声帯を失っても「声」は取り戻せる。友達に会い、会話を愉しむ笑顔がふたたび。
2024.03.28
「スタッフの方々は声を失った私に声を取り戻すための方法を熱心に教えてくださり、まるで新しい声を恵んで下さったかのようです。私と家族の喜びは言葉では言い表せません。」
喉摘失声者(こうてきしっせいしゃ)の食道発声訓練会の様子をご紹介します。
「Xin Chào(シン チャオ)」!(ベトナム語で「こんにちは」)
日本とベトナムは2023年に外交関係樹立50周年を迎えました。ベトナムに進出する企業の数は約2000社、在住日本人も2万人に上ります。また、日本で働くベトナム人の数も40万人を超え、旅行客も多く、両国はとても良好な関係を築いています。
ベトナムでは政治の安定と経済発展で医療環境が向上し、喉頭がん患者は喉頭摘出手術により命を長らえるようになりましたが、命と引き換えに失声を余儀なくされる現状があります。ベトナムの喉摘失声者数は公表されていませんが、生存する喉摘失声者は数千人と推定され、多くは筆談のまま家庭に引きこもって社会復帰できずにいます。喉摘失声者の再発声には、高価な機器を使用しない肉声の食道発声が勧められますが、訓練には技術と適切な指導が必要です。しかしベトナムでは訓練のリハビリ体制が整っておらず、喉摘失声者の再発声習得が難しい環境にあります。
公益社団法人銀鈴会(以下、銀鈴会)は、喉頭がん、咽頭がん、食道がん、甲状腺がんなどで、声帯を摘出し声を失った人に対し社会復帰をするお手伝いをしています。指導する訓練士も同じ喉頭摘出者です。食道発声※1、電気式人工喉頭(EL)発声※2、シャント発声※3などの訓練で声を取り戻すことができます。
本日は、2022年5月~2024年5月、銀鈴会がホーチミン市腫瘍病院をカウンターパートとして実施している、草の根技術協力事業「ベトナムの喉摘失声者に対する食道発声教室開設と発声訓練体制の確立」の活動の様子についてご紹介します。病気によって摘出した声帯の代わりに食道を使って声を出す発生方法です。
銀鈴会は発声指導技術を長年培ってきたため、ホーチミン市腫瘍病院と一緒に、ベトナムの喉摘失声者のために食道発声訓練の体制を構築することを目指し、食道発声指導員の育成に取り組んでいます。
2024年1月15日(月)~19日(金)、ホーチミン市内において、銀鈴会及び、ホーチミン市腫瘍病院により、喉頭を摘出して発声できなくなった方(喉摘失声者/喉頭摘出者)に対する食道発声訓練会が実施されました。
5日間の発声訓練会では、喉摘失声者は日本人専門家及び、ホーチミン市腫瘍病院の医療スタッフより食道発声の指導を受け、各参加者が詩を読んだり、感想を話したりする等の形で、今までの訓練の成果を披露しました。 「あ」の原音を発せられるようになるまで数か月から、人によっては1年以上かかる人もいると言われています。参加者の皆さんがとても努力された様子が伺えました。
「この食道発声訓練会で得た結果は、参加する前の期待を超えるものでした。当初、紙、ペンを使わずに家族となんとか会話ができるようになることを期待していましたが、訓練のおかげで家族との会話はスムーズにできています。近所の人との会話や電話はまだ少し難しいので、さらに練習したいです。」と、スムーズな食道発声で参加者のひとりは語っていました。
本事業終了後も食道発声訓練会が継続され、より多くの喉摘失声者が発声できるようになり、会話を愉しむ笑顔の暮らしが戻ってくることが期待されます。
銀鈴会の訓練指導者とホーチミン市腫瘍病院の先生方
食道発声訓練の様子
◆関連リンク
・公益財団法人銀鈴会 ウェブサイトはこちら!
銀鈴会HOME - 公益社団法人 銀鈴会 (ginreikai.net)
・食道発声について
※1
・電気式人工喉頭(EL)発声について
※2
・シャント発声について
※3
以上
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