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母国の平和のために走る!! 南スーダンのグエム・アブラハム選手がパリオリンピックに出場決定。

2024.07.23

 度重なる紛争を経て、2011年7月、世界で最も新しい国として独立を果たした南スーダン。JICAは2016年から民族融和を目的とした全国スポーツ大会「国民結束の日」(NUD:National Unity Day)の開催を支援してきました。この大会出場をきっかけに東京五輪出場を果たした南スーダン、グエム・アブラハム選手は、この度、パリオリンピック男子陸上への出場が決定しました。
 JICAは「スポーツと開発」の分野で同選手とも以前から親交が深く、これまでの取組みを振り返りつつ、パリオリンピックでのご活躍をお祈りします。ガンバレ!!アブラハム選手!!

南スーダンの研修員達の講道館での柔道体験

 南スーダンは2011年に独立を果たした世界で最も若い国です。独立後も2度の内戦をはじめ、部族間の対立、経済苦境、行政機関の機能不全など、特に若い世代がその影響を受け、社会での行き場が失われつつあります。JICAは2016年より、南スーダンで全国スポーツ大会「国民結束の日(NUD:National Unity Day)」の開催を支援し、異なる部族の選手間交流を促すことで平和と国民融和への貢献を試みてきました。その核となる取り組みとして、2019年11月より技術協力プロジェクト「スポーツを通じた平和促進プロジェクト」を実施しています。
 2022年10月、同プロジェクトの一環として、南スーダン国別研修「スポーツ行政/スポーツ振興」の研修員達が来日し、母国での共生社会の実現を図るために講道館で柔道を体験しました。柔道の創始者の嘉納治五郎師範の教えでもある「精力善用」と「自他共栄」の精神は、まさしく今の南スーダンでもっとも必要とされている概念です。研修員達は講道館で柔道の精神を学ぶことで、帰国後も取り入れていきたいと語っていました。

講道館で柔道を体験し、「精力善用」と「自他共栄」の精神を学びました。

 また、研修期間中に南スーダンの研修員達は、日本でトレーニングを続けているアブラハム選手とも面会し、パリオリンピック出場に向けた意見交換と激励会を行いました。

南スーダン国別研修「スポーツ行政/スポーツ振興」の研修員達と
(株)SHARKSの皆さんによる南スーダンのアブラハム選手との意見交換&激励会

南スーダンの若きアスリートたちへ、寄贈中古シューズと共に夢を届ける

 2023年7月、第2回目の南スーダン国別研修「スポーツ行政/スポーツ振興」を実施しました。
 同研修では、(株)SHARKS阿見アスリートクラブに雇用されているアブラハム選手が静岡県御殿場市で実施していた子供達向け陸上教室を視察しました。その際、コーチをしていたアブラハム選手からは、南スーダンにおいても寄贈中古シューズを活用し、陸上教室(Abraham’s Run)の開催をしたいとの提案を受けました。
 そこで、当時、視察に参加していた南スーダン青年・スポーツ省等の研修員達および関係者間で急遽打合せを行い、寄贈中古シューズの輸送はJICA東京側が対応し、現地での陸上教室の開催は、南スーダン青年・スポーツ省とJICA南スーダン事務所でサポートすることとなりました。当初、寄贈されるシューズは30足程度の予定でしたが、アブラハム選手の熱意に賛同者が増えて、最終的には140足以上も集まりました。そして、日本からの皆さんの熱い思いと夢を乗せて、寄贈されたシューズはJICA東京から南スーダンに送られ、アブラハム選手にあこがれる将来の若きアスリートたちに贈呈されました。

JICA東京に届いた南スーダンに送付前の寄贈されたシューズ ※合計140足以上!!

寄贈された中古シューズを活用し、南スーダンで開催されたAbraham’s Run 陸上教室の様子

アブラハム選手による「飛ぶように速く走るための陸上教室」(於:JICA東京)

 2023年9月、Abraham’s Run陸上教室の開催報告と交流会がJICA東京で開催されました。日本の高校生からの質問「栄養不足ならば、農作物を作れば良いのでは」に応える形で、アブラハム選手からは南スーダンの厳しい現状について説明がありました。「南スーダンに土地は潤沢にありますが、内戦の影響から異なる民族や住民の間で不信感・憎悪が増幅し、部族間の対立は日常的に起き、離農する人々が多くいます。そのため、国全体で慢性的な食糧不安と栄養不足を引き起こしています。長引く内戦の影響によって、経済、社会的活動のすべてが負のスパイラルに陥っています。」との報告等に、参加者はとても驚き衝撃を受けました。
 それでもアブラハム選手は、部族の異なる選手たちと寝食を共にし、意を共にして臨んだ南スーダンでの「全国スポーツ大会」での実体験を踏まえ、スポーツを通じた民族対立の融和への思いを共有してくれました。オリンピックで活躍すれば、アブラハム選手の同国での知名度もあがり、母国の平和を実現しようと発信すれば、平和が実現できるとの思いは参加者の共感を呼びました。
 その後、「飛ぶように速く走るための陸上教室」が開催され、まさしく月面を飛んでいるかのような軽やかな走法が紹介されました。参加者はアブラハム選手と楠CEOの軽やかな走りに驚き、速く走るための秘訣を自ら体験することができました。

「飛ぶように速く走るための陸上教室」の実習風景(於:JICA東京)

祝!! アブラハム選手のパリオリンピック出場決定

 今回、アブラハム選手の日々の努力や、皆さまからの熱い応援もかなって、めでたく東京オリンピックに続いて、パリオリンピックにも出場が決定しました。JICAのスタッフ一同、パリオリンピックでのご活躍を心からお祈り申し上げます。

パリオリンピックでのご活躍を!! All the Best!!
(左)JICA東京 田中所長、(中央)アブラハム選手、(右)(株)SHARKS 楠CEO

JICA東京 人間開発・計画調整課 井上 裕二

◆参考リンク: 
 ・南スーダンでスポーツをとおして平和を実現!! 母国の平和のために走る!! | 日本での取り組み - JICA

 ・関連イベント:7月28日~8月10日にJICA地球ひろばでオリ・パラ応援企画!
  「スポーツと開発」写真展を実施します。ぜひご観覧ください。
  オリ・パラ応援企画!「スポーツと開発」写真展 - JICA地球ひろば

 ・Racing for Peace - Where We Call Home | NHK WORLD-JAPAN

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