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トイレ普及&野外排泄撲滅への挑戦!4年間の草の根事業の成果は…?

2024.06.06

ケニアで実施中の草の根技術協力事業「スマイルトイレプロジェクト―持続可能な衛生環境改善による笑顔あふれるまちづくり―」。2024年6月に終了を迎える事業の成果をご紹介します。

トイレがない生活とは…?

トイレがない生活を想像したことはありますか?家、学校、職場、駅、コンビニ…日本では当たり前に使うことができるトイレですが、世界ではトイレの利用ができない人の数は4億人以上にのぼるといわれています。この事業の対象地であるケニア共和国ホーマベイ県カボンド地区でもトイレ普及率は約59%という状況で、住民の多くは自宅にトイレがない状態でした。
自宅にトイレがないから屋外で用を足すしかありません。でもその場所が川や池の近くだったら?現地の住民にとって川や池は生活水です。排泄物によって水が汚染されて、飲んだ人が下痢になったり、コレラなどの感染症にかかったりするリスクが上がります。病気になることで学校や仕事に行けなくなってしまう人もいます。他にも、人目につかない場所まで移動することで特に女性の性被害の危険性が増加するなど、野外排泄は様々な問題を引き起こします。

◆関連リンク…案件概要表

野外排泄をなくすために

野外排泄をなくすためには何が必要でしょうか。まずは住民に野外排泄のリスクとトイレの重要性をわかってもらうことが大切です。でも、トイレの重要性がわかっても作り方がわからなければトイレの設置は進みません。そもそも、トイレを作るお金がなければトイレを作ることはできません。そこでこの事業では、住民の衛生意識改善を促すワークショップと合わせて、トイレの建設指導と、建設費用を得るための農業・養鶏指導を実施しました。バナナの栽培指導やアゾーラというコケを餌として使用する鶏の育て方を教えることで収入アップを目指し、収入を得ることができたらそのお金でトイレを作ってもらうという仕組みです。住民は自身の収入に合わせて、木やコンクリート、布など様々な材料を使って、無理のない範囲でトイレを建設します。
2019年8月から開始したこの事業では、衛生意識改善とトイレ建設のワークショップには延べ6,000人以上が参加し、農業・養鶏トレーニングには1,200人以上が参加しました。

アゾーラというコケを取る様子。鶏のエサになる。

大きく育ったバナナ

事業の成果:トイレ普及率が98%まで向上し、野外排泄是撲滅を達成!

この事業では4つのコミュニティ、63村に介入しました。新たに2,861基のトイレと3,187基の手洗い場が建設され、事業開始前には約59%だったトイレの普及率は約98%まで向上しました。介入したすべてのコミュニティで野外排泄がなくなり、保健省から「野外排泄ゼロを達成した地域」として認証を得ることができました。
野外排泄がなくなったことと、手洗いの習慣ができたことにより、対象地では下痢の罹患率が73%も減少しました。
さらに、農業や養鶏指導により得たお金でトイレを建設するだけではなく、新しい農機具を買った家庭や、子どもを学校に行かせられるようになった家庭もありました。
住民からは「子どもが怖がらずにトイレを使うようになった」「ハエが湧かなくなり、においもなくなった」「綺麗なトイレはお客さんに自慢できる」といった声が聞かれました。

トイレを建設することでもちろん住民の生活は変化しますが、それ以上に、コミュニティとして野外排泄撲滅を達成し保健省に認められたことや、農業や養鶏において努力したことが結果として返ってきたことで住民たちに自信がついたように見えました。
この事業は2024年の6月をもって終了しますが、この事業の経験を糧にして、これからは住民たちが自分たちの力でより良い未来を作っていくことに期待したいと思います。

建設されたトイレ。綺麗に維持されています。

手洗い場。木の棒を踏むとタンクが傾いて水が出る仕組みになっています。

◆関連リンク…日本ハビタット協会HP

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