市民二課のベテラン職員に聞く!キャリアインタビュー第3弾!(最終回)

2023.11.02

市民参加協力第2課の課長として責任ある仕事をこなしながらも、課内職員との丁寧なコミュニケーションを怠らない加瀬課長。そんなかっこいいリーダーは、家に帰ると元気いっぱいな2児の母としても大忙しです。仕事も家庭もあきらめない加瀬課長の「これまで」と「これから」をインタビューしてきました!

あの山の向こうには、何があるんだろう?

Q.これまでのキャリアについて、ざっくり教えてください。

A.新卒でJICAに入構し、課題部の水産系の部署と評価部の二か所を経験してから、フィリピン事務所に三年間駐在しました。その後イギリスに一年間留学をし、大学院の開発学コースで組織マネジメントを学びました。日本に戻ってきてからはJICA地球ひろば、東南アジア・大洋州部のフィリピン担当課、広報部、民間連携事業部を経験し、現在は市民参加協力第二課の課長をしています。


Q.国際協力に興味を持ったきっかけ・JICAに入構したきっかけを教えてください。

A.私は群馬県の田舎町の出身で、3方を山に囲まれたこぢんまりとした町で過ごしました。
そんな地元には稲含山という高い山があり、小学校・中学校の授業中にその山を見ながらいつも、「あの山の向こうには何があるのかな」と考えていました。山の稜線に立ってみたら向こう側にはどんな風景が見えるのか、という未知の世界への好奇心や想像力が掻き立てられ、「知らないところに行ってみたい」、「その向こうに何が見えるのかを覗いてみたい」という好奇心の原点になったのかなと思っています。
大学時代に途上国に何度か旅行で訪問し、そこで奇想天外な面白さに魅せられ、仕事で途上国に行けるところに入りたいと思って受けたJICAに、ご縁があって入構することになりました。

自分の道を切り開いてくれたフィリピン事務所

Q. これまでのキャリアで苦労したこと、そしてその苦労をどのように乗り越えたかを教えてください。

A. JICAに入構した直後、意識高い系の同期がたくさんいる中で、特に国際バックグラウンドもなく、しかし仕事は忙しく・・・という状態の中で、自分の専門性を組織の中でどう見出したらよいかを悩んでいた時期がありました。その後フィリピン事務所に派遣されて広報の担当になり、日本からのスタディーツアーの視察同行としてスラムで活動するNGOの方にお話を聞く機会がありました。スラムで生活するフィリピンの人々の生活環境や貧困の悪循環を目の当たりにして心が痛んだのと同時に、JICA職員として、自分は貧困を取り巻く仕組みを変えていくことに貢献ができるかもしれないと思うようになりました。この辺りから、自分の仕事に対するモチベーションの根っこが生えてきたのかなと感じています。


Q. これまでのキャリアにおける、失敗談とそこから学んだことを教えてください。

A.フィリピン事務所にいた頃、当時の自分は若くてまじめだったので、「とにかく計画どおりに成果をださないといけない!」と思っていたところがあり、部下にあたる年上の方と仕事のゴールをめぐって意見が対立してしまい、強い調子で物をいってしまったことがありました。後日その方から「その晩よく眠れなかった」という話を聞いたときに、「これはダメだな」と思いました。その議論が正しかったかどうかという問題ではなく、どんな状況であっても、相手がモヤモヤを引きずるような形で何かを強く言ってしまうのはコミュニケーションとしてよくない、ということを、そこで学ぶことができたと思います。それからは、相手の背景には自分には見えない事情があるかもしれないことを意識した上で、コミュニケーションをするようにしています。

ミンダナオ平和構築支援に携わっていた時代

JICAの端っこにいるからこそ、繋げられる人がいる

Q. 加瀬課長は、これまでどのようなモットーをもとに働かれてきたのですか?

A. 私のモットーは、「JICAとJICA以外の人を繋げる橋渡し役になりたい!」という想いにあります。これは、20代のときに明け暮れていた演劇時代の経験に根ざしていると思います。実は私は、JICA入構と同じ時期に、趣味の一環で市民劇団に入りました。不登校や外国人の出稼ぎ問題のような社会的なテーマを扱いつつ、一つの作品をみんなで作り上げる時間がとても楽しかったんです。社会人になると、どうしても同じ組織内で立場や人間関係が構築されることが多いです。でもこの劇団では、JICAとは全く関係ない色んな立場の人と出会い、人と人として向き合うことができました。演劇を通して多様な人と出会えたことは、「橋渡し役になりたい」というモットーの原点にあると考えています。
ちなみにフィリピン赴任時代にも、協力隊員や留学生と一緒に人形劇団「サマカナ」を結成し、地方を回って子供たちの前で公演をしていました。演劇を通じてたくさんの仲間や忘れがたい経験ができたことは、いまの自分にとって大切な糧となっています。


Q. これまでJICA職員として豊富な経験を重ねられてきたと思いますが、これから叶えたい夢はありますか?

A. JICA職員として、というよりライフワークとして、日本の色んな人たちに「途上国との繋がり」や「豊かさについての考え方」を発信していきたいという夢があります。少子高齢化が加速している中で、今の日本は「外国から来た人どのように仲良く暮らしていけるのか」という課題に直面しています。だからこそ今、日本に住む人たちに、途上国のことを伝える必要があると思っています。
昨年から、私の地元でもある群馬県の群馬県立女子大学で講義をさせてもらう機会をいただき、非常にやりがいを感じています。これからも、JICA職員という枠を超えて、個人としても地域で活動を広げていけたら幸せですね。

フィリピンで立ち上げた人形劇団の仲間たち

子どもも、夢も、楽しみながら育てていく

Q. お子さんを育てながらも、管理職としてバリバリ働く加瀬課長。ワークライフバランスの面で悩まれたことはありますか?

A. 子育てはたしかに大変なことだらけです。でも、子どもを育てながら働くことは、「人生を2倍楽しめる豊かな経験」だと私は考えています。それに時間の制約があるからこそ、効率性・生産性にこだわって働くことができるので、自分の中では「リアル働き方改革」と思いながら、仕事との両立を楽しんでいます!
今ニュースなどでは、子育てをしながら働くことの大変さや、少子高齢化問題のような暗い話を耳にすることが多いです。それでも私は、子どもも、そして自分の夢も楽しみながら育てていけると思っています。ワークライフバランスに不安がある皆さんも多いかと思いますが、最初から両立できる人は誰もいません。筋トレと同じような感じで、毎日あわあわ自転車操業していたら、いつの間にかすごく重いものが持てるようになっていた!というのが実感ですので、あまり心配せずに子育てを楽しんでいただきたいです。


Q. 国際協力の世界に興味のある学生に対して、何かメッセージはありますか?

A. 実際に途上国に足を運んでみたり、日本国内にいらっしゃる途上国の人々と話したりする機会が重要だと思います。学校で教えていただく学びも大切ですが、最終的に自分の原点というのは「自分で行動したこと・体験したこと」の中から生まれてくるような気がしています。だから、他の人から見たらくだらないと思われるような些細な願いでもいいんです。動機の根っこに正解はないので、ぜひ実際に色んな国に行ってみたり、人と話してみたりするような経験を温めていただきたいと思います。


【おまけ】
“たんぽぽの綿毛のようにキャリアを歩めばいい”
私は学生時代や新人時代、明確なキャリアを描いていたわけではないです。面白そうな風に乗っかって、着地した場所で根を生やしてきたようなキャリアを辿ってきました。綿毛のように風に身をゆだねる柔軟さがあるからこそ、何にでもなれるという捉え方もあると思うので、皆さんもぜひ気軽に色んなことに挑戦してみてほしいと思います!


【感想】
加瀬課長は、常に誰に対しても「じっくりと対話する」ことを意識されている方なのですが、今回のインタビューからその原点を明らかにすることができました。そして、「どのような経験も無駄ではない」と語る加瀬課長の言葉は、とても熱く胸に響きました。些細に思える経験の一つ一つが線になったときに、自分らしい揺らぎない軸が確立される。キャリアを含め、人生において大切にしたい考え方を教えてくださった加瀬課長。本当にありがとうございました!

子育てに奮闘する加瀬課長

報告者:福井那津・池田奈穂(JICA東京センター 市民参加協力第二課・インターン)

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