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ヨルダンの学校で広がる日本の特別活動(特活)の意外な効果とは

2024.05.21

現在、草の根技術協力事業のひとつとして、ヨルダン・ハシェミット王国にて「特別活動の継続的実施と普及のための基盤整備事業」(実施団体 特定非営利活動法人 国境なき子どもたち) を実施しています。JICA担当者が現地視察を行いましたので、現地の様子を写真と共にお届けします!

ヨルダンってどんな国?

みなさんはヨルダンと聞いて、どんなイメージが浮かびますか?
ヨルダンは、人口は約1,120万人で、面積は北海道とほぼ同じ大きさです。東西南北をイラク、サウジアラビア、シリア、イスラエル、パレスチナなどに囲まれていますが、ヨルダン国内の治安は安定しており、中東地域の平和と安定において、重要な役割を果たしています。
もともとヨルダンには、中東戦争を逃れて移住したパレスチナ難民やその子孫が多数暮らしていましたが、更に2011年のシリア内戦により、シリアからヨルダンに逃れた難民が多数発生し、最大で130万人を超えたとされています。
このように移民・難民を多数受け入れているヨルダンでは、多様な文化的背景の他者への理解や共生のための社会性が不可欠です。ヨルダンの子どもたちが、学校で社会性を育めるように、特定非営利活動法人 国境なき子どもたち(以下、KnK)は、日本でもおなじみの特活(特別活動)に注目。対象地域のパイロット校にて先生たちによる実践と普及の仕組みづくりに取り組んでいます。

ヨルダンでの特別活動(特活)の取り組み

 そもそも特活とは、明治時代の日本の教育現場から生まれたものであり、日本式教育の大きな特徴のひとつです。特活には、日直や学級活動、体育祭・遠足などの学校行事、クラブ活動、そして委員会などの児童会活動があります。皆さんも、小学生だった頃、経験したことがあるのではないでしょうか。
 KnKは、ヨルダンの公立学校で、特別活動の中でも主に①「日直」、②話し合いに焦点を当てた「学級会」、③学年を越えて活動を行う「縦割り班活動」の3つを導入しています。
 2018年から開始した前フェーズでは、アンマン県の公立学校で特活を導入した結果、遅刻や欠席、けんか、校則をやぶるといった子供たちの態度に肯定的な変化が見られました。また特活を通して、学校が子どもたちの規範意識や、協調性、他者理解の心を育み、多様な生徒が通う学校の生活環境の改善に繋がりました。他方で、教育省庁と連携した持続的な仕組みや、新規学校への普及、および保護者やコミュニティの学校参画や連携などの課題も明らかになりました。
 そこで、2023年から始まった本事業「特別活動の継続的実施と普及のための基盤整備事業」では、アンマン県に加え、ザアタリ難民キャンプが位置するマフラック県を対象とし、合計20校以上の学校で特活を普及する仕組づくりを行っています。
 例えば、教育省内に「特別活動促進委員会」を設立し、行政との連携を強化。また、前事業で特活の経験や実績のある教員や教育局のスタッフを「特活インストラクター」として育成し、新しく特活を導入する学校への普及の役割を担うなど、活動の持続性を確保し、特活を普及するための体制整備に取り組んでいます。

日直の活動を行う様子

朝会を行う様子

特活の取り組みを通した子どもたちの変化

 現地視察ではアンマン県の学校3校、ザアタリ難民キャンプ内の学校4校にて特活の取り組みを視察しました。
 その中の1校では、「学校の好きなところ」をテーマに小学2~3年生の学級会が行われていました。子どもたちが ポスターを使用し、「先生が教えてくれるから学校が好き!」、「特にこの科目が好き!」など、自分の意見の発表を行っていました。子供たちの少し恥ずかしがりながらも堂々と発表する姿が印象的でした。
 また、日直の活動では、その日の担当の子どもが皆の前で、①今日の時間割の確認、②その日の目標である「今日のめあて」、について話していました。ヨルダンでは、日本の日直の活動より、少し長めの時間を設定しており、日直の子どもが最近の嬉しかったエピソードなどを発表する機会となっていました。

 視察の後、校長先生や教員に子どもたちの変化についてお話をうかがいました。「日直の活動を通して、人前で話すことに対して怖気づかなくなり、堂々と人前で話せる姿勢に変化した」、「学級会にて子どもたちが自分の意見を考えて表現することで、自己肯定感が高まっている」という声を聞くことができました。
 話を聞く中で、特に日直について評価が高く、「生徒の自己肯定感の変化に繋がっている」というコメントが多かったことが印象的でした。成績の良し悪しやクラスでの人気に左右されず、生徒全員にスポットライトがあたることは、これまでの教室では残念ながら当たり前ではなかったとのことで、公平かつ順番にみんなの前に立つ機会が与えられる日直という仕組みが、小さいけれど大事な変化を子ども達に与えてくれる新鮮な取り組みとして受け入れられているようです。

 今回の出張を通じて、日本の教育現場で生まれ、当たり前として行われている特活が、海を越えたヨルダンの教育現場で工夫しながら実践され、子どもたちの変化に繋がっていることが分かりました。
 現地では校長先生や教員同士の口コミ、またKnKのFacebookや教育局のホームページなどから他の学校にも特活が徐々に広まっているとのこと。今後、更なる教育省との連携や保護者の巻き込みにも力を入れていく予定とのことで、今後の活動にも注目です。

学級会にて、自分の意見を発表する様子

学級会にて、積極的な子どもたちの様子

◆関連リンク…
・案件概要表はこちら
・特定非営利活動法人 国境なき子どもたち(KnK)のウェブサイトはこちら

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