メディア研修員と共に目指す、健全な民主主義と平和な世界~民主国家におけるメディアの役割~

2024.03.19

健全な民主主義の構築・発展のために、メディアは非常に大きな影響を持ちます。2023年度はJICA東京にて、9か国65名の研修員が民主国家におけるメディアの役割について学びました。

国民から信頼されるメディアとなることを目指して

 皆さんは日頃、どのような媒体から必要な情報を得ていますか?フェイクニュースがはびこる今般、信頼できるメディアはどのようなものでしょうか?
 いかなる場合においても中立的な立場で、正確な情報を発信すること。これは、平和で安全な社会の構築や健全な民主主義の発展のために、メディアに求められる重要な役割です。
 JICA東京では、一般財団法人NHK財団の協力のもと、全世界の公共放送局職員やジャーナリストを対象に、2023年度中に6件の研修を実施いたしました。それぞれの研修の様子をダイジェストで振り返ります。

課題別研修「民主国家におけるメディアの役割」

 全世界を対象として行われたのが、課題別研修「民主国家におけるメディアの役割」です。2023年度は、コートジボワール、モルディブ、セントビンセント・グレナディーン、セルビア、シエラレオネ、南スーダン、タンザニア、ウクライナの8か国から15人の研修員が参加しました。
研修員は、公共放送局や関連省庁、政府系新聞社、ジャーナリスト協会等、様々な所属先から集まりました。一口にメディア関係と言っても、国や所属、立場が違えば普段の業務や関心事項は様々。研修員独自の視点から、積極的に関心事項に切り込みつつも、他の研修員の意見を真剣に受け止め、議論し合う姿が日々印象的でした。
 課題別研修では、NHK主催の教育番組・コンテンツの国際コンクール「日本賞」の映像祭に参加しました。世界中の番組制作者との出会いは研修員にとって非常に刺激的で、貴重な経験となりました。
 また、群馬県前橋放送局への訪問に合わせ、高崎白衣大観音や付近の日本庭園を見学し、日本文化の魅力もたっぷりと体験しました。

高崎白衣大観音(群馬県高崎市)の大きさに驚きながら記念写真

◆関連リンク…「民主国家におけるメディアの役割」世界から集まった研修員たちが見たのは | ステラnet (steranet.jp)

コソボ国別研修「公共放送局能力強化プロジェクト」

 2023年5月末には、コソボラジオテレビ局(RTK)よりジャーナリストや編集者9名が来日しました。民族同士が激しく対立したコソボ紛争では、虐殺や空爆により多くの市民が犠牲となりました。紛争終結から数十年経った今でも、紛争の余波は残っていると言われています。そんな中、紛争予防の観点から、公共放送局であるRTKが重要な役割を担っています。
 今回の研修では、RTKの作成する番組の質の向上を目指し、様々な講義やNHK放送技術研究所、NHK前橋放送局への訪問を通し、NHKの行う公共放送のエッセンスをしっかりと学び取りました。

閉講式にて、修了を祝う研修員と日本人関係者たち

◆関連リンク…放送を通じた民族融和とは~コソボ公共放送支援の3000日~ | ステラnet (steranet.jp)

ウクライナ国別研修「公共放送組織体制強化プロジェクト」

 2023年度、ウクライナ向けのメディア研修は3回に分けて行われました。
 1回目は幹部クラス、2回目は技術者、3回目は番組制作者を対象とし、それぞれの参加者層に合った研修プログラムが組まれました。
 研修員から語られるのは、戦火のウクライナの厳しい現実。研修員は、「日本に来てようやく、久しぶりに安心して寝ることが出来た」と話しました。当たり前の日常が崩れて早2年。苦しい戦況下でも、正しい情報を国民に届けるため、そして、もし放送局が攻撃された時のバックアップ体制を整えるため、ウクライナ公共放送局(PBC)の取組は続いています。
◆関連リンク…「放送を止めるな!」戦火のなかで奮闘するウクライナの公共放送局を全力支援! バックアップ機能と拠点局体制をサポート | ステラnet (steranet.jp)

南スーダン国別研修「表現の自由・情報へのアクセス保護」

 世界で一番新しい独立国、南スーダンが目指すのは、新しい民主主義の構築と定着です。2024年1月、南スーダン公共放送局(SSBC)、情報省、ジャーナリスト連盟などから、16名が来日しました。
 南スーダンでは、2024年12月に初めての国政選挙が予定されています。初めての選挙の結果を、中立な立場から早く・正確に伝えるため、選挙報道の講義に関心が集まり、グループワークの時間も設けられました。また、NHK広島放送局を訪れ、地方放送局の役割を学びながら、被爆地である広島から、日本の戦後復興の歴史と自国南スーダンの独立の歴史を重ね合わせて考える機会になりました。

講義中にも積極的に発言する研修員

◆関連リンク…放送局をイチからつくる~南スーダン公共放送支援~「世界で一番新しい国」南スーダン共和国 | ステラnet (steranet.jp)

1年間のメディア研修を終えて

 この1年を通して、JICA東京は9か国から65名のメディア関連の研修員を受け入れました。どの研修員も、それぞれ異なるバックグラウンドを擁していながらも、どこか通ずるものがあるように見えました。気になるものがあれば自分の足で見に行ったり、講義中少しでも疑問に思えば積極的に質問をしたり。これを、ジャーナリスト魂と呼ぶのかもしれません。
 各国の研修員が、研修プログラムに日々積極的に、かつ新しい発見を心から愉しんで参加している様子はとても印象的でした。研修員の参加国の中には、まだまだメディアに対する放送制限が暗黙の裡に課せられている国や、そもそも取材が制限されていたりと、厳しい状況が続いている国もあります。そのような状況下でも、自分自身の行っている取材や報道が必要なことであると強く信じ、果敢に取り組んでいこうとする研修員をこれからも心から応援します。
 最後に、この1年間、共に研修員を迎えてくださったNHK財団の皆さまに深く感謝申し上げます。NHK財団様は、どの研修も非常に有意義で、かつ日本のことも知ってもらえるような温かいご配慮に満ちたプログラムをご用意し続けてくださいました。NHK財団様のご協力なくしては、6件の研修を無事に実施しきることはできませんでした。誠にありがとうございました。

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