農業でつながる、ネパール研修員と長野の“グローカル人材”!(草の根技術協力・来日研修報告)

2023.10.02

農業分野がGDPの約1/4を占めるネパールでは、全国各地の中等教育において農業教育過程の設定が進められていますが、教員の人材育成や教材等が未整備であることが課題となっています。

そのような中、JICAと信州大学は、長野県や上伊那農業高校と協働し、標高差が大きなネパールの地域農業の特性や環境に適した農業教育の強化に取り組む草の根技術協力事業「ネパール国中等教育における農業教育強化プロジェクト」を実施しています。

今回、ネパールの教育省カリキュラム作成担当者やプロジェクトが対象としている3つの地域の高校の先生等13名の研修員および高校生1名の計14名が来日し、8月28日から9月6日にかけて来日研修が行われました。その様子をご報告します。

自然豊かな上伊那農業高校での研修

南アルプスと中央アルプスの間を天竜川が流れる、自然豊かな伊那谷に位置する長野県上伊那農業高校。来日研修の前半は、ネパールの農業高校の先生方が上伊那農業高校の授業を視察、参加する形で行われました。

「総合実習1年生」の授業で、高校生と一緒に小豆のサヤ取りを行う研修員

初日の体験学習では研修員が3グループに分かれ、「総合実習1年生」の体験学習7コース(野菜・果樹・植物・動物など)に順番に参加。収穫した小豆のサヤ取り、プルーンの糖度測定、精油の蒸留実験など各コースの授業に入り、教師への質問や生徒との交流を交えながら授業の様子を熱心に見学していました。研修員からは「日本の高校では教師と生徒がそれぞれ自主的に動き、やるべきことが明確になっていることに驚いた」、「主担当と副担当の先生がいて生徒のサポートをしているところがすごい」などの感想が聞かれました。

「ナマステ」が響き渡る校内

農業の授業の他にも、清掃の時間や「終わりの会」、文化祭準備、防災訓練などの様子も視察した研修員の先生方は、あらゆる活動において生徒が主体的に動いていることに強い感心を示していました。研修員と廊下ですれ違う生徒たちが次々に胸の前で手を合わせ、大きな声で「ナマステ」と挨拶をする様子に研修員たちは満面の笑顔に。夜の部では、研修員がネパールの伝統食「モモ」を生徒とともにつくりネパールダンスを披露する異文化交流の時間もあり、上伊那農業高校の生徒さんたちにとっても貴重な学びの時間となっていたようです。

ゴミの分別について、先生や担当の生徒たちから説明を聞く様子

ネパール伝統食の”モモ”を生徒や先生と一緒に作り、食文化で交流

長野県内の事業者から学ぶ

研修の後半では、隣接する下伊那郡の松川町農村観光交流センター「みらい」にて、若手農家グループの観光農園で、ブドウ、ナシ、りんごなどの収穫を体験したり、農家自身が経営する直売所や盆栽、日本庭園などを見学したりし、エプソン豊科事業所にて最新の教育デバイスや双方向通信システムを見学するなど、長野県内で活躍する農家や企業などから多くのノウハウを学びました。また、長野県内滞在の最終日には地域住民に向けた研修報告会を実施し、ネパールの農業教育の現状や、プロジェクトの内容、今回の来日研修での学びなどを研修員らが説明を行い、地元新聞社やケーブルTVの取材を受けていました。

今後の展望

最終日にはJICA東京にて研修の報告会が行われ、研修員より、10日間の研修の振り返りと、ネパールへの帰国後の「アクションプラン」の発表がありました。
研修員からは、データに基づいた栽培管理を行うためのデータ収集を強化する、地域コミュニティと学校の連携を深める、農業フェア等のイベントへの生徒の参加を促すことでリーダーシップを育成する、日本のグッドプラクティスをネパールの農業教育のカリキュラム作成に取り入れるためにセミナーやワークショップを開催する、日本とネパールの学生の交流を継続させるなど、これからのネパールにおける農業教育強化を実現するための多くの展望が語られました。

また来年春には長野県のプログラムにて上伊那農業高校生5名がネパールに派遣され、本プロジェクトを実施している3つの学校にて交流が行われる予定です。次は、日本で学んだ研修員たちから、日本の高校生がネパールの農業や文化、暮らしなど多くのことを学びます。近い将来、長野県からグローカル農業人材が誕生することをご期待ください!


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