誰のための国際協力?―つながる世界の「自分事」へ―

2023.11.16

アフリカ大陸の国々で、教育現場への国際協力活動をつづける國枝専門員。
都内の中学生に、いったい何を語ったのでしょう?
今回出前講座を見学したインターン良本・西村・池田・福井が、その全貌をお届けします!

国際協力は「かわいそう」な人たちを支援「してあげる」こと?

JICAは学校からのリクエストに応じて、JICA海外協力隊や国際協力プロジェクトに携わるスタッフによる「出前講座」を実施しています。
今回は、毎年のようにJICAに出前講座をリクエストくださる中野区立中野中学校からの「国際協力って何?どんな仕事?例えばアフリカの子ども達が生き生きと学べるようにする仕事」というテーマでの要請でした。
今回講師を務める國枝専門員は、アメリカの大学院で国際開発を収めた後、NGOスタッフを経て20年近くアフリカの国々で、コミュニティ参加型の教育プロジェクトに従事してきた方です。

まずは、國枝専門員がアフリカで出会った子ども達のエピソードから始まります。
 アフリカの子ども達は、通学路が整備されておらず学校に行くだけでも大変・・・
 弟妹の世話をしたり、家の手伝いがあるから、学校の宿題をこなすのが難しい・・・
 だから学校に通って勉強できることは、決して当たり前のことではありません。
 また、旧植民地の国や地域では、幼い頃から母語ではない言語で学習することを強いられている子ども達も多く、このことが学習の負担や遅れにもつながっています。
 こんな風な具体例を通してアフリカの子ども達がどのような環境で教育を受けているのかが明らかになっていきました。

講座は中盤に差し掛かり、なぜ私たちが国際協力をするのかについて國枝専門員が中学生に対して語りかけていきます。

日本だって大変なのに、なぜ国際協力をするのでしょう?

國枝専門員は、そこには3つの理由があるといいます。
それは、世界にはまだ貧困に苦しむ人が多いこと、日本はそんな世界と繋がっているということ、そして日本も支援を受けて今があるということです。

「世界人口の8割が開発途上国・地域に暮らしており、日本は資源や食料などの面で開発途上国に頼っています。また、日本も戦後は他の国から多くの支援をうけ、現在に至っても災害時の緊急支援をはじめとする様々な支援を受けています。そんな日本に住む私たちだからこそ、国際協力をするのです。」
國枝専門員のこの言葉を、中学生が熱心にメモをとる姿がとても印象的でした。

講座の結びには、こんな問いとメッセージが投げかけられました。

アフリカの子どもたちは「かわいそう」なのでしょうか?

必ずしもそうではありません。皆が皆かわいそうなわけではなく、チャンスさえあれば誰もが生き生きと学ぶことができるのです。

「国際協力は『かわいそうな人たち』を支援『してあげる』ことではなく、繋がる世界の『自分事』として『協力する』ことなのです。普段から自分が世界と繋がっていることを意識するだけでも、国際協力だと思っています」

この國枝専門員の言葉が、未来を担う中学生にはどのように受け止められたのでしょうか。

國枝専門員から中学生に「『協力』とは何か」について質問をする場面も!

みなさん話にくぎ付けです!

講座を受けた中学生。その等身大の気持ちとは...?

出前講座を受けた中学生たちの中から、ある生徒さんが代表して感想を伝えてくれました。その飾らないありのままの気持ちの一部をここでご紹介させていただきます!

生徒Aさん
「今回の出前講座を受講するにあたり、事前にJICAについてインターネットで調べてみました。そこには『食べ物に困っている人に対し、魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える』という言葉が書いてあり、ハッとさせられました。この発想は、一見簡単そうに見えますが、実際に思いつくことはとても難しいことだと思います。しかし、今日の國枝さんのお話を聞いて、国際協力のシゴトには「思いつくことが難しい発想や視点を取り入れながら、他者と協力していく力」が必要だと改めて学びました。

この学びを自分の生活に置き換えて考えてみました。そして私は、これまで『当たり前が当たり前ではないこと』を分かっていたようで、実際には分かり切れていなかったことに気づきました。毎日過ごしていると、学校や部活や習い事など目の前のことで必死になり、他国の人の生活に目を向ける余裕がない時が多いです。それでもこれからは、今日の講座で感じた『世界と自分の繋がり』をできる限り思い出したいです。そして、自分が豊かな生活を送れていることへの感謝の気持ちを忘れずに生きていきたいと思いました。」

大学生インターン4名にとって、実は初めての出前講座見学でした。JICA/国際協力の話は、中学生に難しいのではないかな?と思っていましたが、生徒の方々の感受性、深く優しい気持ちに感無量。中学生から「国際協力に携わるうえで大切な姿勢」を教えてもらった気がしています。

学年を代表し、出前講座の感想を一生懸命伝えてくれました

国際協力を体感しよう!JICA地球ひろばのご紹介

今回の出前講座の中では『世界が抱える課題』についても触れられました。
実はこれ、東京・市ヶ谷にある展示施設「JICA地球ひろば」で見て・聞いて・さわって体験できます!

【識字】

日本での文字の読み書きができない人(15歳~24歳)の割合は、0%(2014年時点、出典:UNICEF世界子ども白書2016)。日ごろ文字に頼り切った生活をしている私たちですが、文字が読めないと、どんなことに困るのか、想像したことはありますか?
買い物やかぜ薬の選び方などのロールプレイングを通して、文字の理解・読み書きの重要性を考えてみましょう。

【相互依存】

国際協力を行う理由のひとつとして國枝さんが挙げていたのが、「日本と世界は繋がっているから」ということ。
例えば日本でよく食卓に並ぶ食材のひとつ「タコ」。
いったいどこから来ているか知っていますか?
実はその40%超は、アフリカの国々(モーリタリア、モロッコ等)から輸入されているのです。
地球ひろばには、食品のバーコードをかざすとその食材の原材料や原産国を知ることができるコーナーが!
何気なく食べているものが、地球の反対側から来ていてびっくりすることも。自国だけで成り立っている国はなく、相互に依存しているからこそ国際協力が必要だということを実感できます。

そして2030年までの達成が目指されている、国連の採択した「持続可能な開発目標(SDGs)」。よく聞く言葉だけど、どんな内容なの?と気になっている方も多いのでは。
実は、SDGsの達成に向けて歩みを進めることが、出前講座でお話しされた地球が抱える課題の解決にもつながるんです。
地球ひろばには、SDGsの内容や達成状況を学べるエリアも!

さらに、2Fにある食堂「J’s Cafe」では、世界各国の珍しい料理を味わうことができます。
こちらはルワンダ大使館お墨付きメニュー、牛バラ肉と金時豆を煮こんだ『イビシンボ・ニニャマ』。週替わりでいろいろな食文化が楽しめますよ!

JICA地球ひろばは、団体訪問・個人見学のどちらも無料で受け付けています(団体訪問は要予約)。ぜひ一度足をお運びください!

アクセス
〒162-8433
東京都新宿区市谷本村町10-5(JICA市ヶ谷ビル内)
(注)JICA本部(千代田区二番町/最寄駅「麹町」)ではありません。

JR総武線市ヶ谷駅から徒歩約15分
都営新宿線市ヶ谷駅(A1出口)から徒歩約15分
東京メトロ有楽町線/南北線(エレベーター口)から徒歩約10分

JICA地球ひろば(体験展示)
 開館日:平日・土日祝10:00~18:00
 定休日:第1・3日曜日、年末年始
J’s Café(世界の味を楽しめる食堂)
 営業日:平日11:30~14:00
 定休日:土曜日、日曜日、祝日、その他別に定める日(貸し切り営業日等)

※今回紹介した基本展示「人間の安全保障展 世界を知る、世界を変える!」は11月24日(金)まで。

講座を受けたインターン生による感想

今回の講座を通して、国際協力が何かわからない、国際協力なんて自分にはできないと思っていた子どもたちに国際協力を身近に感じてもらうことは、国際協力の裾野拡大につながるのだと感じました。今回出会った國枝専門員や中学生の言葉を胸に、今後もその時自分にできる国際協力をしていきたいと思います!
(市民参加協力第2課インターン・福井 那津)


「私も中学生のときに、こんな授業を受けられていたら...!」と羨ましくなるほど、中学生に対する熱いメッセージの詰まった国際協力の授業でした。国際協力は崇高なものではなく、背伸びせずに取り組めること。その気づきが、小さくも大きな一歩になると感じました。
(市民参加協力第2課インターン・池田 奈穂)


「一生懸命に今できることをするのも、国際協力の第一歩」という言葉が印象的でした。自ら国際協力の意味を考えて行動することが、世界と自分との距離を縮め、世の中を少しずつ良い方向に変えていくのだと思います。
(広報部地球ひろば推進課インターン・良本 翠)


「国際協力は『かわいそうな人を支援すること』ではなく『つながる世界を“自分事”として“協力する”!!』」。世界のすべてに目を向け、世界中の「友達」のために日々行動していきたいと強く思う出前講座でした。
(広報部地球ひろば推進課インターン・西村 佳晃)

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