中小企業・SDGsビジネス支援事業 企業レポート      株式会社ジン・プロダクトライン(千葉県)

#12 つくる責任、つかう責任
SDGs
#7 エネルギーをみんなに。
そしてクリーンに
SDGs
#9 産業と技術革新の基盤を作ろう
SDGs

2024.03.29

信頼で世界をつないだ!~世界中の人がWin Winな関係を築けるように
~鉛蓄電池の耐用年数延伸でケニアの環境・社会・経済に貢献~
株式会社ジン・プロダクトライン(千葉県)

株式会社ジン・プロダクトライン(千葉県習志野市)は、電気・通信・防災・防災設備等の点検・保守・設置工事を主業務とする電気通信工事業を営む企業です。「国、社会のライフラインを守ること、地球の環境負荷を低減すること、これらを通して、人々の暮らしを永続的に守ること」を社是に掲げ、日本にとどまらず世界への事業展開を創業以来、常に意識してきました。そのような背景で、同社は2022年7月~2024年6月までJICA中小企業・SDGsビジネス支援事業「ケニア国鉛蓄電池の耐用年数延伸に関する案件化調査」を活用し、ケニアの環境改善に資する事業化に取組んでいます。現地調査を終了した安富社長と外部人材のコンサルタントとして調査に参加した株式会社スリーランプス三明さんにお話しを伺いました。

株式会社ジン・プロダクトライン 安富社長(JICA東京にて)

〇提案製品「瞬速BR」とは?

(JICA)今回、どの様な製品を現地で提案されましたか?
(安富)鉛蓄電池の耐用年数を2倍以上に延伸する「瞬速BR」という装置を提案しました。広島県のセンシンテクノ株式会社が開発した同製品は、耐用年数を延伸させるだけではなく破裂の原因となる電解液の不活性化を抑制する効果もあり、事故の危険性を大きく減少させることもできます。

日本の消防自動車への取付けイメージ

実際に、現地調査では現地の大手通信会社、地熱発電公社、ケニア国歳入庁といったところでこの装置を取り付け、効果を確認する共に、設置上の課題や留意点等もあぶり出せました。

重機への取付け作業風景

〇ケニアの社会的課題とは?海外展開のきっかっけは?

(JICA)なぜケニアを選ばれたのですか?
(安富)ケニアでは経済が成長し、国民所得の向上に伴って、特に都市部で電化製品が普及し、政策的にもICT機器の導入・普及が進んでいます。その反面、e-waste(電気電子機器廃棄物)の発生量が急増しています。廃バッテリーの回収や処分の大部分はインフォーマルセクターが担っているのですが、不法投棄や不適切な処分が行われ、流出した鉛や硫酸による土壌・水質汚染が発生し、住民の健康被害が問題となっています。この社会的課題に対して、瞬速BRを導入し鉛蓄電池の耐用年数を延伸させることで、廃棄量を削減し、ひいては環境被害の低減に貢献できるのではと思いました。導入する現地企業にとっては、廃蓄電池の交換コスト縮減分を新たな投資に振り替えるメリットもあります。
(JICA)現地で調査を進めていく中で、どの様な苦労がありましたか?
(安富)現地の顧客候補の方々との関係づくりですね。ケニア側の関係者の熱量が、現地で会ったときと帰国後に連絡を取るときで全く違うんです。別人かと思うくらいに(笑)遠隔でそういった方々の熱量をいかに維持できるかが今後も課題ですね。

JICA東京でのインタビュー風景

〇JICA事業を活用した感想

(JICA)JICA事業を活用した感想を教えてください。
(安富)アフリカでの知名度が高いJICAと関係があったおかげで、現地の企業、公的機関との関係が構築しやすかったですね。例えば、ケニア歳入庁などもJICAを通じて知りえた方を通じてトライアルの実施に漕ぎ着けました。4月に現地を再度訪れるときも、JICA事業での成果を活かしてビジネスを展開させていきたいです。
(三明)製品の販売前にはケニア標準局で認証の取得が必要なんですが、JICA事業ということで担当官も親身に相談に乗って頂いています。日本の小さな一企業が単独で行ってもこういった対応はなかったのではと思います。もしJICAの支援がなければ事業化の動きはもっと遅れていたでしょうね。
(JICA)海外展開をこれから進めようとしている日本の中小・零細企業にとって、JICAの事業の役割は大きいということでしょうか?
(安富)そうですね、日本の中小・零細企業にとってJICA事業は非常に魅力的だと思います。現地調査後、JICAの事業に関わっていたことで、弊社の取組みに対して取引先の銀行が興味を持ってくれ、サポートが得やすくなったと感じています。

〇今後の事業の展望

(JICA)今後の事業の展望を教えてください。
(安富)そうですね、今後は、世界中をターゲットに事業を展開したいと考えています。特に東アフリカですね。実際、タンザニアでは鉱山開発における鉛蓄電池の大量廃棄が問題となっているという話を聞いています。また、再生可能エネルギー化が進んでいく中で、電気をためることができる鉛蓄電池は非常に重要です。鉛はコストが低い上にリサイクルが可能という強みがあります。鉛蓄電池の安全性を高め、コストを削減することができる瞬速BRの需要は高まっていくと考えています。

〇JICAへの期待・可能性・インフラの長寿命化

(JICA)今後のJICAとの関わりについてはどうでしょうか?
(安富)今後はODA事業にも関わりたいですね。例えば、既存のODA事業との連携可能性として長年日本が支援してきたモンバサ港開発事業があります。港ではフォークリフトなどたくさんの重機が使用されますが、廃棄された鉛蓄電池が大量にありました。また、港の運営には太陽光発電も利用されており瞬速BRの需要があると見込んでいます。
JICAが支援する様々なインフラ開発の現場で設備の効率的な利用と廃棄物の減量に瞬速BRは非常に重要な役割を果たすと考えています。設備を設計、投入する時点でスペックインできることが望ましいですが、今後、新しく鉛蓄電池の需要のある事業、地域をぜひ教えていただき可能性を探っていきたいです。

モンバサ港の山積みの廃棄予定のバッテリー

〇結びに代えて

本調査を通じて、「信頼で世界をつなぐ」をビジョンとして掲げているJICAが、日本の中小・零細企業の海外展開を支えているようです。同社は現在、現地の企業と連携しつつ、JICA事業を通じて開拓した顧客候補を中心に営業活動を継続して行っており、2024年4月には再度ケニアを訪問する予定です。同社とJICAの関わりとして今後も様々な可能性が考えられます。ODA事業が70周年という節目を迎える中で、日本の企業と協力しODA事業の新たな一面を開拓していくことができるかもしれません。

(聞き手:JICA東京インターン 中島陸人)

\SNSでシェア!/

  • X (Twitter)
  • linkedIn
一覧ページへ