佐渡の里山から学ぶ ~15か国18名のJICA留学生、3日間の佐渡島生活で感じたものとは~
2024.06.26
開発途上国から来日し大学院に在籍している長期研修員(以下:JICA留学生)が、2024年6月7日から9日まで新潟県佐渡市を訪れました。新潟港からジェットフォイルに乗り込み佐渡島に向かったJICA留学生の様子をお伝えします!
JICAは研修員受け入れ事業の一つとして全国で多くのJICA留学生を受け入れており、新潟県を含む1都5県を管轄するJICA東京では、33の大学にて約420名を受け入れています。
研修員受入事業について:研修員受入事業(長期) | 日本での取り組み - JICA
そして日頃勉学にいそしむJICA留学生に日本への理解を深めてもらうための取り組みとして、「地域理解プログラム」があります。日本の各地で培われてきた地域特有の開発事例を題材とし、地域に根差したより具体的な開発事例を学ぶことで、日本の開発経験について更なる理解を深め、母国の開発に活かすことが目的です。
今回の地域理解プログラムは新潟県佐渡市にて2泊3日で実施され、「トキと共生する佐渡の里山」を育む佐渡市の試みに関心を示したJICA留学生が集まりました。ケニア・ウガンダ・ガーナ・ジンバブエ・リビア・メキシコ・フィリピンといった世界各地域15か国から来日し、東京近郊および新潟県内の大学院(博士/修士課程)で日々勉学や研究に励んでいる18名です。
初めてのジェットフォイル、初めての佐渡に目を輝かせながら、無事到着です!
初日は佐渡市役所農林水産部の五十嵐麻湖さんの講義からスタートです。佐渡独自の歴史である金銀鉱山発展、棚田の開発、トキ保護の取組みを含めて形成される「トキと共生する佐渡の里山」を育む佐渡市の試みや課題を学びました。
講義の後にはたくさんの質問が飛び交います。
その後のグループワークでは、世界各国から集まったJICA留学生たちは佐渡の現状と自分の母国を比較しながら、意見交換を行いました。
ケニア出身のベティさんは「佐渡は人口減少と高齢化が問題だけど、ケニアは全く逆で若い人口が増え続けている。でも佐渡のように地域コミュニティを守る意識はどの地域でも大切。」と語りました。
2日目は、佐渡の歴史と発展を語るうえで欠かせない史跡である佐渡金山を視察しました。佐渡金山には1601年の開山から1989年の操業停止に至るまでの長い歴史があり、その歴史を物語る数々の遺構が豊かな自然の中に溶け込んで至るところに残されています。
JICA留学生の皆さんは国重要文化財・国史跡の機械掘り坑道である「道遊坑」を実際に歩きました。またトロッコ、機械工場、粗砕場な操業当時の姿のままで残されている設備を間近で眺め、興味津々。
ジンバブエ出身のトライモアさんは「ジンバブエでもたくさんの鉱物が採掘されているので金山の歴史や観光地化の取り組みはとても興味深い。」と話していました。
佐渡金山に関連する近代の産業遺跡であり、「東洋一の浮遊選鉱場」とも呼ばれる北沢浮遊選鉱場跡では、そのスケールの大きさに圧倒されながらの視察。パナマ出身のアーロンさんは「佐渡は世界遺産に値する。過去から学び後世に伝えるのはいいこと。」と話していました。
そして一行は尾畑酒造「学校蔵」へ。1892年に創業し、佐渡の地酒「真野鶴」を製造販売する老舗蔵である尾畑酒造。少子化のため2010年に廃校となった西三川小学校の木造校舎を、長い年月かけて尾畑酒造二つ目の仕込み蔵として再生したのが「学校蔵」です。
学校蔵Caféでは発酵×地域食材をテーマにしたメニューでわいわいとランチ。きれいな景色と地域ならではの食文化を体感します。
尾畑酒造の尾畑留美子さんより尾畑酒造の取り組みを学びました。自然との共生を目指し、この地でしかできない酒造りの場として、地域社会の課題に向き合う学び舎でもある学校蔵。昔懐かしい学校の趣を残した廊下や教室を歩きながら、日本酒造りの工程、体験プログラムの概要、自然との共生のあり方などについて熱心に説明を聞きました。
トキの森公園では本物のトキをオペラグラスでじっくり観察し、その生態や行動に理解を深めました。また千枚田の棚田の景観も眺め、トキと共生する環境としての棚田の存在とその美しさを肌で感じました。
最終日は佐渡市民による生き物調査や田んぼアートを視察しました。
「私の国にも田んぼはたくさんあるけど田んぼアートは見たことがない!」JICA留学生にとって初めて目にすることばかりです。
その後、齋藤農園の齋藤真一郎代表から「トキと暮らす郷づくり」と題して、日本産トキの絶滅をきっかけとする生物多様性保全型農業の推進を通じた環境保全と農業の両立への取り組みのお話を伺いました。
「佐渡の人はシャイだけど、トキと共生する環境づくりを通じて自分自身や地域に自信を持つことができるようになった。」と語る齋藤さん。講義後にはたくさんの質問が寄せられ、郷土愛あふれる齋藤さんが一つ一つ答えていきます。最後には「トキの未来は佐渡の未来。賑やかな島になれるようにこれからもがんばります。」との力強いお言葉に、JICA留学生一同からは大きな拍手が寄せられました。
今回の地域理解プログラムでは、SDGs未来都市を推進する佐渡のグローカルな取組みを実体験し、近年の佐渡島の統合的な地域開発の歴史と現状について理解を深め、日本における農業を軸とする地域開発の具体的事例を知る機会となりました。日本での留学生活を終えて母国へ帰国した後も、きっと佐渡での学びと体験を母国で活かしてくれることでしょう。
★番外編★
日帰り温泉で地域の子どもたちと一緒に温泉に浸かったり、新潟限定の桃太郎アイスを食べたりと、新潟や佐渡にすっかり親しんだJICA留学生の皆さんの笑顔がこちら♪
JICA東京 長期研修課
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