「Allez les Lions! ~セネガルの障害者の社会参加をスポーツの力で後押しする~(活動報告編)」

#3 すべての人に健康と福祉を
SDGs
#10 人や国の不平等をなくそう
SDGs

2023.08.02

一般社団法人WITH PEERによる「世界の人びとのためのJICA基金活用事業:セネガルにおけるスポーツを通じた障害者のエンパワメントと社会参加促進活動」(2022年11月から2023年6月)を推進して参りました。私たちはアフリカ大陸西端に位置するセネガルで、パラスポーツを通じて障害者の社会参加を促進することを目指しています。今回はJICA基金の一環として実施された約8ヶ月の活動での現地の様子、起こり始めた変化をご紹介します。

8年ぶりのブラインドフットボール全国大会の開催!!

■昨年11月末に「Allez les Lions! ~セネガルの障害者の社会参加をスポーツの力で後押しする~」と題して、活動予定をご報告しました。その後、私たちはブラインドフットボールのコーチ育成ワークショップ、フォローアップ研修を実施し、視覚障害のある児童・生徒が日常的にスポーツを通じて成長できる環境を整備してきました。
その一つの成果として、2023年5月19日〜20日、全国から4チームが集まり、2日間にわたって、白熱した試合が繰り広げられました。8年ぶりの全国大会開催ということで、カウンターパートや育成したコーチたちを実行委員会のメンバーに加え、協議をしながら運営マニュアルの整備や大会開催にかかる準備を進めてきました。そして、今は彼ら自身で大会を運営していこうとする気持ちが起こり始めています!

■また、今回の全国大会では国立盲学校の女子チームも参加しました。ブラインドフットボールは男子だけのスポーツではありません。視覚障害のある女子生徒たちもまた学業だけでなく「体を思いっきり動かしたい」「校庭を思いっきり駆けながらボールを追いたい」「成長したい」という思いがあります。そんな彼女たちがその選択をできるように、私たちは女性コーチの育成にも力を注いでいます。大会では、男子の試合でも、女子の試合でも、誰よりも声をだし、選手を励ましていたのは他ならぬ女性コーチたちでした。

■これらの活動を通じて、これまでに、延べ342 人の視覚障害者がブラインドフットボールに参加しています。今後は、今回の活動を通じて誕生したコーチたちのスキル向上、地方でのコーチ育成にも現地カウンターパートとともに実施していきます。

8年ぶりの全国大会は、セネガル初の女子ブラインドフットボール大会にもなりました。

障害当事者から障害当事者へ:障害当事者ボッチャファシリテーター誕生!!

■私たちの活動のもう一つの軸はボッチャです。もともとボッチャは重度の障害のある人たちが楽しむことができるようにと開発されたスポーツです。しかし、現在ではパラスポーツという枠を超え、子どもから高齢者まで、障害の有無、性別等関係なく誰もが参加し「楽しむ」ことができるユニバーサルなスポーツとしても認識も高まりつつあります。私たちはこのボッチャの特性を生かして、誰もが「楽しい」を通じ、機能的な障害のある人とない人、障害のある人と地域の人々、初対面の人々、これまで機能的な障害があるが故にスポーツから遠ざかっていた人々が、ボッチャを通じて人と人との関係を築いていく場をつくっています。

■この場作りを担うのは、障害当事者たちです。私たちは彼ら・彼女らがボッチャを通じて誰もが繋がれる場をファシリテートできるよう、ワークショップを開催してきました。現在では障害当事者のボッチャファシリテーターが誕生し、体験会や交流会の運営を彼ら自身でできるようになっています。これまでに、障害当事者のファシリテーターが7人誕生し、延べ318 人の障害者と地域の人々に「楽しい」をきっかけに多様性を認め合いながら相互理解を深めていく機会をつくっていきます。

ボッチャ大会開催!

スポーツから広がり始めたPEERの輪

■PEERとは辞書的には同志、仲間という意味があります。私たちはPEERに「共に社会が生み出す「障害」に取り組む仲間/みんな」という思いを込めて活動を続けています。私たちの活動拠点はセネガルですが、同じ思いをもつ日本とセネガルの仲間をつなぐことも重要な役割だと信じて活動に取り組んでいます。一つはスポーツを通じた地域共生コミュニティづくりという先進的な取り組みをされている代表を講師に迎え、スポーツを通じてどうやって共生的な社会を築いていけるのか、その経験を共有するとともに、意見交換を実施しました。
またブラインドフットボールやボッチャに携わる人たちが「障害の社会モデル」の視点を持ってスポーツを通じて社会の「障害」を壊していけるように、JICAの技術協力プロジェクトなどでも取り入れられている「障害平等研修」を実施してきました。こうした活動により、現地の人々からは「より多くの障害のある子どもたちにパラスポーツを届けよう」「「ボッチャ」を通じて作ってきたスポーツによる共生コミュニティを広げていこう」との声が聞かれるようになりました。そして、当初は肢体不自由の人たちを対象に始めたボッチャですが、その魅力にひかれ現在ではスペシャルオリンピクスや聾学校でも活動を開始し、さらには障害の種別や有無を超えて、多様な人々がともに集い「楽しい」で人と人、人と地域を繋ぐ「障害インクルーシブ」な場がボッチャから生まれつつあります。

■こうした現地の人々の発意と現地の人たちの経験を生かし、その経験を持つ人々が自らの経験を他の人たちに共有し、スポーツで広がる「障害インクルーシブ」な場を複数の地方で展開していきたいと思っています。

\SNSでシェア!/

  • X (Twitter)
  • linkedIn
一覧ページへ