活動を通して、日本社会で失われつつある地域との結びつきの重要性を発見する隊員は少なくありません。そうした気づきから、社会課題の解決や、土地の風土や伝統文化の継承を軸にすえて事業を立ち上げたケースがいくつもあります。山形の庄内柿を材料としたエナジーバーの開発・販売、青森の魅力発信や交流人口創出に取り組む地域コーディネート事業などはその一例です。
地元山形で、伝統食材の庄内柿を活用した事業を展開する元協力隊員
どの隊員にも通じるのは「世界も日本も豊かにする」という意識があること。そして、その志を具体的な活動へとつなげているのが、協力隊活動で培われる多様な資質や能力です。JICA東北でボランティア事業を担当する菊池真美子職員は次のように話します。
「帰国隊員と協働する自治体の方からよく聞かれるのは、隊員の『主体性』と『へこたれない力』を高く評価する声です。リソースが限られた途上国で、自主的に動き、必要なものを自ら見つけ、周囲を巻き込んでいく。壁に直面しても前向きに取り組み、失敗を次につなげていく。そんな経験が頼もしい力を育むのだと思います。また、マイノリティーとして他国の社会に飛び込む経験は、これからの日本で一層必要とされる『相互理解』や『異文化理解』の力も育てます。JICA海外協力隊では、果敢に世界へ挑戦した人材ならではの力を日本社会にも還元し、地域の皆さんと深い関係性を結んできました」
協力隊の活動はさまざまな力を育む(『クロスロード』2025年4月号より)
2025年9月までJICA東北で協力隊事業の広報に従事していた阿部璃音さんも、協力隊を通して大きく成長した一人です。福島市出身の阿部さんは、小学生の頃、福島県二本松市にある海外協力隊訓練所のオープンデーを機に協力隊に興味を持ったそう。大学でスポーツを通した国際協力を専攻したのち、2023年2月から2025年2月まで体育隊員としてエジプトで活動しました。
現地で身につけた力として、まず挙げるのは「生きる力」。「断水や停電は当たり前で、真冬に長期間シャワーが使えなくなったことも。そうした状況に備える力も身につきましたが、なにより『まあ仕方ないか』と許容できるようになったことが一番の成長ですね」と笑います。さらに活動面では、課題を打破する「突破力」が身についたと言います。「大事なのは、いかに周りを巻き込めるか。協力隊生活を通して一人では何もできないことも痛感し、周囲の協力を仰いだり、目標を共有したりとみんなで課題に向かう体制を大事にするようになりました」と阿部さんは言います。
活動中には、次なる目標も見つけました。エジプトをはじめとするアラブ諸国の暮らしに触れ、平和構築や難民支援への関心を深めたことから、イギリスの大学院への進学を決意。2025年9月の渡英を前に「日本ではネガティブなイメージを持たれることもあるアラブ諸国ですが、私が現地で出会ったのは、他者への思いやりにあふれた温かな人たちでした。大学院で学びを深めた暁には、自分の経験を日本の異文化理解につなげるような活動もできたらと思っています」と、新たな挑戦への意欲を語ってくれました。
阿部さんのエジプトでの活動の様子。日本式教育の実践に取り組む現地の小学校教員をサポートした
エジプトから帰国した阿部さんが、渡英までの期間をJICA東北での勤務に充てることにしたのは、協力隊の派遣前研修・グローカルプログラム(以下、GP)の参加がきっかけでした。「もともと郷土愛はある方だと思いますが、岩手県釜石市で過ごした約2カ月半は、さらに東北を好きになることができた期間だったように感じます。地元福島をはじめ、各県に多彩な魅力がある東北の豊かさを知り、また東北で働きたいと思ったのです」
実は、GP時代は菊池職員に活動をサポートしてもらっていたという阿部さん。「今こうして一緒に働くようになり、人と人とのつながりも協力隊の面白さだと感じます」と話します。菊池職員も「GPの頃と比べ、今の阿部さんは周囲を巻き込む力や実行力が段違い」と、協力隊での成長に感慨深げ。さらに「協力隊は全く異なるバックグラウンドを持つ人たちが集まるコミュニティーでもあり、困難にぶつかったときには、その人脈が大きな力になります。これからますます成長していく阿部さんと、またいつか一緒に活動できることを楽しみにしています」と期待を寄せます。
地域の子どもたちと運動を楽しむプログラムを行うGP時代の阿部さん
現在JICA海外協力隊は、2025年秋募集を実施中です。応募期間は10月14日(火)まで。海外協力隊には、専門知識やスキルを発揮できる職種はもちろん、学歴や実務経験を問わずにチャレンジできる職種もあり、これまでの経験を多様な形で生かすことができます。JICA東北や各県のデスクでは、募集期間に限らず、いつでも個別相談を受け付けています。知りたいことや不安なことなど、お気軽にご相談ください。
最後に、菊池職員と阿部さんからのメッセージを紹介します。
菊池職員「海外協力隊の2年間は、日本社会や世界の国々に貢献できる力を育みます。帰国後は国内外で活躍の場が広がりますので、ぜひご応募ください」
阿部さん「海外協力隊は人生のターニングポイントになりました。それは今後の人生でも変わらないと胸を張って言えます。海外への興味や憧れがあるならぜひ挑戦して、皆さんの経験を世界に生かしてほしいと思います」
・JICA海外協力隊HP
https://www.jica.go.jp/volunteer/
・『協力隊で身に付く19の力』クロスロード2025年4月号
https://www.jica.go.jp/volunteer/outline/publication/pamphlet/crossroad/202504/pdf/crossroads_2025_04.pdf
・JICA東北 海外協力隊個別相談サロン申込みフォーム
https://forms.office.com/pages/responsepage.aspx?id=Qvyp64hVMU2KTm4b950xwK7BcSDBsbtKmvmjeVz4dnNURVpYRzlZOTNNTzBIMkdaTlYzQUJNMVlJViQlQCN0PWcu
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