課題別研修「母子継続ケアとUHC」研修員の声

2024.03.05

3年間の遠隔研修を経て、4年振りに来日研修を再開した課題別研修「母子継続ケアとUHC」。来日研修を2024年1月17日から2月1日、さらに3週間後にオンラインで繋ぎ、来日時に作成したMini Action Plan (MAP)の進捗報告会を実施しました。
今年度はブルンジ、カメルーン、ガーナ、インドネシア、パキスタン、ルワンダ、シエラレオネの7か国から11名が参加し、活発な議論を通じて知見の共有が行われました。その中からガーナから参加したコレ・ブ教育病院のKUMI Henry Kintoh医師の声をお届けします。

「全ての妊産婦が尊重に満ちたケアを受ける」可能性を秘めたハンドブック

『今日(1月19日)は、尾﨑敬子さん(国際協力専門員)の素晴らしい講義と、母子健康手帳の有用性についての彼女の豊富な世界的経験を聴くことができました。
母子手帳には長い歴史があり、国によって使い方が異なります。また母子手帳は、さまざまな方法で妊産婦と新生児の健康のためのケアの継続に貢献しています。独立した小冊子を使用している国もあり、その場合は母子保健の「母Mother」と「子Child」を分けています。一方、母子保健の「母」と「子」を統合した冊子にしている国もあります。母子保健のための家庭用保健記録の種類や形式について、どの種類や形式がより効果的かという疑問に最終的に答えるために、この分野で膨大な研究の可能性があることは興味深いことです。
とはいえ、母子手帳には、母親、新生児、5歳までの子どもの健康記録が含まれています。この手帳は施設ベースの記録を補完するものですが、手持ち式で家庭ベースであり、母親や夫婦は常に母親、新生児、子どもの健康記録のコピーを持つことになります。母親がどこにいようとも、医療提供者が健康履歴の詳細な要約を持ち、継続的なケアを提供することができるため、母親のケアの継続性を促進します。さらに、在宅母子手帳は、パートナーや家族の母子保健への関与を高める可能性があります。母子手帳には、誰もが理解しやすいように数多くの図解入り写真が掲載されており、母親とそのパートナーは自由にハンドブックを読むことができ、ポジティブな妊娠体験と尊重に満ちた妊産婦ケアに不可欠な意思決定の共有を促進する可能性があります。』

尾崎専門員に質問をするKumi医師

各国のハンドブックの特徴

『母子手帳は、保健師、助産師、医師を含むすべての医療従事者にも利用されていますが、どの医療従事者が母子手帳の特定の項目を記入・評価しなければならないかについての合意がないため、例えば予防接種の評価の機会を逃してしまうこともあります。
生年月日や出生地などの正確な統計は、国家の発展にとって非常に重要ですが、適切な文書化とデータ保護がなければ、このデータが失われたり、不正確になる可能性があります。母子手帳にはこのような重要な情報が記載されているため、この分野では非常に重要なものとなります。国によっては、母子手帳が学校の入学手続きに使われたり、ガーナでは妊婦が保険料を免除されたり、無料で出産ケアを受けたりするための「パスポート」の役割を果たしています。。ブルンジでは、母子手帳のおかげで、保健施設で保健医療従事者が記入した子どもの出生届を親が確実に保管し、出生届の手続きに使えるようになったことが分かりました。母子手帳は、すべての出産を確実にカウントすることに貢献していると言われています。
日本のテクノロジーの進歩はよく知られていますが、母子手帳は国民皆保険の達成に貢献し、現在でも活用されていることは興味深いことです。』

研修員が持参した各国の母子手帳

ハンドブックの今後の課題

『母子手帳は家庭用であり続けるべきであり、テクノロジーは、この重要な母子手帳のある面をデジタル化する可能性について関係者が議論することによって、その可能性を補うにとどめるべきである、と私は考えます。 また、母子手帳の定期的な見直しと更新は不可欠ですが、新しい情報を追加するだけでなく、すべての関係者が不要と考える情報を削除することにも重点を置くべきです。
母子手帳は母親、子ども、社会にとって潜在的なメリットがあるにもかかわらず、在庫切れや医療従事者の記入不足といった課題も存在します。
私たちは、母親や家族とともに協力し、各国の経験から学び、JICAのような開発パートナーやその素晴らしい専門家の支援を受けて、この小さいが強力な小冊子の可能性を最大限に発揮できるよう支援しなければなりません。』

「各自の活動計画へのコミットメント」を掲げる研修員

オンラインによるフォローアップセッションでのMAP進捗報告

来日研修からガーナに帰国し3週間後、Kumi医師はオンラインプログラムで、帰国後の活動について報告しました。
『日本から帰ってきてから、助産師、医師、産婦人科専門医師や管理職が出席する産科部門全体に対し報告書のプレゼンテーションを行いました。彼らは私が作成したミニアクションプランにとても満足してくれました。産科病棟の産婦人科医師の一人は、産科病棟全体で母子手帳の基本的な使い方と、その最適な使い方を説明することから始めてはどうかと提案してくれました。コルレ・ブ教育病院はガーナ最大の教育病院ですから、どんな小さな改善でも広範囲に影響を及ぼすと確信しています。』
自国に帰国した研修員達は、早速、研修で得た知見を使いながら、母子手帳の活用推進にリーダーシップを発揮しています。今年度の研修員だけではなく、過去に研修に参加した研修員は、「全ての妊産婦が尊重に満ちたケアを受ける」ことを目標に、日々活動しています。日本や各国の仲間と共に、目標達成に向けて邁進していきましょう!

MAP進捗報公会でガーナ帰国後に制作した “MCH Handbook Completion Check List” を紹介・説明するクミ医師

閉講式の様子

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