更なる連携促進を期待!エプソン連携地域理解プログラム

2024.01.16

2023年11月30日(木)~12月1日(金)、2回目となるセイコーエプソン㈱(以下、「エプソン」)連携の地域理解プログラムを実施しました。参加者は、同社がこれまでどのように発展し現在のグローバル企業となったのか、その地域に根差した発展の経緯を講義・視察を通して学びました。また、1回目のプログラムに参加し、現在同社にて卒後インターン中の2名の長期研修員が、今回のプログラムの中でワークショップの企画運営に携わり、同社が将来の社会課題解決に向けてどのような取り組みをしているのかを紹介し参加研修員の理解及び同社との連携促進に貢献しました。

概要

1 エプソン本社での講義、創業記念館・歴史館視察
 「諏訪の歴史・特性を踏まえたエプソンの発展」について講義を受けた後、同社の創業記念館・歴史館にて、同社創業時からの歴史、特に戦後日本の発展の中、社会の変化に合わせた同社の製品開発及び普及について説明を受け、世界初のクオーツ腕時計や小型デジタルプリンタといった独自技術を視察しました。参加研修員からは、「『温故知新』、過去が将来の課題解決につながることを知った」、「諏訪を含む日本の発展は、人々の情熱やたゆまぬ努力の賜物であることを理解した」などのコメントがありました。

2 諏訪大社(秋宮)付近、諏訪湖からの富士山見学
 午後は諏訪大社を視察しました。「御柱祭」を通して住民が相互に協力しあうコミュニティが形成され、同大社がそのコミュニティをしっかりとつないでいる存在であることを学ぶとともに、同大社が中山道と甲州街道の合流点で下諏訪地区が物流の重要拠点でありながら、四方を山に囲まれた地理条件ゆえに「小さく運びやすい高付加価値品」である時計・カメラ等精密機械工業が発展したことを学びました。当日は秋晴れの天気にも恵まれ、諏訪湖岸湖面から富士山をくっきり望むことができ、諏訪地域の地形を実感できる機会となりました。

3 夕食および交流会
 エプソン社員や同社でインターン中の研修員2名を交え、和気あいあいとした夕食及び交流会となりました。グループに分かれて「日本の会社で働きたいか?Yes/No」をテーマに意見交換を行ない、参加研修員からは「日本では経済的に家族を支えることが難しい」、「文化の違いもあり、日本での勤務よりは日本企業の現地法人で日本と母国の架け橋として働きたい」といった声があがりました。また、「自国では公務員でも民間企業との兼務や個人での起業が可能だが日本企業では兼業が制限される」といった母国との違いをネガティブに捉えた意見などもありました。様々な意見が出た中で、せっかくこうして日本に来たのだから、自国のアンバサダーとしての役割を果たそう!というインターン生からの呼びかけは参加者の心にも響いたようです。
 インターン生2名からインターンシップ経験談が共有され、参加研修員がエプソンでの卒後インターンシップに関心を寄せる機会ともなりました。

4 エプソン豊科事業所訪問・ワークショップ実施
 豊科事業所にてプロジェクター等の製品紹介、デモ体験を実施し、活発な質疑応答が行われました。特に、障がい者支援、ストレス軽減等人々の「生活の質」向上を目指す製品開発に取り組む同社の姿勢に感銘を受けていました。続くワークショップでは、インターン生が同社の取り組み事例を紹介し、教育課題解決に向けて同社のポータブルプロジェクター活用を中心にグループ毎に活発な議論がなされました。エプソン発展の鍵は人的資源と地域との共生であることが強調され、今後も参加研修員とのネットワークを継続していきたいと締めくくられました。

5 岡谷蚕糸館訪問視察
 JICAのインド養蚕プロジェクトの元専門家である高林千幸館長より英語にて、日本及び諏訪地域の蚕糸業盛衰の歴史、また館内の用具展示の説明や、繰糸の実演があり、エプソン発展の背景でもある諏訪の産業発展の歴史にかかる理解を深めることができました。
参加研修員は、蚕が食べる葉によって糸の色が変わることに驚き、「地域や国の技術育成センターとして機能できるのでは」といった感想もみられました。

参加者の声:この経験を自国の国づくりに向けたヒントに!

 参加者全員が内容に満足し、プログラム終了後、参加した留学生からは、「日本の技術を導入して自国の学校を魅力的な場所にすることが、教育問題のひとつの解決法につながることに気づいた」、「本当に必要とされている場所に製品をと届けることによって社会的責任を新しいレベルで実践していることに感銘を覚えた」、「エプソン社員が創業者と同じ志を持ち会社の発展に努力していることに感動した」といったコメントも寄せられました。
 また、参加者の中から、下記の素晴らしいコメントも寄せられていますので、紹介します。


(Mr.PUN Sirish/ Nepal)

 I participated in the visit to know about the journey of Epson. It was a good opportunity to learn and experience on: how the company started off and managed the challenges it faced through? and how people are benefiting from it?

How a vision and a passion of an individual could make a difference to change a whole society was an impressive learning of the visit. With the glorious journey of Epson from 1942 till the date, it has been impacting people all around the world through its technology and creating new values based on humanity and creativity. I learned that “The future is in the past (Onkochishin)” and we must learn from our past as it paves the way for innovation and sustainable development, and we should always keep in mind that technology has no value unless it cares people and the environment.

I will share the valuable learnings of the visit to the local people of my country through various forums and media. I hope these learnings will be helpful in creating some impacts to the society.

(抄訳)

 エプソンがどのように事業を興し、これまでに直面してきた課題をどのように乗り越えてきたか、そしてそこからどのように発展していったのかを知るために参加しました。

 エプソンは1942年の創業から今日に至るまでの間、その高い技術力を通じて、世界中の人々に新しい価値を創造してきたこと、そしてその裏には社員ひとりひとりの理想と情熱があることを学びました。 また、「温故知新」という言葉にもあるように、諏訪の先人たちから学ぶことを忘れず、これからの社会のために、テクノロジーは環境と人々にとって優しいものを模索していかなければならないということも感じました。

 この訪問で得た貴重な学びを母国のネパールの人々と共有し、自国の社会によい影響を与えるのに役立てたいと思います。


(Ms. SHININGAYAMWE Dorthea Nanghali Etuwete/ Namibia)

I was fascinated to seeing where the idea of the Epson originated and was born. Considering the company brand and identity in the global market, it was indeed an interesting time to observe and witness the reality on the ground.

The most impressive part was the culture of learning and learning to make things better in all aspects. I was impressed that the culture of Japanese is about resilience, hardworking and exceptional performance beyond their goals. I have also learnt that the modernization model has been instilled into generations and generations. It became part of their culture to do better every day. The culture of Epson that was established in 1942 remains the same.

The culture of resilience and hardworking, team spirit and efficiency. Above all INTEGRITY is a core. I wish my fellow Namibian youth could emulate the culture of working and learn to work together as a team, without any inferiority complexes.

(抄訳)

 グローバル企業であるエプソンのブランドや企業理念がどこからどのようにして生まれたのかに興味があり、実際の現場に訪問できるということで参加しました。

 最も印象に残ったのは、あらゆる面で物事をより良くするために学び続けるエプソンの企業風土です。目標を越えることを目指してあきらめずに努力する勤勉さや、高いパフォーマンスを心掛ける日本人の精神に感銘を受けました。 この精神は1942年のエプソン創業当時から今も受け継がれ続けています。

 日本人の誠実かつ真面目に働く姿勢をナミビアのみんなにも教えたいです。特にナミビアの若者に向けて、世代を超えてチームとして一丸となって協力しながら働くことの大切さを学んでほしいと思います。

さらなる連携を期待して

 JICA東京では、今後もエプソンとの連携協力関係を維持・発展させ、将来の社会課題解決向けた同社の取り組みに沿って、更に充実したプログラムとしていきたいと思います。
 また、参加者が今回得た学びや気づきが、彼らの将来の国づくりに向けて活かされることを祈っています。

報告者名 長期研修課

関連リンク:JICA開発大学院連携 - JICA開発大学院連携/JICAチェア

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