ラオスで障害者の雇用機会創出・自立を目指す日本のNGOの紹介~モデルも着用する魅力的なハンドクラフトの作成・販売を通じた自立支援~
2024.07.29
日本のNGOであるSupport for Woman’s Happinessは、まだまだ障害者の雇用が少ないラオスにおいて、障害を抱えている方が働ける場を立ち上げ積極的に活動しています。同団体の活動現場を視察した際には、全てのスタッフが自信を持って活き活きと働いていました。本記事では、障害者の自立を目指した非常に素晴らしい取組について紹介します。
ラオスでは、障害者に対する教育支援が少なく小学校を卒業していない方もおり、障害を抱える多くの方が職業を有しておらず、なかなか自立できずにいます。このような背景から、Support for Woman’s Happiness(SWH)は、障害者に対して職業訓練を実施し、活き活きと働き自立できるように、2017年に障害を抱えていても共に働くことができる作業所であるソンパオを立ち上げ、ハンディクラフトの作成等を行っています。ソンパオの代表を務めるPhouthalee VONGSAMAIさん(以下、ジャーさん)自身も、下半身が不自由ですが、障害があっても仕事を持ち自立することの必要性を感じていました。設立以来、雇用創出を通じて自信をもって自分らしく活き活きと暮らせるようにソンパオの運営を行っています。
SWHは、JICA基金活用事業(2020年度、2021年度、2023年度の3回)により、ソンパオの職員のオリジナルブランドのデザイン力・販売力の強化、日本での障害者雇用の実態調査等を行ってきました。2020年度のJICA基金活用事業では、ラオス北部の各民族の女性達の織り、染め、刺繍などの素材を活かして、ソンパオで製品づくりを行う指導を行いました。2021年度のJICA基金活用事業では、2020年度の成果を活かし北部の布を使って刺繍のトートバッグ、くつ、刺繍入りの洋服などの製作指導を行いました。2023年度のJICA基金活用事業ではソンパオの3名のメンバーが日本に研修に行き、障害者がどのように仕事をしているか、日本にはどのような障害者を支える仕組みがあるのかなどを学んできました。
ソンパオ代表のジャーさん
◆参考リンク
・2023年度
・2021年度
・2020年度
SWH代表の石原ゆり奈さんにソンパオを案内していただき、ソンパオで作成している商品と現状について教えていただきました。ソンパオのハンディクラフト商品は主に2種類の製品を作成しています。1つはラオスで販売する商品、もう1つは日本で販売する商品です。SWHはラオスで製造販売する商品の開発支援に関わる他、2020年から北海道から九州まで「青のラオス展」「赤のラオス展」「琥珀のラオス展」を開催し、フランスのパリで『Tissage du Laos』を開催、ソンパオで作成した商品を各地で販売しています。
ソンパオの商品について説明する石原さん
現在実施中の琥珀のラオス展
ラオスや日本問わず人気商品なのが、手毬を使った商品です。日本では手毬を見かけることも少なくなり、また、作ることができる人も減って来ています。ソンパオでは、この手毬の技術を使ってイヤリングなどの商品を作成し販売をしています。石原さんが日本で手毬の作り方を学んできて、ソンパオのメンバーに作り方を指導しました。ソンパオのメンバーはイヤリングサイズの手毬も作ることができるようになりました。このような小さなイヤリングの手毬を作ることのできる日本人は少ないそうで、とても貴重な商品となっています。また、このサイズよりも少し大きな手毬は、クリスマスシーズンには、欧米の方がクリスマスツリーの飾りとして購入していくことが多いそうです。また、イヤリングサイズの手毬は日本の御殿場市のB型事業所(※)にも輸出されており、御殿場の作業所でイヤリングやキーホルダーに加工され日本で販売されています。
※ 就労継続支援B型とは、一般企業に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して、就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供するという障害者総合支援法における就労系障害福祉サービスの1つ(厚生労働省HP参照)。
ソンパオの職員が手毬を一つ一つ丁寧に作っている様子
アップサイクルのイヤリング
大人気商品であるクリスマスツリーの飾り用の手毬
最近では、これまで経験を活かして廃棄予定であったものに手を加え、価値をつけて新しい製品へと生まれ変わらせる手法であるアップサイクルの商品づくりに力を入れ、商品の幅を広げています。使用済みのビニール袋などを使って、アクセサリーを作成しています。これらのアップサイクルの商品は、ラオスの有名モデルも使うなど、ラオス国内で大きな注目を集めています。
既存の商品を含めこれらの商品の作成は、ソンパオで唯一の健常者でありジャーさんと一緒にソンパオを創業したPENGCHANTHONE SIPHANGさん(以下、シーファンさん)が責任を担っています。商品の製造を担う各担当者に作成方法を指導する他、デザイン等も一緒に考えています。ソンパオでのお仕事には大変なことも多いそうですが、自身のお兄さんも障害があることから障害者のために働くことに意義を感じているということです。ラオス人向けの商品には少し派手目な色使い、欧米人向けには暗めの色使い、日本人向けには淡い色使いなど、商品開発についてソンパオの他のメンバーと話し合うのがとても楽しいということです。
アップサイクルのイヤリング
靴を作成中のシーファンさん
これらのソンパオで作成する商品は、障害者の雇用を維持するだけでなく、材料となる布は北部の少数民族のものを使うことで、ソンパオの商品には少数民族の文化を守っていこうという目的もあります。レンテン族など少数民族は、糸を紡ぎ、染料を作り、糸を染め、布を作ってきましたが、発展に伴いその文化が失われつつあります。SWHとソンパオは、この文化を途絶えることがないように少数民族の布を購入することで、村での布づくり伝統文化の保全に努めています。
レンテン族の布を使った商品
SWHとソンパオは、ラオスの障害者が自立していくために、今後もSWHが支援を継続しつつも、少しずつ「支援」という形ではなく、SWHとソンパオが対等なパートナーとなれるような形を目指していくとのことです。ソンパオの代表であるジャーさんも、ラオスでは障害者に対する支援制度がほとんどない中で、障害を持っていても技術を身に着け、自立できるようサポートするというソンパオの仕事を誇りに思っていると話してくれました。また、ジャーさんは、より多くの方がソンパオで働くことができるように事業を少しずつ大きくしていきたいと考えており、今後はラオスのホテルのブースや一村一品展のようなイベントでの販売力の強化に努めていくとのことです。SWHもソンパオの自立を支援するために、日本での展示販売会を実施しています。年間250回の展示販売会を日本各地で開催している甲斐もあり、ソンパオの事業規模は大きく拡大しています。
是非、日本国内でSWHの主催する「琥珀のラオス展」に足を運んでみてください。また、ラオスにお越しの際には、商品を購入したりスタッフと交流もできますので、是非ともソンパオを訪ねてみてください
(ソンパオの訪問を希望される方は、事前に訪問申込フォームにご登録ください。)
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「琥珀のラオス展」
開催期間:7月31日〜8月11日 11時〜18時
開催地:〒104-0061 東京都中央区銀座7丁目16-7
地下鉄「東銀座」駅 6番出口 徒歩4分 銀座花蝶内のスペースで開催。
イベントURL:
https://www.facebook.com/events/286994974493266/
https://www.support-women.net/2024/07/22/kohakuginza/
【ソンパオ関連リンク】
ソンパオ訪問申込フォーム:https://docs.google.com/forms/d/1mu_FkNXoEYKt3MqUbVsvBPmGqtprw6S_gV5fqzsSE6U/
ソンパオFacebookページ:https://www.facebook.com/Xonpao
ソンパオ地図:https://maps.app.goo.gl/esJ6upFd53PDqtHi6
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