\栄養(8/4)の日まであと1日/ ~モンゴル校長先生らが見た、日本の学校給食~


2023.08.03
新たに学校給食制度を導入し、全ての小学校で栄養バランスの整った「給食」の提供を目指すモンゴル。
この度、モンゴル教育科学省、県・市教育局、大学関係者、小学校長や栄養士ら計12名が来日し、学校給食マネジメントについて日本で学びを深めました。今回はインタビューを通じ、モンゴル研修員らの生の声をお届けします!
“子どもの未来を育む栄養”
━モンゴルの校長先生らは、日本、そして日本の学校給食から何を学び取ったのでしょうか…?
Q1.日本の第一印象、そして研修への抱負をお聞かせ下さい。
A1. 教育科学省ツェンデーさん
「今回初来日ですが、事前に聞いていた通り、日本の人々がそれぞれの持ち場できちんと計画し、実行されている様子に、大変感銘を受けました。例えば人々はむやみにゴミを捨てることはしませんし、街にはゴミや雨水が溜まっていることもありません。清掃や排水整備がきちんとなされているから、清潔な街が維持されているのですね。
また、電車のホームでは、人々が規律正しく整列し、また他者への思いやりを持って行動しています。モンゴルは広大な土地で伸び伸び自由に生活していますから、その対比に驚いています。「自身の目」で日本そして日本人の実際を見られることは、とても印象深いです。貴重な機会に大変感謝しています。
研修への力強い意気込みを語ってくれた、ツェンデーさん
モンゴルでは2019年に学校給食法が制定され、2020年から学校給食の提供を開始しました。日本円に換算すると1食約60円という限られた予算の中で、いかに栄養バランスの取れた食事を提供できるか、モンゴルの学校給食に関わる私たち皆にとって最も大きな課題です。今回の研修では、学校給食制度に関わる行政機関から学校現場の代表、様々な立場の関係者が参加しています。日本の実践的な先行事例からたくさんのことを学び、今後、関係者一丸となって、モンゴルでの学校給食の運営に活かしたいと思っています。」
Q2.モンゴルでは学校給食を新たに導入したところと聞いていますが、現状どんな様子ですか。また、どんな課題を感じていますか。
A2-1. ウランバートル市第132番学校バトサイハン校長
「限られた予算で、栄養バランスの取れた「給食」を提供することの難しさはありますが、学校給食の導入により、良い効果も感じているところです。例えば、私達の学校では、ホームページに給食の写真を掲載しているのですが、子どもたちに大人気の献立、ツィヴァン(モンゴルの伝統的な焼うどん)の給食写真を見た親御さんが、家庭でも同じように栄養バランスを考え、野菜をたっぷり加えるなどの意識変化が生まれています。」
学校給食の導入により、食・栄養について皆で考える良い切っ掛けにつながっている、と語るバトサイハン校長先生
A2-2.ドンドゴビ県マンダル学校エンフバヤル校長
「JICAのプロジェクト活動の一環で実施された食事状況調査の結果から、私たちの学校の子ども達は、カルシウムの摂取がモンゴルの食事摂取基準と比較して顕著に不足していることが分りました。このため、学校としては給食に牛乳を追加することを決めたのですが、最初のうちはこの追加代金徴収について保護者の方々の理解を得ることに苦戦しました。でも、学校としては追加代金の徴収の有無に関わらず子ども達には牛乳を飲んでもらえるよう努力を続け、少しずつ理解者が増えました。今では全ての保護者からの理解と協力を得られるようになりました。
日本の学校給食は、栄養バランスの確保はもちろんですが、食文化の継承、地場産物の活用や地域理解、食事のマナーなど、食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身につけることをねらいとしていますね。食を通じて学校教育全体での学びにつなげていることに感銘を受けました。日本で得た学びは、今後、モンゴルの学校教育・給食運営にぜひ活かしていきたいと考えています。」
モンゴルと日本の文化・歴史に造詣の深い、エンフバヤル校長先生
かつて同小学校ではJICA海外協力隊員(JOCV)が活動をしていました
ある日の給食1:チャーハン、野菜・肉入りスープ、パン、モンゴルのスーパーフルーツジュース;サジー(於:モンゴル マンダル小学校)
ある日の給食2:肉チャーハン、サラダ、お茶(於:モンゴル マンダル小学校)
ある日の給食3:ミルク風味のスープ、フルーツサラダ 、パン、モンゴルの乳製飲料;ヒャラム(於:モンゴル マンダル小学校)
研修の後半は、新潟県へ移動し、新潟県立大学、新潟市教育委員会、新潟市内の保健所、学校給食センターや小学校を訪問し、講義や現場視察を通し、実際の学校給食運営を学びました。新潟市立桃山小学校では、学校の門をくぐるなり、全児童があたたかくお出迎え。双方にとって忘れがたい良き思い出となりました。
手作りのモンゴルの国旗を振って、覚えたてのモンゴル語で積極的にコミュニケーションする子ども達とモンゴル研修員(中央)(於:新潟市立桃山小学校)
折り紙や歌を通じて楽しく交流するモンゴル研修員(中央)と子ども達。
学校給食体験。モンゴル研修員のバヤサーさん曰く、「全部美味しかった。特にスープがお気に入りです!」
新潟市立桃山小学校の学校給食の献立(キムチとタクアンの混ぜごはん、ニギスフライ、ごま和え、根菜汁、牛乳)
新潟市黒崎学校給食センター現場視察
村山副学長による「管理栄養士、栄養教諭養成課程について」講義 (於:新潟県立大学)
アクションプラン発表を含め、研修を無事終了。修了証書を手に晴れやかな表情のモンゴル研修員
研修の最終日は、研修員が協働して取りまとめた「アクションプラン」を発表しました。子どもの実態に応じた摂取基準の算出、献立作成や残食調査を含めた栄養状態のモニタリングの実践、衛生面の管理を徹底するための作業工程表や作業動線の改善、1か月単位の献立作成やコスト削減の工夫、栄養指導の実践など、日本での学びがモンゴルの実情に沿った形でしっかり盛り込まれた内容でした。日本での研修が深い学びにつながったようです。研修員の帰国後、モンゴル学校給食の発展に期待すると共に、この場をお借りして、日本の関係者の皆様に御礼申し上げます。
8月4日の「栄養の日」は、日本栄養士会が制定する、
たのしく食べて未来のワタシの笑顔をつくる、そのきっかけの日です
※モンゴル政府は2019年5月に学校給食法を制定、2020年9月に施行しました。「全ての小学校に給食を提供するために、標準や技術規制に沿った施設、設備、人材を適切に整備・配置する」と定められ、段階的に全小学校の校内に給食施設を整備し、全児童に対して従来の軽食よりも栄養バランスの整った「給食」の提供を目指しています。JICAは、「モンゴル学校給食導入支援プロジェクト」を通じ、今回来日した研修員と共に引き続き活動を展開していきます。
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