埼玉県の挑戦~日本でトップレベルの下水道維持管理技術をタイへ~

2024.01.05

埼玉県の下水処理能力は全国に2000か所ある日本の下水処理施設の中でもトップレベル。埼玉県下水道局はその技術を生かしてタイで草の根技術協力事業「タイ国レムチャバン市下水道インフラ維持管理支援プロジェクト~SDGs6.3(未処理汚水の半減)の達成に向けて~」を実施しています。具体的にはどのような活動が行われているのか。11月に埼玉県で行われた本邦研修に同行し、取材しました。

タイでは下水道管の維持管理に課題

チョンブリ県レムチャバン市はタイ最大のレムチャバン港を中心に発展した、タイで最も注目を集める東部経済回廊(EEC:Eastern Economic Corridor)地域の中心です。
レムチャバン市では、1995年に現在の下水処理システムが整備されましたが、2020年2月に埼玉県下水道局とレムチャバン市が実施した現地調査の結果、下水処理場は7,000m3/日の設計流入量に対し、わずか1,000m3/日しか下水が流入しておらず、下水管渠内の土砂の堆積や中継ポンプ場の故障等により、管路網が機能不全であることが判明しました。これに伴い、下水処理場では流入量が大幅に少ないため、汚水を汲み上げるポンプの能力が過大なため連続運転できず、下水の滞留や腐敗、砂分の堆積など維持管理の問題を引き起こしています。この問題を解決するため、埼玉県下水道局は、
埼玉県下水道公社と協力して、冒頭の草の根事業の中で、管路網の機能回復、処理場の効率的運転、市民の理解促進のための広報計画作成等を行うことでレムチャバン市の下水道維持管理能力向上を目指しています。

タイでの活動の様子

本邦研修で安全第一を実感

2023年11月末から2週間にわたってプロジェクトの本邦研修が実施され、レムチャバン市の下水道担当職員が埼玉県を訪問しました。
研修では、埼玉県の下水道の概要や日本の下水道財政の考え方などの座学のほか、下水関連施設の視察、実務研修など充実した内容で、研修員の皆さんも多くのことを吸収したようでした。
最終日の評価会では、全員から研修成果が報告されましたが、全員から出た意見が、安全第一であることと計画性の重要性についてでした。タイでは日本ほど安全面について意識が高くなく、工事や作業中の交通整理などもしていないそうです。研修で身をもって安全性について体験し、100%すぐ取り組むことは難しいが、できることから少しずつ改善していきたい、と意気込みを述べていました。

実務研修の様子

荒川水循環センターで記念撮影

実務研修の修了証授与

埼玉県側の熱い思いが伝わる

今回の本邦研修を通じて感じたことは、埼玉県下水道局や下水道公社の皆さんの熱い思いです。
下水のプロフェッショナルがプロ意識を持って、できるだけ多くのことを伝えたい、という思いで実施しており、タイの研修員もそれを受け取って、多くのことを学んだと思います。
最終日に埼玉県側から「ハートも大事」という言葉も伝えられました。
タイでも日本でも、ハートを大切に。プロジェクトは2025年9月まで実施中です。
最後に、埼玉県下水道公社の公式YouTubeチャンネル「 埼玉下水.TV テクニカルノート 」で本事業が紹介されています。
とても分かりやすく、面白く解説されていますので、是非ご覧ください!
https://youtu.be/hYWvIvJettU?si=ywGu_07UUpqY4g00

研修員と埼玉県下水道局、埼玉県下水道公社の皆さん

報告者:市民参加協力第一課 我妻みず穂

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