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山梨県小菅村×JICA 課題別研修での共創プログラム!

2024.05.20

人口約600人、村の面積の約95%が森林に囲まれた、山梨県小菅村。東京都の水源地である多摩川の最上流部に位置し、持続可能な森林経営を軸とした山村振興に取り組む小菅村で、研修員が体験し学んだこと、そして、小菅村にとってJICA研修への参画意義とは?

JICA研修員が山梨県小菅村を視察訪問!

 2023年10月、カンボジア、ベトナム、モンゴル、パキスタン、パプアニューギニア、ケニア、ウガンダ、カメルーン、ウズベキスタンの9か国から9名の森林行政官が、来日しました。課題別研修「持続可能な森林経営のための政策立案能力の強化」に参加し、森林資源の持続的利活用についての知識を学ぶことが目的です。
 9名の研修員は約1か月間日本に滞在し、森林・林業に関する国際的な動向や、日本における森林政策・計画策定、市場への木材の流通、森林の利活用の取り組み等について、幅広く学びました。
課題別研修では、世界中から様々な課題とニーズを抱えた研修員が参加し、自国の課題解決へのヒントを得るために学びますが、今回、森林劣化への対処、政策や戦略の策定、資金調達、実施機関における人材育成等、各国および日本に共通する課題についても共有し、それぞれの国の経験をもとに議論し、学び合うことができました。
 この研修カリキュラムの一環として、研修員が山梨県小菅村を訪問した際の様子をご紹介します!

小菅村を一望することができる、村内一番の眺望スポットで。

小菅村の森林管理を学ぶ研修員。

村の自然、伝統文化と訪問客をEバイクで繋ぐ…小菅村のチャレンジ!

 小菅村は、多摩川の源流を育む豊かな自然を活かしたアクティビティ施設の運営や特産物の販売、高級感を演出した古民家ホテル、山間部へのドローン配送の実施等、地域創生の取り組みで注目を集めています。近年では、化石燃料使用量を削減しCO2排出量抑制にも貢献するため、山で発生した間伐材の薪ボイラーへの活用等にも積極的に取り組んでいます。
 研修員は、小菅村が取り組む、こうした地域林業の活性化や山村振興、自然環境の保全、伝統文化の継承等について、村内のスポットを訪問し、村役場の職員の方や事業者の方から直接ご説明を伺い、意見交換をして学びを深めました。
 現在、小菅村は、村内の民有林を活用した、マウンテンバイクトレイルの整備に取り組んでいます。村の森林の中にある木製のバンクは、村で発生した間伐材を村の中で加工して製造します。村は、Eバイク(電動アシストマウンテンバイク)を、観光客等が村内を周遊する際の移動手段として活用していく方針です。この事業を通じて、村は、観光・教育事業の活性化とともに、山林所有者に対する山林管理における採算性確保、村内の若い世代に対する山林継承(山林にもっと関心を持ってもらい、将来の山林管理の担い手となってもらうこと)を提案しています。
 今回は、このマウンテンバイクトレイル事業の本格始動に先駆け、研修員たちは、Eバイクで各視察先への移動を行いました。
 「所有している山林をただ放置していると、維持管理のための費用のみが発生してしまうことになりますが、そういった山林が日本国内には非常に多い状況です。そのため、結局、山林を手放してしまう人が多いのが現状です。山林所有者が山を手放さないためのアプローチの1つとして、森林空間を効果的に利活用し、土地を貸し出すことで経済的価値を生み出す、マウンテンバイクトレイル事業を推進しています。この山林利活用事業を、小菅村でモデル化し、将来的には別の市町村にも広げてゆけたら幸いに考えています。」そう語るのは、小菅村地域林政アドバイザーの大野航輔さんです。林業・バイオマスエネルギーの専門家として、小菅村の森林資源利活用、持続可能な森林経営を通じた地域創生に取り組まれています。

Eバイクに乗って、次の視察先へ向かう研修員の皆さん。

小菅村の森林の間伐材を使って作られた、マウンテンバイク用の木製バンクの上で記念撮影!

小菅村と世界が繋がった!課題別研修の機会を通じた学び合い

 小菅村での視察行程を、中心となってアレンジしてくださった大野さんに、研修員を受入れた感想や、研修員受入を通じて得られた気づきについて、伺ってみました。
 「現在、小菅村では、インバウンドの観光客を小菅村にどう取り込んでゆくかが大きな課題であり、海外からの観光客を強く意識しています。一方、村はこれまで、海外の方との接点はなかなかありませんでした。海外からの研修員受け入れの機会を通じ、英語での説明資料作成から、市役所関係者、村内の事業者たちが英語での説明対応に挑戦し、身振り手振りを含め、どこまで伝わるのか、通訳の方にどのように支援していただいたら効果的か、等を実際に体感し、考えることができました。また、実際に海外の方が村を周遊する際に、どのようなサービスがより必要かについても、各所で気付きを得ました。さらに、村人たちが自らの村や事業について、外部の人達に説明することは、村への誇りにも結び付き、広報効果もあります。村にとって得難い貴重な機会でした。」
 今回の視察訪問後、それぞれの研修員より小菅村へ、自国の森林管理、観光政策との比較を通じての気づきや、小菅村固有の魅力、外国人観光客にとって小菅村をより魅力的にするためのアイデア等について、フィードバックを行いました。村の美しさは、豊かな自然とともに人々の素朴さ、温かさにも感じられたこと、バンガローや高所からの景色を望む宿泊施設、ケーブルカー、自然のレクリエーションエリア、バーベキュー等が可能なキャンプ場の整備、エコツーリズム事業の展開等、研修員からは率直な意見やアイデアが共有されました。
 研修事業を通じて、こうした、人や技術、文化の新たな接点、気付きや学び合いの機会を、今後も創ってゆきたいと思います。

小菅村地域林政アドバイザーとして、村の森林資源の利活用と地域創生に取り組む、大野 航輔さん。

◆関連リンク…小菅村を楽しむ総合情報サイト

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