幸(こう)を呼ぶプロジェクト~「健康長寿」長野県佐久市の知見をタイへ~

2023.10.10

「幸を呼ぶプロジェクト」 タイでそう呼ばれるプロジェクトがあります。佐久市と学校法人佐久学園佐久大学が実施している草の根技術協力事業「タイ国「健康長寿」長野県佐久市の地域包括ケアを活かしたチョンブリ県ンスク町における多職種連携による高齢者ケアプロジェクト」です。なぜそう呼ばれるようになったのか?9月に佐久市で行われた本邦研修に同行し、取材しました。

日本より早いスピードで高齢化が進むタイ

タイでは日本以上に早いスピードで高齢化が進んでおり、介護体制の構築が喫緊の課題となっています。対象地域であるチョンブリ県サンスク町では、要介護高齢者の数に対し専門職の数は極端に不足しており、また、医師の介入や福祉機器の活用は十分ではありません。更に、生活習慣の予防や認知症対策が不足しているため、将来的に要介護者の増加と、それに伴う高齢者ケアへの負担増が予想されています。

佐久市は、平均寿命が長く、元気な高齢者が多いことから「健康長寿のまち」として、国内をはじめ海外にも知られています。 世界各国から多くの人が、佐久市の健康長寿や医療、保健活動などを学ぶために訪れています。 そうした中、タイのサンスク町から佐久市の取り組みを学びたいと熱心な要望を受け、このプロジェクトは始まりました。
佐久市と学校法人佐久学園佐久大学は、冒頭の事業を通じて、多職種からなる高齢者サポートチームを養成できるシステムを構築し、リハビリテーションを含めた専門職等の人材育成や、在宅ケアシステムの自立運営を目指しています。

浜辺でリハビリテーション

ボランティアの在宅ケアリハビリテーション

嚥下作用を促す顎のマッサージを高齢者とヘルスボランティアへ演習中の日本の短期専門家

介護の基本技術習得中の様子(佐久大学実習室)

本邦研修で佐久市を訪問

2023年9月、プロジェクトの本邦研修が実施され、サンスク町のナロンチャイ町長やブラパ大学理事長ら5名のほか、ライヨン県の行政官や私立病院の担当者6名が自費で参加し佐久市を訪問し、介護機器メーカーや介護施設、病院でスマートフォンアプリを活用した最新の糖尿病患者の管理システムの視察のほか、佐久市で開催中だった「佐久メッセ」を見学し、医療、介護機器メーカーの取り組みを学びました。
全員が非常に熱心に参加し、時間が足りなくなるほど質問が出て、一つでも多くタイに持ち帰ろうという意気込みが感じられました。
ナロンチャイ町長は、「地域で活動しているヘルスボランティアの健康に対する多面的な知識と手技のレベルが向上し、今ではタイのトップレベルの状況にあると思う。他の地域からも見学にきている。」と事業の成果を実感しているそうです。

タイ最年少首長で当選時30代だったサンスク町のナロンチャイ町長(左)

幸を呼ぶプロジェクト

このプロジェクトに関わっている方は、皆笑顔になり、自信を持ち、新しい窓が開けたような顔に変化していきます。日本でもチームの輪が少しずつ広がっています。
タイにおける高齢者介護で重要な役割をはたしているのが、高齢者介護ボランティアです。本邦研修に参加したボランティアは、日本で学んだことを全て実践し、現地の環境で器具を工夫して制作するなど、応用力や即戦力が上がってきました。リハビリの質の向上や訪問回数が増えたことにより、これまで寝たきりの患者が歩けるまでに回復した症例も出てきました。患者さんの笑顔は、ボランティアの自信と笑顔に繋がっています。

タイでの現地活動に参加した講師からは、「このプロジェクトを通してタイで経験したことが、日本での仕事にも生かされている。英語で講座を行うなど、自らのスキルも上がり、所属先の同僚にも刺激になっている。」という嬉しいお話も伺えました。
タイでも日本でも、皆が笑顔になる。幸を呼ぶプロジェクトは2024年2月まで実施中です。

研修員と浅間総合病院糖尿病センターの皆さん

報告者:市民参加協力第一課 我妻みず穂

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