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~ラオスで初めてインクルーシブ教育教員養成コースが実施されました!~

2023.10.02

「障害のある子どももクラスに受け入れたい」小・中学校の現職教員がインクルーシブ教育について、教員養成校の指導教官から学びました。

研修参加者(現職の小・中学校の教員)がサポート教員としてインクルーシブ教育の授業に参加。

インクルーシブ教育教員養成コースを指導できる「指導教官」が誕生しました!

 特定非営利活動法人アジアの障害者活動を支援する会(以下、ADDP)は、現在、ラオスにてJICA草の根技術協力事業「知的・発達障害を持つ子供の社会自立を目指したインクルーシブ教育・就労支援の実践」プロジェクトを実施中です。
本プロジェクトでは、教員養成校をカウンターパートとして、インクルーシブ教育指導のできる教員養成校の指導教官の育成を1つの目標としています。インクルーシブ教育指導とは、知的障害や発達障害、聴覚障害、視覚障害等を持つ生徒が、健常者の生徒に混じって一緒に教育を受けることができる教授法のことです。

8月14日から18日にサワナケート県教員養成校で、9月18日から22日に首都ビエンチャンのドンカムサー教員養成校で、各5日間、ラオスにおいて初めてのインクルーシブ教育教員養成コースの研修を現職の小・中学校の教員を対象に実施しました。この研修に先立ち両教員養成校の教員は300時間以上の研修を行い、6月には模擬授業を行いました。今回のインクルーシブ教育教員養成コースの研修では、教員養成校の指導教官が現職の教員に知的・発達障害、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由といった各障害の教育ニーズと指導法について講義をした他、個別教育支援計画(IEP)の策定についても指導しました。

インクルーシブ教育教員養成コースの研修の様子。

教員養成校の指導教官と現職教員が、障害のある子どもにインタビューをして個別教育支援計画(IEP)を作成。

現職の小・中学校の教員が個別教育支援計画(IEP)を作成、サポート教員としてインクルーシブ教育の授業に参加!

 個別教育支援計画の指導は、障害を持つ子供が学校に通うために重要な基礎資料となることから、座学の講義を行うだけでなく、研修参加者は障害を持つ子供にインタビューを実施したり、サポート教員としてインクルーシブ教育の授業にも参加したりしました。サワナケート県教員養成校の指導教官であるプアンペット先生は、個別教育支援計画とは「何か」ということだけでなく、具体的に個別支援教育計画は「誰が」「どのようなことを記入するか」等、丁寧に説明し、個別支援教育計画の作成を支援していました。

 今回の研修に参加し、実際にサポート教員としてインクルーシブ教育の実践を行ったパーサイ小学校のシーホン先生は、次のように話してくれました。
「現在、インクルーシブ教育を実践しているパーサイ小学校で勤務しており、4年生の担任をしています。14名の生徒がおり、そのうち6名が障害者です(肢体不自由3名、知的障害1名、視覚障害2名)。視覚障害の児童に関するトレーニングを受けたことがあったものの、これまで知的障害者の児童等へのトレーニングを受けたことはなく、また、個別支援教育計画を作成したこともありませんでした。今回の研修で、個別支援教育計画は障害を持つ児童の教育の質向上に大変役立つものだと学びました。来週、学校に戻り次第、保護者の方と連携して個別支援教育計画作りを開始したいと考えています。
 また、今回の研修を通して、知的障害者や自閉症等の児童をもっとクラスに受け入れたいと思いました。しかし、サポート教員がいなければ厳しい状況です。サポート教員を配置できるようになって欲しいとも思いました。」

 他の研修参加者からも、「より多くの学校で、より多くの障害のある子どもを受け入れていけるようにしてきたい」という声が多く聞かれました。他方で、じっと座っていることが難しい児童がいると、1人の教員で障害を持つ児童を指導するのは難しいという声も聞かれました。

障害のある子どもも一緒に授業を受講。

インクルーシブ教育教員養成コースの「指導教官」の誕生とこれからの課題

 この研修を通して、ラオスで初めてインクルーシブ教育教員養成コースを指導することのできる指導教官がサワナケート教員養成校とドンカムサー教員養成校に誕生しました。ラオスの障害者教育にとって大きな第一歩を踏み出しました。これから多くの学校で、障害者を受け入れる小・中学校が広がっていくことが期待されます。
 他方で、ラオスではサポート教員なしで教員一人で、障害者が含まれるクラスを指導しなければならないという現状があるなど、乗り越えなければならない問題が沢山あります。ADDPは、ラオス教育スポーツ省にサポート教員の設置をすることの重要性を伝えていきます。また、教員養成校等にリソースセンターを設置して、インクルーシブ教育を実践する中で生じる問題を解決していけるよう障害者を受け入れた学校の教員や障害者の持つ両親の相談に乗っていきます。
 本プロジェクトでは障害者のあるなしに関わらず、全ての子どもが教育を受けることができるように一歩一歩進んでいきます!

研修参加者である現職教員がサポート教員を務めている様子。

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