舞台は教室から海外へ!―先生たちが「途上国」で出会った学びやモヤモヤの正体を探る―

2023.09.29

日本の先生たちを途上国にお連れし、そこでの学びを教室に還元いただく海外研修を4年ぶりに実施しました!
アフリカ(ザンビア)・南米(パラグアイ)の地に降り立った22名の先生たちは、一体何を見て何を感じたのでしょうか。帰国後の研修の様子を、JICA東京インターン池田&福井がお伝えします!

変わったこと、変わらなかったこと

JICAが行う教師海外研修は、先生方が実際に開発途上国を訪問することで、開発途上国が置かれている現状や国際協力の現場、開発途上国と日本との関係に対する理解を深め、その成果を次代を担う児童・生徒の教育に役立てる機会を提供することを目的として実施しています。
今夏、12名がザンビア、10名がパラグアイへ渡航し、現地で活動する国際協力アクターや、現地の児童生徒や教育関係者、プロジェクトにかかわる農業従事者、医療関係者、日系移住の方々…とバラエティ豊かな「出会い」の中で多くを学び、帰国しました。

8月よりJICA東京でインターンシップ活動を始めた私たち(池田・福井)は、帰国後研修の運営にたずさわりました。海外に行っていない私たちにもとっても刺激的だったこの研修の様子を、本日はレポートします!

帰国後の研修、ザンビア組パラグアイ組いりまじって最初に話し合ったことは「現地に行くことで何が変わったか、そして何が変わらなかったか」というテーマです。
先生方からはこんな声が挙がりました。

<現地に行って、変わったこと>
・価値観
「途上国は危ない、怖い、可哀想」という価値観がくつがえされた。経済指標上は貧しく見えても、現地の人々は今を楽しみながら生きていた。日本人の考え/尺度を押し付ける必要はないことを学んだ。
・日本に対する考え方
現地と日本では、食や服のスタイルが大きく異なっていた。日本で「良い」とされている趣味嗜好も、他の国では見え方が違うことは面白い発見だった。

<現地に行っても、変わらなかったこと>
・人と人が繋がることの大切さ
現地の人々、個人としてもコミュニティとしても、自分たちの来訪を喜んでくれ、非常にあたたかく受け入れた。そして私たちの質問を一生懸命考えこたえてくれ、また私たちが知らないその国の魅力を教えてくれた。人と人が直接繋がることの重要性を改めて感じた。
・根本的な解決の難しさ
現地の方の生計を簡単に豊かにすることはできない。一つの課題が解決したようにみえても、それが他の課題を創出することにもなりうる。課題を解決することの難しさは、イメージしていた通りだった。

普段は教室で生徒たちに教える側の先生たちですが、この日は海外で得られた学びとその変容を振り返るべく、自分自身に真剣に向き合いました。22名それぞれの異なる学びが共有される面白さに、先生たちは目を輝かせていました!

【ザンビア】経済的に厳しい状況にある地域にて、有志により運営されるコミュニティスクールを訪問。青空の元折り紙教室。「紙一枚でこんな笑顔を見せてくれるなんて。日本の子供たちは物質は満たされているが…」出会い、学び、モヤモヤが続く研修。

【ザンビア】宮城県丸森町が「小規模農家における市場志向型営農普及プロジェクト」を実施している農村部訪問。プロジェクトの様子を聞き、畑を視察し、現地のお母さんたちと一緒にランチづくり。

【パラグアイ】障害児施設(幼稚園クラス)で、「お金がない=教育ができない」ではない、という強い信念を持つ現地の先生から、段ボールやペットボトル等の廃材で作った教材の説明を受ける参加者。

【パラグアイ】パラグアイ南部にある日系移住地ラパスで、餅つき大会に参加。日本で生まれ、パラグアイに移住してきた日系1世と、パラグアイで生まれ育った日系2世、3世。様々な世代の人と交流する中で日系人のアイデンティティについて考えされられた2日間。

先生たちの「モヤモヤ」と「想い」とは

教師海外研修にとって一番大切といっても過言ではないのは『2学期の授業』。事後研修では、関心テーマごとの4~5人のチームで、2学期の授業案について議論を重ねました。
『幸せ』をテーマにする先生チームではこんな対話が繰り広げられていました。

A先生「『途上国よりも先進国が優れている』というイメージをくつがえすことはできないかな?」
B先生「もちろん、そんな授業ができたらベストだよね。でもさ、私たちは現地に行って世界のリアルを見たから意識を変えられたけど、日本の教室にいる生徒の意識を変えるって難しいことじゃない?」
C先生「じゃあ、イメージを覆すために必要なスキルについて考えて、それを授業のテーマにしてみるのはどうかな?」
A先生「なるほど!必要なスキル……『世界の人々の状況を想像してジブンゴト化する力』を授業のテーマに設定してみるのはどうだろう。」
B先生「いいね~!いや……・でも『ジブンゴト化する力が必要』という結論に生徒を誘導するのって本当に良いことなのかな。だって、先進国が優れているイメージを覆すために必要なスキルって、きっと他にもあるよね?」

こんな風に各チームが「小・中・高・特別支援」という校種の枠を超え、「指導教科」を超え、そして所属都県を超え、生徒に伝えたい想いをぶつけ合いました。「世界には正解がない問題がたくさんあるから、生徒と一緒に考えてみたい!」という意見も見受けられました。ザンビアとパラグアイ、場所も文化も全く異なる国に派遣された先生たちですが、そこで感じた「モヤモヤ」や「想い」にはたくさんの共通点があったことはとても興味深い発見でした。

『現地に行って変わったこと、変わらなかったこと』 の問いについて個人で書き出し、そのあと近くの先生方と考えをシェア!

ザンビア、パラグアイの先生方が渡航国まざって活発に議論する様子。

仲間とともに授業を創り上げる挑戦は、これからがスタート

研修の最後、先生たちが2学期に向けて一言ずつ話す場面で、ある先生がこのようなメッセージを伝えてくれました。
「教師の仕事に、孤独を感じる時があります。
でもJICAの教員研修にくると、経験年数や校種、教科を超えて、いい授業をしたいという情熱を持った仲間と学ぶことができ、同じ熱意を持った仲間が沢山いることに勇気づけられます。今日は学ぶことだけでなく、2学期からの授業にパワーをもらえました。」

このような力強い宣言には拍手喝采で、他の先生たちも同じ気持ちでいることが感じ取れました。生徒が主体的に学ぶ授業への道のりはまだこれからですが、ともに歩む仲間を見つけることができた先生たちの満たされた表情とても印象的でした。そんな熱いハートを胸にする先生たちの「モヤモヤ」や「想い」は、生徒さんに伝染していくのか!?これから行われる授業の様子については、次回の記事でお伝えしますのでご期待ください!

先生たちも現地の人たちも、言語や価値観の壁を超えて仲間になっていく姿。

<関連リンク>

インターン生による自己紹介

<市民参加協力第2課インターン・池田奈穂>
初めまして!記事を読んでくださりありがとうございます。
東京大学大学院修士1年の池田奈穂です。大学院ではラオスの母子保健をテーマに研究に取り組んでいます。

8月からインターンとしてJICA東京で勤務を始め、早いものでもう1か月。机上では得られない学びにトキメキを感じる毎日です。
JICA所員の方々の何気ない会話、世界各国からいらっしゃる研修員の方の言葉、インターン同期のアイデアなど……日々五感を働かせながら気づいたことを必死に吸収していると、あっという間に1日が終わってしまいます。
そんな私の小さな野望は、「JICA所員のモットーとこれからの夢」をテーマにインタビュー記事を書きあげること。JICAには年齢や性別に関係なく、とにかくまっすぐな人が多いなと感じます。きっと内に秘めたるモットーや夢がその”まっすぐ”を支えているはず…!インターン終了までにその内容をインタビューし、皆様にもお伝えしたいと思います!

<市民参加協力第2課インターン・福井那津>
初めまして!
東京大学法学部2年の福井那津です。
大学では学部名どおり法律について勉強していますが、将来は法律の専門家として国際協力に携わりたいと考えています!

8月からJICA東京でインターンをしていますが、自分でも驚くほどあっという間に時間が過ぎてしまいました。周囲の温かいサポートと的確なアドバイスのおかげで、1か月前の自分と比べてJICAの業務や国際協力全体に対する考えがかなり深まったように思います!

この1か月間、JICA東京の広報記事執筆、草の根技術協力事業関連の打ち合わせへの同行、教師海外研修の事後研修など、インターンとしてたくさんの貴重な機会に参加することができました。
インターン期間も残り2か月を切ってしまいましたが、今後もできる限りの機会に参加しつつ、今回のインターンで得た学びを形にできればと思っています!

報告者:池田奈穂 主筆、福井那津 サポート(JICA東京センター 市民参加協力第二課・インターン)

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